専修人の本_2020年度

2020年度 新刊紹介

専修人の本・山口ミルコさん著〈校友〉
バブル
発売日 2020. 9.17
著 者 山口ミルコ(昭63文)
発 行 光文社
価 格 本体1600円+税
元敏腕編集者の山口ミルコさん(昭63文)が、出版業界での日々をつづった自伝的作品である。新卒で入った外資系金融機関を早々に退社し、大手出版社に転職。そこで名物編集長「ボス」のもと仕事のイロハを学び、いくつものベストセラーを世に送り出す。そうした自身の鮮やかなヒストリーに、同世代の働く女性たちのインタビューを織り込むことで、「バブル」という特異な時代の実像を多面的に描き出した。
本作のもう一つのキーワードは「会社」だ。会社を愛し、仕事を愛した著者の飾らぬ言葉が、読む者に「会社とは何か」「働くとはどういうことか」という問いを鋭く突き付ける。
一方で「30年前の私が、縁と運に恵まれたことは言うまでもない。けれどもやはり肝心なのは、必死でやる、これに尽きる」と力強く語る。「必死でやっていれば、必ず誰かが自分を見つけてくれる」というメッセージは、働く大人たちはもちろん、これから社会に出る学生たちの胸にも強く響くだろう。


専修人の本・宮嵜教授著
日本における地域経済・社会の現状と歴史
発売日 2020. 9.18
編 著 宮嵜晃臣
発 行 専修大学出版局
価 格 本体1500円+税
本書は2018年5月から6回にわたって実施された専修大学経済学部公開講座「日本における地域経済・社会の現状と歴史」を基に、各講演者がその後の考察も加えて記した論文集である。
本書では現下の日本の地域経済・社会を、その現状を生み出した歴史的経緯を踏まえ、六つの視点から分析している。
第1章では長野県を対象にグローバル化・デジタル化と地域困難との関係、第2章では雇用の地域格差と労働生産性との関係、第3章では東北地方中山間地における貧困と住民の意識との関係、第4章では鉄道敷設と地域開発の関係、第5章では老朽インフラを念頭に地域と財政との関係、第6章ではスポーツと地域活性化との関係をおのおの中心視座に置き、多くの図表を用いて日本の地域経済・社会の現状を解明している。
編著者(みやざき・てるおみ)経済学部教授。専門は日本経済の論点。
専修人の本(吉田文典さん著)
小学校英語教科書単語 パズル&クイズ100
発売日 2020. 8.4
著 者 吉田文典(昭61文)
発 行 明治図書出版
価 格 本体2100円+税
著者の吉田文典さん(昭61文)は30年以上にわたり高校の教壇に立つ現役の英語教諭。豊かな指導経験を生かし、ゲーム感覚で楽しく学べる英語学習本をこれまで数多く出版してきた。
最新作の本書も「英語嫌いを克服するためには、まずは英語に興味を持つことが大切」と語る著者ならではの創意工夫と遊び心にあふれる一冊だ。指定の文字数の語句をつなげていく「英単語のしりとり」や、10×10のマス目に配置されたアルファベットの中から英
単語を見つけ出す「英単語探し」など、趣向を凝らしたパズルやクイズが全100問掲載されている。
2020年度から小学校での英語教育が本格的に始まった。小学校で覚えたい約600の英単語を収録し、学力に応じて問題の難易度を選べる本書は、授業の本題に入る前のイントロダクションとして、または宿題の教材としても便利に活用することができる。
専修人の本(河野真太朗教授著)
暗い世界 ウェールズ短編集
発売日 2020. 7.31
編 訳 河野真太郎
発 行 堀之内出版
価 格 本体1800円+税
本邦初の、ウェールズ文学の短編集です。イギリスの西部の地域または国のウェールズは、ケルト系のブリトン人が元々は住んでいた地域で、今も残って使われているウェールズ語はそのケルト系の言語です。
