専修人の本_2018年度

就職先はネジ屋です
就職先はネジ屋です
発売日 2019.03.06
著 者 上野歩著(昭63文)
発 行 小学館文庫
価 格 730円+税
旋盤工を取り上げた『削り屋』(小学館文庫)をはじめ、型屋、ヘラ絞り職人といった製造業で働く人々をテーマとした小説を書き続ける上野歩さん(昭63文)。最新作は、厳しい就職活動を経て母親が経営するネジ会社で奮闘する女子社員ユウの物語。提案型の営業や緩まないネジの開発など、ユウが仲間や業界のスペシャリストとともに新しい世界を切り開いていく姿を生き生きと描く。
上野さんは執筆にあたり、専修大学就職課や卒業生を取材。冒頭、ユウがキャンパス「9号館5階アトリウム」で同級生と話すシーンは、専大生ならその情景が思い浮かぶ。第一志望の企業に落ちたユウが就職課を訪れる場面では、「ライバルたちに比べ、自分の能力が足りなかった||そう振り返る謙虚さがあってもいいんじゃないかな」と職員が諭す。
取引先の会社社長から言われた「御用聞きと営業は違う」など、奮闘するユウに向けられた言葉が、大学生、就活生や若手会社員にも響く。
計算論的精神医学 ―情報処理過程から読み解く精神障害
計算論的精神医学 ―情報処理過程から読み解く精神障害
発売日 2019.01.25
著 者 国里愛彦共著
発 行 勁草書房
価 格 3500円+税
現在の精神医学は、疾病分類が生物学的知見に基づいていない、生物学的知見と臨床症状の間に説明のギャップがあるといった問題を抱えている。
これらの問題を克服するために、生物学的知見と臨床症状の架橋を目的とし、生成モデルを用いる研究分野である計算論的精神医学への注目が世界的に集まっている。
本書では、精神医学研究の現状から始め、計算論的精神医学の枠組み、主要な生成モデルが解説され、重要な先行研究が紹介されている。計算論的アプローチによって、精神医療に携わる臨床家と神経科学・情報科学の研究者が架橋される一冊である。
共著者(くにさと・よしひこ)人間科学部准教授。臨床心理学。
公民権の実践と知恵 ―アメリカ黒人 草の根の魂
公民権の実践と知恵 ―アメリカ黒人 草の根の魂
発売日 2019.02.21
著 者 樋口映美訳
発 行 彩流社
価 格 4800円+税
本書は、1950年代末から今日までアメリカ合衆国南部のミシシッピ州で公民権の問題に取り組んできたホリス・ワトキンズの自伝BrotherHollis: The Sankofa ofa Movement Man(2016年)の全訳である。
公民権運動と言えば、指導者はキング牧師で、キング暗殺の頃には終わると思っている人が多い。そうした風潮にまどわされずに、公民権をめぐる実態を伝えたいと願う語り手たちが多くの自伝を出版している。本書の著者ワトキンズもその一人である。その叙述は、活動の手順、非人間的な差別と恐怖の実態などに及び、その極めて具体的な描写は他に類がない。しかも、幼年時から現在までの経験をワトキンズは正直に語る。
実践経験から知恵を練り上げ、次世代の若者たちに伝えようとしているワトキンズの思いが、読み手の心を打つだろう。
訳者( ひぐち・はゆみ)文学部教授。アメリカの人種と政治。
チャンスをつかみとれ!人生を変える14の物語
チャンスをつかみとれ!人生を変える14の物語
発売日 2019.01.01
著 者 大澤史伸著(平9院文修)
発 行 日本地域社会研究所
価 格 1250円+税
東北学院大学( 仙台市)の准教授で社会福祉論、福祉サービス論などを担当する大澤史伸さん(平9院文修)が、聖書の中から14のメッセージを取り上げ「人生の成功のヒント」を伝える。
