専修大学国際コミュニケーション学部日本語学科

王 伸子 教授

授業について

— まず、王先生の担当されている授業について教えていただけますか。
学部では「日本語の音声」「日本語表現論1」「メディア日本語論2」「日本語教育実習C」の科目を担当しています。
「日本語の音声」では、日本語の音韻の歴史を学び、さらに、現代日本語の発音の仕組みを学びます。とくに現代日本語については、国際音声記号(IPA:International Phonetic Alphabet)とその記述を学んだり、外国語の発音やその仕組みと比較して観察したりということも行います。留学生が何人もいますので、実際の発音を観察することも行います。
「日本語表現論1」では、日本のトップナレーターを講師陣とするスクールバーズの協力を得て、日本語がどのように、説明文として音声を伴って機能するかということを学び、実際の訓練も受けることができます。
「メディア日本語論2」では、TBSの番組制作会社、TBSスパークルアナウンス部に協力していただき、番組制作にかかわる日本語表現を学び、実践訓練もおこないます。
「日本語教育実習C」は、2年生以上が履修登録し、事前準備の後、海外の大学で約2ヶ月間の日本語教育実習に参加する実習科目です。これまでは提携大学であるカナダのカルガリー大学で実習をおこなってきました。現在はコロナ禍の影響で自由な往来も制限されているため、状況に対応して海外実習を準備します。
カナダでの教育実習の写真です。
— 先生は大学院でも教えていらっしゃいますね?
はい、日本語教育と音声の関わりについて研究している大学院生が集まっています。2022年度現在、修士課程3名、博士後期課程6名が在籍しています。それぞれ、中国語や韓国語、ネパール語と日本語との対照研究を中心に研究したり、インタビューの日本語、文字と音読の関係などをテーマとして研究したりしています。院生の海外や国内での研究発表には、大学から旅費等の補助が出る制度があり、研究成果の発表も奨励されています。また、修了生の多くは、国内や海外の日本語教育現場で日本語教師として教えています。

ゼミナールについて

— 次に、王先生のゼミについて、教えてください。
「日本語教育」と「音声研究」をテーマとして、ゼミを行っています。日本語教育を専門分野にしているということは、日本語の教え方を研究しているというイメージがあるかもしれませんが、この専門分野の教員は、多くの場合、言語学の中の一分野を自分の研究テーマとしていて、なおかつ、それを日本語教育に応用するという立場で研究しています。私の場合、そのテーマが音声研究というわけです。
— 音声研究は、日本語教育の中でどのように応用されるのですか?
例えば、外国人の学習者が日本語を習得するとき、どのような発音が難しいのか、あるいは、逆に、どのような発音が学習しやすいのか、という点の解明に、音声研究が役立ちます。また、外国語の音を聞き分けるのはどうして難しいのかなど、言語学習を音声の面から考えることができます。
王ゼミの写真です。
— では、基本的には日本語教育に興味がある人が集まっているのですね?
日本語教育に興味がある、あるいは、日本語教師になりたいという学生が多いのは確かですが、「音声」そのものに興味がある、ナレーションや表現の仕事をしたいという学生も少なくありません。
卒論のテーマとしては、音声研究のトピックを選ぶ場合が多いですね。常にICレコーダーなどの録音機で学習者の音声や母語話者の音声を録音し、音声分析ソフトを用いてコンピュータで音響分析を行っている学生が多くいます。
— 他には、何か特徴的な研究などはありますか?
最近では、書き言葉や話し言葉のコーパスを使ったり、会話文をコンピュータでデータベース化して分析したりするなど、コーパスを利用した研究に興味を持つ学生も増えています。

研究について

— では、先生のご研究について教えてください。
ゼミのところでも説明した、「日本語教育」と「音声研究」を専門領域としています。ここ数年、日本語の表現音声であるナレーションの特徴分析をしており、多くのナレーターや声優、アナウンサーのみなさんの協力を得ることができています。それを日本語教育の教材に活用する取り組みもしており、教材開発にも取り組んでいます。海外の研究者とも活発に情報交換しています。
— 音声の研究は、コンピュータが苦手な学生には難しいですか?
音声を研究するということは、耳で聞いた音の中にどのような情報がつまっているのかに興味を持ち、それを知りたいという気持ちで取り組むものです。まず、自分で聞いて判断し、それを裏付けるために、客観的な証拠として、高さを表す周波数や母音のフォルマントなどの物理的結果をコンピュータで抽出します。まず、じっくりと音に向き合うことが大切です。コンピュータでの音声分析には比較的簡単に扱えるソフトがありますので、基本的な操作が分かれば問題ありません。
海外教育実習の写真です。

メッセージ

— 最後に、受験生や在学生にメッセージをお願いします。
日本語教育とは、客観的に観察した「日本語」を、外国語として教えるということです。外国語に興味がある人、海外で活動をすることに興味がある人には、新しい発見の多い分野だと思います。今まで難しいと思っていたことに取り組み、それを理解できたとき、やり遂げられたとき、そこに新しい喜びを発見できると思います。日本語という毎日接している言語の中に、その新しい発見をしてみたいみなさんをお待ちしています。
王伸子

おう 伸子のぶこ(教授)

1988年、筑波大学大学院地域研究研究科地域研究専攻日本語教育コース修了。名古屋大学総合言語センター非常勤講師等を経て、1991年から現職。

<リンク>

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