その一方で産業革命以降は炭鉱地帯として栄え、炭鉱労働者のコミュニティが形成されていきました。その炭鉱も今は昔、産業を失った現在のウェールズは貧困とコミュニティの分断に苦しんでいる部分があります。
本書は20世紀初頭から21世紀にかけてのウェールズを舞台とし、そのようなウェールズの生活のさまざまな面を切り取ってくれる5編の短編を集めたものです。炭鉱、階級、戦争、女性、日常……。そういった多彩な主題が、多彩な語り口で提示されています。
編集・翻訳(こうの・しんたろう)国際コミュニケーション学部教授。英文学。
校友の本(田中ひかるさん著)
明治を生きた男装の女医高橋瑞物語
発売日 2020. 6.16
著 者 田中ひかる(平13院文修)
発 行 中央公論新社
価 格 本体1800円+税
近代医制に基づく女性医師が誕生して135年。現在、医療現場では7万人を超える女性医師が活躍している。本書は、男性しか医師になれなかった時代に道を切り開き、女性医師の草分けとして産科医療に尽力した高橋瑞(たかはし・みず:1852〜1927)の半生を描く。
明治初期「女人禁制」だった医学校への入学を校長に直談判して勝ち取ったり、頭を五分刈りにし、男物の羽織と袴を着て診療を行ったりと、破天荒なエピソードの数々が物語を彩る。
著者である歴史社会学者の田中ひかるさん(平13院文修)は、残された史料を丁寧にひも解くことで、これまで知られずにきた瑞の半生を鮮やかによみがえらせた。
女性医師第一号となる荻野吟子や東京女子医大を創設した吉岡彌生など、同時代を生きた女性医師も複数登場。波乱万丈にして痛快な瑞の生き様を伝える伝記としてはもちろん、日本における女性医師の黎明期を見渡す歴史物語としても楽しむことができる。
専修人の本03(太田教授著)
日本の道路政策 -経済学と政治学からの分析
発売日 2020. 6.16
著 者 太田和博
発 行 東京大学出版会
価 格 本体5500円+税
著者の30年に及ぶ道路政策研究の集大成であり、執筆に5年の歳月を費やした。膨大な体系を持つ道路政策の本質を経済学と政治学の手法を駆使して究明している。大学出版部協会最高峰の東京大学出版会からの刊行のため、敷居が高いイメージがあるが、数式やモデルの使用を避け、図表を多用し、わが国の道路政策の全体像を分かりやすく記述している。
第Ⅰ部は高速道路政策を、第Ⅱ部は一般道路政策(自動車関係諸税を含む)を概観する政策論である。第Ⅲ部は政治論であり、道路公団民営化と道路特定財源の一般財源
化を対象としている。
終章では、道路政策のあり方を論じるとともに、完全な自動運転が実現された社会の将来像を提示している。道路政策についての必読書になろう。
著者(おおた・かずひろ)商学部教授。交通経済学。
専修人の本(飯教授著編)
裁判員制度の10年-市民参加の意義と展望
民事陪審裁判が日本を変えるー沖縄に民事陪審裁判があった時代からの考察 陪審裁判を考える会編
<裁判員制度の10年-市民参加の意義と展望>
発売日 2020. 4.28
編 集 飯考行
発 行 日本評論社
価 格 本体1700円+税
<民事陪審裁判が日本を変えるー沖縄に民事陪審裁判があった時代からの考察 陪審裁判を考える会編>
発売日 2020. 5.19
編 著 飯考行
発 行 日本評論社
価 格 本体3500円+税
市民が刑事裁判に参加する裁判員制度の開始からすでに10年が経過した。『裁判員制度の10年』は、記念シンポジウムの記録を交えて、裁判員裁判を多角的に分析する。『民事陪審裁判が日本を変える』は、さらに民事・行政裁判へ市民が参加を進める意義と可能性を、国内外の学者、実務家や市民が探っている。