あなたのパンを水に浮かべて流すがよい。月日がたってから、それを見いだすだろう。(コヘレトの言葉11章1節)では▽しんどい時にこそ勝負する▽忍耐を持ってじっくり待つ▽必ず良い結果として戻ってくるのを信じる||ことが大切だと説く。『聖書のパワー物語 人生を変える20の秘訣』に続く第2弾。
地域通貨によるコミュニティ・ドック
地域通貨によるコミュニティ・ドック
発売日 2018.10.01
著 者 西部忠編著
発 行 専修大学出版局
価 格 2800円+税
地域通貨とは、一定の地域やコミュニティでしか流通しない通貨をあえて導入することで、域内経済を活性化し、相互扶助やつながりを強めてコミュニティを豊かにしようという社会実験である。
日本でも今世紀初頭にブームが来たが、地域通貨というツールを助成金目当てでただ導入するだけでは長続きしなかった。人間は長年身につけた価値観や慣れ親しんだ思考習慣を簡単には変えられない「内なる制度」を抱えた存在だからだ。
コミュニティ・ドックは、検診結果に基づくセルフチェックから気づきを経た生活習慣の転換につなげる人間ドックに着想を得て、コミュニティが自らの現状に気づき、自己変容するプロセスに研究者も参加するアクションリサーチ手法である。
「外なる制度」と「内なる制度」の同時変化を対象とする進化経済学の政策論であるメディア・デザインを補完する実践的調査=運動手法である。
編著者(にしべ・まこと)経済学部教授。進化経済学
たのしいベイズモデリング 事例で拓く研究のフロンティア
たのしいベイズモデリング 事例で拓く研究のフロンティア
発売日 2018.10.04
著 者 小杉考司、国里愛彦ほか著
発 行 北大路書房
価 格 2700円+税
本書はベイズ統計学の応用例として、心理学をはじめとしたさまざまな専門領域、研究テーマでのモデリング事例を集めた一冊である。
ベイズ統計学を応用することで、データがどのように生成されたかというメカニズムを数式で表現し、メカニズムに含まれるパラメータを推定することで、より実践的な知を得ることができる。各章はいずれも、ワクワクするような知的探究心をモデルで表現しており、検証する楽しさにあふれている。
共著者(こすぎ・こうじ)人間科学部准教授。心理統計学。(くにさと・よしひこ)人間科学部准教授。臨床心理学。
ほかに、坂本次郎(文学研究科博士後期課程中退、産業技術総合研究所人工知能研究センター)、杣取恵太(文学研究科博士後期課程)、北條大樹(文学研究科修士課程修了、東京大学教育学研究科)など。豊田秀樹編著。
沖縄報道 -日本のジャーナリズムの現在
沖縄報道 -日本のジャーナリズムの現在
発売日 2018.10.26
著 者 山田健太著
発 行 ちくま新書
価 格 900円+税
基地問題など沖縄をめぐる報道の在り方を中心としたマスコミ論。新聞を主たる題材に沖縄と県外のメディアが何を報じ、あるいは何を報じていないのか―。報道の実情と、それを生み出す構造を解き明かしている。
沖縄メディアの特徴として、地元の大手2紙である沖縄タイムス、琉球新報をはじめとする地元メディア各社の成り立ちや歴史的背景を解説。米統治時代からの自由への希求の強さ、中央政治に対して意思を明示する沖縄県民の独自性が「沖縄民衆ジャーナリズム」を生み出した。そこに県民の心が反映されていると説く。
また昨今話題の偏向報道、フェイクニュースやヘイトスピーチなどの問題についても触れている。
著者( やまだ・けんた) 文学部教授。言論法、ジャーナリズム論。
株・証券用語がよくわかる本
株・証券用語がよくわかる本
発売日 2018.09.28
著 者 石原敬子著(平2文)
発 行 秀和システム
価 格 1500円+税
2006年に刊行され、学生や投資初心者向けの本として第4版まで改訂を重ねてきた『株・証券用語がよ〜くわかる本』をリニューアル。古くなった用語と最近よく使われる用語を入れ替え、情報も最新のものにアップデートした。
