専大日語・コラム
専大日語の教員による、月替わりのコラムです。
2026年9月:「はい」、朝です。
はい、こんにちは。須田です。
散歩をしていると、知らない人から「おはようございます」と声をかけられることがあります。こちらも「おはようございます」と返せばいいのですが、すれ違いざまなど、私はとっさに「はい」と答えてしまうことも。「ハーイ」と陽気に返すのではない。ごく普通の「はい」。
考えてみると、これは少しヘン。
「おはようございます」は質問ではないから、肯定も否定もできない。「おはようございます」「はい」というやりとりは、文字にしてみると、どこかちぐはぐに見える。
しかし、「はい」は、もともと単純に「yes」を意味することばではないし。「明日来ますか」「はい」なら肯定、「ちょっと待ってください」「はい」なら承諾、「田中さん」「はい」なら呼びかけへの応答である。また、長い話を聞きながら「はい、はい」と言うときには、「聞いています」という合図にもなる。つまり「はい」には、相手から届いたことばを「受け取りました」と示す働きもあるらしい。
そう考えれば、散歩中の「おはようございます」「はい」も、それほどおかしくない。私は挨拶の内容を肯定したのではなく、見知らぬ人から投げられた小さなことばを、たしかに受け取ったということだ。
もっとも相手には、「朝であることを確認してくれた人」に見えているかもしれませんね。
はい、また次回。
(須田淳一)
<参考文献>
- 高橋太郎ほか(2005)『日本語の文法』ひつじ書房(第19章 2. 文ののべかた) [OPAC]