裁判員制度の導入により、刑事裁判は、法廷での口頭の主張や証拠に基づいて、公正で人間味ある判断を、市民を交えて行うものへ変わった。市民が加わる充実した裁判を、刑事および民事・行政事件で検討し追求する余地は、まだ豊富に残されていると言えよう。
著者( いい・たかゆき)法学部教授。法社会学。
専修人の本01(日髙名誉教授著)
刑法各論
発売日 2020. 6.26
著 者 日髙義博
発 行 成文堂
価 格 本体4000円+税
本書は、刑法各論の理論的体系書である。刑法各論は、「法解釈の華」と言われるほど論争が激しい。本書は、犯罪の成否を分ける解釈の分岐点を明示して、著者を含む複数の見解の思考過程をたどれるよう配慮し、豊富な設例や判例の分析を通して、具体的事案の解決方法も学修できるよう工夫されている。「考えながら読み、読みながら考える」ことで、学生の法的思考力は涵養(かんよう)されよう。法的感性の発露としての法解釈の姿勢は、本書と対を成す『刑法総論』から変わらず引き継がれている。幅広い学識や美観が反映された随筆調のcolumnも必読である。
本書の上梓により日髙刑法学は完成したが、本学カラーの濃緑と臙脂(えんじ)の帯で象徴される両書が末永く読み紡がれ、はしがきの「いやしけ吉事」の歌のごとく、学生の知見が年ごとに積み重なっていくことで、著者の思いは果たされよう。
著者(ひだか・よしひろ)専修大学名誉教授。刑法学。
専修人の本・土屋教授編著
ドキュメンタリー作家王兵 現代中国の叛史
発売日 2020. 4.4
編 著 土屋昌明
発 行 ポット出版プラス
価 格 本体3600円+税
中国系の映画監督・王兵(ワンビン)の作品を論じた本邦初の専著です。監督最新作『死霊魂』は、1957年、中国の夾辺溝(きょうへんこう)農場で強制労働のあと生還した20数人へのインタビューによるドキュメンタリーです。
生還できた人は500人程度、あとの2000人以上は死亡( 主に餓死)したといいます。背景に毛沢東・中国共産党が仕組んだ「反右派運動」と、中国全国で2000万人以上が餓死したという「大飢饉」があり、中国国内ではタブーです。それを8時間の作品にした監督の手腕は、世界から高く評価されています。
インタビューされた一人、和鳳鳴の映像はすでに『鳳鳴』として単独に発表し、高く評価されていました。
本書は、最新作を視野に、この『鳳鳴』のシナリオを翻訳、徹底的に解読した鼎談を柱とし、監督へのインタビュー、研究者の論文、詳細な作品解説を付しています。
編著者(つちや・まさあき)国際コミュニケーション学部教授。中国語、中国文化史。 
専修人の本・野口教授著
経済政策形成の論理と現実
発売日 2020. 4.22
著 者 野口旭
発 行 専修大学出版局
価 格 本体2800円+税
経済学の役割はこれまで、その知見を通じて社会をよりよくすることにあると信じられてきた。そして、経済政策は、そのための重要な手段と考えられてきた。しかし、現実に行われてきたさまざまな経済政策は、必ずしもその社会的要請にかなうものではなかった。
本書は、経済政策とは何かを、現実の経済政策を素材にしながら論じた上で、問題点がどこにあるのかを明らかにする。
経済政策を生み出すのは専門世界であるが、それを最終的に承認するのは一般社会である。したがって、経済政策がその本来の目的にかなうためには、専門世界と一般社会との健全な関わりが必要不可欠なのである。
日本語版監修(いのうえ・ゆきたか)国際コミュニケーション学部教授。ラテンアメリカ文化論。
著者(のぐち・あさひ)経済学部教授。現代経済入門、国際経済論。
専修人の本_井上教授著『マヤ・アステカ文化辞典』
ビジュアル図解 マヤ・アステカ文化事典
発売日 2020. 2.19
日本語版監修 井上幸孝
発 行 柊風舎
価 格 本体15000円+税