基本である「証券」から始まり、「ロボアド」などの最近の投資環境に関する用語まで、最新・最重要語句350語を、かみ砕いた表現と豊富な図解イラストで分かりやすく解説。各用語にはユニークな一言コメントが添えられており、クスッと笑いながら、楽しく学ぶことができる。
著者の石原敬子さん(平2文)は証券会社で13年間、営業を経験、現在はファイナンシャル・プランナーとして活躍。『金融用語がよ〜くわかる本』なども執筆している。「初心者にも分かりやすく、お客様に寄り添った解説書を心掛けた」
経営者が楽になる!職場のメンタルヘルス対策
経営者が楽になる!職場のメンタルヘルス対策
発売日 2018.09.14
著 者 荒木田和子著(平元文)
発 行 ギャラクシーブックス
価 格 1350円+税
〝心のケアの専門家〞臨床心理士として活躍する荒木田和子さん(平元文)の初の著作。企業における臨床心理士の役割やメンタル面から従業員をサポートするEAP(従業員支援プログラム)の展開方法などを解説し、臨床心理士を会社経営に活用する方法を紹介している。
荒木田さんは、福祉・医療・産業領域で25年以上の実務経験を持ち、現在はEAPコンサルタント業務を行うEAPパートナーカウンセリング・オフィスで代表を務める。
本書では特に、中小企で活用できる臨床心理士の仕事やサービスについて実例を交えて紹介。「中小企業の経営者の方々は、社員の心の問題をどこに相談していいか分からない。そういう人にEAPを知ってもらい、利用してほしい」と話している。
日本の鉄道 鉄道趣味初心者からマニア・コレクターまで
日本の鉄道 鉄道趣味初心者からマニア・コレクターまで
発売日 2018.07.21
著 者 野口武悟編著
発 行 日外アソシエーツ
価 格 9250円+税
鉄道を趣味として愛好する人は老若男女を問わず多い。一口に鉄道といっても、鉄道写真、旅行、模型、時刻表、駅弁など、愛好する人のジャンルは幅広い。そして、これらのジャンルごとに、あまたの図書が生み出され、鉄道の魅力や奥深さを社会に発信し続けている。
本書は、鉄道をテーマとしたレファレンスツール( 調べるためのツール)である。
これまでも鉄道についての事典や図鑑といった事実解説タイプのツールは数多く編まれてきた。しかし、本書は、事項解説を載せつつも、案内指示タイプのツールとして編まれた。つまり、鉄道について書かれた主要な図書を網羅した書誌である。
鉄道初心者向けから上級者向けまでの図書5410冊の書誌情報を収めている。鉄道を知る旅への出発駅として本書を利用してほしい。知のナビ事典。
編者(のぐち・たけのり)文学部教授、図書館学。
「かたり」の日本思想 さとりとわらいの力学
「かたり」の日本思想 さとりとわらいの力学
発売日 2018.04.20
著 者 出岡宏著
発 行 角川選書
価 格 1700円+税
昔から人々を楽しませてきた能、歌舞伎、狂言、落語などの芸能では人生の苦楽、機微といったことが表現されてきた。本書では「さとり」「とむらい」「いましめ」「わらい」の四つに分類しながら物語を読み解き、その根底に流れる日本人の価値観や死生観に踏み込んでいく。
「芸能や詩歌は日本人の思想なのである」(「まえがき」より)。著者は日本人の生き方を、芸能を通して、面白く、粋なものとして語れないか、本書で試みている。
執筆にあたり、著者は大学生やゼミ生に向けた講義をイメージした。日ごろ、教室で行っている工夫が随所に反映されており、映画や落語など、さまざまな物語を引き合いに出しながら話を展開。読み手を飽きさせない。
著者(いずおか・ひろし)文学部教授。日本思想史。
「毒婦」和歌山カレー事件20年目の真実
「毒婦」和歌山カレー事件20年目の真実