本書はマヤ・アステカを中心にメソアメリカ(メキシコから中米にかけて栄えた文明圏)について項目別に詳述したものである。 「主要人物」「権力・儀式・政治」「日常」「神々と宗教」「遺跡と都市」の五つのセクションに分かれており、各セクションには15〜30項目が含まれている。 本書の特徴として、フルカラーの写真や図版を多数収録し、図像などを詳しく解説している点、さらに事典形式で個別の項目ごとに読むことができる点が挙げられる。概説書や通史ではなかなか扱われない事項の説明が特に充実している。
日本語版監修(いのうえ・ゆきたか)国際コミュニケーション学部教授。ラテンアメリカ文化論。
専修人の本_樋口教授著『歴史のなかの人びと』
歴史のなかの人びと-出会い・喚起・共感
発売日 2020. 4.14
編 著 樋口映美
発 行 彩流社
価 格 本体2200円+税
アメリカ人研究者4人と本学経済学部永島剛教授を含む歴史研究者14人が、自分たちの出会った歴史を今どう伝えればよいのか、過去3年間試行錯誤した。その結果が本書である。 「記憶」「モノ(史跡・写真)」「事件・出来事」「意識」を手掛かりに展開される歴史の一コマは、活動家との対話、奴隷制下の裁判記録や日記、史跡案内、19世紀イギリスの石鹼をめぐる近代、ベトナム難民の運命、メキシコの新聞少年たちの日常、虐殺のうわさ、有名デパートの店員の話など多種多様。どこからでも自由に読める。 それぞれの歴史の一コマから何が読み取れるか、本書の執筆者と共に考えてみてほしい。歴史を考える楽しさ、歴史から今を考える面白さを発見できるかもしれない。
編著者(ひぐち・はゆみ)文学部教授。アメリカの人種と政治。
専修人の本(棟居快行教授著)
憲法の原理と解釈
発売日 2020. 1.30
著 者 棟居快行
発 行 信山社出版
価 格 本体8800円+税
自身の学術書としては4冊目になる本書を、これまでと同様「信山社出版」から〈刊行〉しました。〈敢行〉も〈慣行〉も〈観光〉さえも誤字とは言い難い、まさにその通りの出版でした。
専修大学の紀要などですでに公表ずみであるにもかかわらず、あえて再チャレンジとして「敢行」します。業界の「慣行」として、同業者諸氏らが本書を斜め読みされるでしょう。もちろんなかには、学説を熱心に調べる学生さんが、図書館で本書の風景を「観光」することもあるでしょう。
こうして言葉遊びをする私ですからこそ、判例や通説につき、「本当にそうなのかい?」と考え込むのが習い性です。今回で問いかけは一休みし、分かりやすい回答を用意する作業がいよいよこれからです。「乞うご期待」は自分への励ましです。さてさて、問いかけのプロがうまく答えられるか否か⁉
著者(むねすえ・としゆき)法科大学院教授。憲法学。
専修人の本(小藤康夫教授著)
Management Issues of Life Insurance Companies
発売日 2019
著 者 小藤康夫
発 行 アジア生命保険振興センター
価 格 無料取り寄せ、電子版
本書は2018年に出版された『生保会社の経営課題』(小藤康夫著・税務経理協会)の英訳書籍である。
アジアの人たちにもわが国の生保の現状を知ってもらうために企画された。
戦後の日本経済は高度成長から安定成長へ移行し、今日では人口減と少子高齢化という重い課題を背負わされている。
生保も日本経済とまったく同じ動きを展開している。隘路(あいろ)に陥った生保がどのような対応策を講じているのかを探っている。
若さにあふれたアジアの国々の成長は著しく、生保市場も確実に伸びている。だが、日本のように低迷状態に陥る時期がいずれ訪れるかもしれない。その時、日本の現状が参考になるのではないだろうか。
著者( こふじ・やすお)商学部教授、金融論、金融サービス。