発売日 2018.07.02
著 者 田中ひかる著(平13院文修)
発 行 ビジネス社刊
価 格 1600円+税
夏祭りで作られたカレーにヒ素が混入され、67人が急性ヒ素中毒を発症し、うち4人が死亡した和歌山カレー毒物事件から今年で20年たった。
現場近くに住む林眞須美夫妻が別件逮捕され、妻はカレー事件の殺人と殺人未遂容疑で再逮捕。カレー事件無罪を主張して争ったが2009年死刑が確定。再審請求は棄却され即時抗告している。
カレー事件の現場で何が起き、法廷で何が裁かれたのか。眞須美死刑囚はカレーに毒物を混入させた「毒婦」として人々にイメージされ、メディアスクラム(集団的過熱取材)があったことも、人々の記憶に刻まれている。
歴史社会学者の田中ひかるさん(平13院文修)はカレー事件の資料や報道内容を一から検討し、眞須美死刑囚と面会・文通を重ね、林一家を長年取材してきた。本書では「女性の犯罪とジェンダー」という側面から切り込み、死刑囚の「実像」と事件の「真相」に迫っている。
過労自死の社会学-その原因条件と発生メカニズム
過労自死の社会学-その原因条件と発生メカニズム
発売日 2017年度専修大学課程博士論文刊行助成による出版。2018.8重版
著 者 小森田龍生著
発 行 専修大学出版局
価 格 2600円+税
労働者の自死問題は、過労自死(過労自殺)と呼ばれ、その主たる原因は長時間労働・働き過ぎであると考えられてきた。しかし、日本で長時間労働を強いられる労働者は多数存在するが、ほとんどの場合、健康をむしばまれながらも自死には至らない。長時間労働だけを原因と捉えてては、労働者の自死問題の実態を見誤る。
では、労働者を自死に追い込む長時間労働以外の要因とはいかなるものか。本書はこの点について、判例を対象とした計量分析と事例研究により、職場での人間関係上の問題( ハラスメント等)が鍵であることを明らかにする。証拠が残りづらく、線引きも難しい人間関係上の問題への対策は容易ではない。それでも、日本人の「働き方」が問われているいまこそ目を背けずに議論を深める時機だ。
著者(こもりだ・たつお)経営学部非常勤講師。労働社会学、死の社会学。
日本経済論-史実と経済学で学ぶ
日本経済論-史実と経済学で学ぶ
発売日 2018.01.18
著 者 櫻井宏二郎著
発 行 日本評論社
価 格 2600円+税
本書は、大学生と一般ビジネスマン向けに書かれた日本経済のテキストである。「史実と経済学で学ぶ」と副題にあるように、特徴は歴史的経緯と経済学的視点を重視しているところにある。
江戸や明治から始まるところは経済史のようであるが、人的資本理論を持ち出し、生産要素賦存に注目するところは開発経済学に近い。また日本的経済システムのルーツを探るのは本書の隠れたテーマである。後半は、バブル崩壊とアベノミクス、今後の人口減少の影響などにページ数が割かれ、近年の経済事情の解説となっている。
専門知識なしで読めるよう平易な言葉で書かれており、経済・経済学の入門書としても薦められる。
著者(さくらい・こうじろう)経済学部教授。日本経済論。
言葉の魂の哲学
言葉の魂の哲学
発売日 2018.04.10
著 者 古田徹也著
発 行 講談社選書メチエ
価 格 1700円+税
あたかも魂が入ったかのように、言葉が生き生きとした表情を持ち始める瞬間。あるいは逆に、言葉から表情が急に失われ、魂が抜けたように感じる瞬間。本書は、そうした体験のもつ言語実践上の意味と、その社会的な重要性を探っている。
まず、第1章で取り上げられるのは、中島敦の『文字禍』と、ホーフマンスタールの『チャンドス卿の手紙』という2編の小説である。そこで浮上する論点を踏まえて、続く第2章と第3章では、ウィトゲンシュタインとカール・クラウスの特異な言語論がそれぞれ詳しく跡付けられている。
以上の探究を通じて本書は、言語をめぐる意外な論点を指摘し、同時に、言語を用いて生活する私たちの社会にとって重要な、一個の倫理の存在を明るみに出している。
著者( ふるた・てつや)文学部准教授。哲学・倫理学。
ホロコースト表象の新しい潮流 -ユダヤ系アメリカ文学と映画をめぐって
ホロコースト表象の新しい潮流 -ユダヤ系アメリカ文学と映画をめぐって
発売日 2018.04.04
著 者 坂野明子共著
発 行 彩流社
価 格 3000円+税
本書は2013年から3年間にわたって「21世紀のホロコースト表象」というテーマで科研の助成を受け、研究を重ねてきた成果として出版されたものである。
アウシュヴィッツ解放から73年、戦後生まれのユダヤ系アメリカ作家たちにとっては、時間的にも地理的にも遠く離れた事象でありながら、ホロコーストはアイデンティティーにも関わる大きな問題だった。本書では、アメリカにおけるホロコースト受容の歴史やイスラエルの政治利用などの時代状況も絡めながら、各作家のホロコースト表象を検証している。
なお、近年はヒトラーやホロコーストを扱った映画が数多く制作されているが、そこから見える新しい傾向についての詳細な論考も含まれている。
著者( さかの・あきこ)文学部教授。アメリカ文学。他の著者は▽佐川和茂青山学院大名誉教授▽大場昌子日本女子大教授▽伊達雅彦尚美学園大教授
キリの理容室
キリの理容室
発売日 2018.05.10
著 者 上野歩著(昭63文)
発 行 講談社
価 格 1500円+税
理容店を舞台にした小説『キリの理容室』は、自分と父親を捨てた理容師の母親を見返すため、専門学校を卒業し理容店で修業する神野キリの物語。彼女の夢は「女性も通えるおもてなし精神の店を持つこと」だ。
著者の上野歩さん(昭63文)は小説すばる新人賞でデビュー。最近は、『削り屋』をテーマに町工場を取材した小説が話題に。今回はその取材力を生かして理容業界の理想と現実に迫った。
きっかけは、複数の理容師との出会い。業界の歴史を学び、理容学校の授業を受けた。「ハサミやカミソリを扱う生徒たちの真剣なまなざしに圧倒された」と言う。
全国に10万軒といわれる理容店。競争は激しく、店主は、ウデはもちろん、立地から従業員の育成まで経営全体への力量が求められる。文中でも神野キリがこうした課題に直面し、悩む場面が出てくる。
上野さんは「奮闘する主人公が社会人として成長する姿に心を寄せてくれたらうれしい。これからも一途に打ち込む職人に光を当てていきたい」と話している。
五日市憲法
五日市憲法
発売日 2018.04.21
著 者 新井勝紘著
発 行 岩波新書
価 格 820円+税
1968年夏、東京の五日市にある「開かずの蔵」と呼ばれる朽ちかけた土蔵から、和紙24枚つづりの文書がみつかった。この地域の自由民権運動から誕生した「五日市憲法」草案である。当時学生で、最初にこの草案を手にした著者はのちに日本近現代史の学者となる。
本書では、発見に至った経緯を当時の時代背景とともに紹介。起草者である千葉卓三郎の足跡をたどり、草案と格闘してきた半世紀を振り返ることで、千葉ら草案づくりに情熱を燃やした五日市の人々の真意に迫る。
そこから見えるのは明治憲法発布前である1880年代の民衆の姿だ。明治維新ののち、国のあり方を真剣に考え、議論を重ね、自分たちで憲法を創ることによって新しい日本の姿を夢見た。
著者は言う。「基本的人権について多く触れている五日市憲法の、現代に通じる輝きを感じ取ってほしい」
著者(あらい・かつひろ)元文学部教授。自由民権運動史。
映像の可能性を探る
映像の可能性を探る
発売日 2018.03.30
著 者 土屋昌明編著
発 行 専修大学出版局
価 格 3200円+税
本書は2013年から3年間にわたって取り組まれた社会科学研究所特別研究助成のグループ研究「方法としてのドキュメンタリーの形成とアジアにおける発展」の成果をまとめた一冊である。
20世紀後半、映像による視覚文化が発展するプロセスで、特にドキュメンタリー映画が、どのような作用を及ぼすものとして扱われてきたかを、「事実記録」「プロパガンダ能力」「文化人類学への利用」「文化理解や文化交流への活用」などの側面から考察している。
各章の担当は▽第1章 下澤和義商学部教授▽第2章 上原正博法学部教授▽第3章 根岸徹郎法学部教授▽第4章 土屋昌明経済学部教授▽第5章 三田村圭子経営学部非常勤講師▽第6章 劉文兵経済学部非常勤講師。
社会科学研究叢書20。
編者(つちや・まさあき)経済学部教授。中国語。
ミルコの出版グルグル講義
ミルコの出版グルグル講義
発売日 2018.01.29
著 者 山口ミルコ著(昭63文)
発 行 河出書房新社
価 格 1500円+税
出版社の編集者としてヒット作を次々と世に出してきた山口ミルコさん(昭63文)は、2009年に退社後、文筆家としてエッセーなどを上梓、本書は4作目の著作となる。2016年から2年間、大学の教壇に立ち、本の編集について講義を行った。
大学の非常勤講師としての経験と、本を作る側と書く側双方の体験を合わせ、「出版とは何か」を考える一冊になっている。講義の準備として書店や倉庫、古紙再生工場や印刷所などの現場に足を運んだ。本の廃棄作業を行う工場で新品の本が粉々に砕かれる衝撃的な場面の描写もある。
タイトルの「グルグル」は人と人とのつながりや物事の連鎖を意味し、本書の随所に現れる。編集者という仕事を伝えるグルグルの中で得た著者の発見がちりばめられている。
引き抜き屋 1 鹿子小穂の冒険
引き抜き屋 1 鹿子小穂の冒険
      2 鹿子小穂の帰還
発売日 2018.03.15
著 者 雫井脩介著(平3文)
発 行 PHP研究所
価 格 1巻 1700円+税 ・ 2巻 1800円+税
アウトドア用品メーカー創業者の娘として育った主人公・鹿子小穂。父との確執を持ちながらも、創業家の一人として父の会社で役員を務めていた。あるとき父は、大槻という人間を会社に招き入れた。「ヘッドハンター」を介した、いわゆる独断人事。大槻と衝突し会社を去った小穂だが、奇妙な縁でヘッドハンティング会社の社員になる。
心機一転、ヘッドハンターとなった小穂は優れた経営者たちとの出会いを通して「経営」や「仕事」、そして「人」とは何かに目を開いていく。そんな小穂のもとに、父の会社が経営危機になっている知らせが―。父娘の苦い関係を抱えつつも、小穂は父の会社の救済に奔走する。
ひたむきに仕事を続ける主人公が、人間としてもプロフェッショナルとしても成長していくヒューマン・エンターテインメント。作家・雫井脩介さん(平3文)は新たな境地を開いた。
生保会社の経営課題
生保会社の経営課題
発売日 2018.03.10
著 者 小藤康夫著
発 行 税務経理協会
価 格 2400円+税
わが国の生保市場は大きな変化に直面している。保障型生保商品が中心の構造から貯蓄型生保商品へ移行しており、また、運用環境は激変し、高金利から超低金利の時代に転換している。
しかも、日本経済は人口減少から高成長は望めない。わが国の経済活動が低迷するなかで、生保市場だけが伸びていくのはかなり難しい。
本書では、厳しい経済環境のもとで生保会社に突きつけられたさまざまな経営課題について、年度ごとに発表される決算報道に基づきながら、わかりやすく解説している。
その期間は2010年3月期から17年3月期まで。
これにより生保会社の変遷とともに将来の姿が明らかになるのではないかと思われる。
著者( こふじ・やすお)商学部教授。金融論、金融サービス。