専修大学国際コミュニケーション学部日本語学科

専大日語・コラム

専大日語の教員による、月替わりのコラムです。

2023年5月:プラハ通信(第2号)

2023年5月の連休中、中央ヨーロッパの国、チェコ共和国に出張してきました。今月のコラムでは、チェコの首都、プラハで開催したワークショップの様子をお届けします。

チェコでは、プラハ・カレル大学、マサリク大学、パラツキー大学という3大学に日本語を専攻できる学科が設置されています。 ここで日本語学を教えているチェコ人の先生方と、“Workshop on Spoken Language: Czech and Japanese” というワークショップを企画しました。 チェコで日本語を学んでいる学生たちを対象に、 (1) チェコ語と日本語の「話し言葉」の特性について議論すること、 (2) コーパスを使って日本語の話し言葉を分析する方法を学ぶこと、という2点を目標にしました。

実は、私がチェコでワークショップを開催するのは2回目です。 前回は2019年11月、プラハ・カレル大学で “Corpora and Japanese Linguistics” というワークショップを開催しました。 当時の様子は、前回の「2019年2月:プラハ通信」を参照してください。また、こちらの記事もどうぞ。

さて、今回は2日間にわたるワークショップです。メニューはこちら。 1日目は「話し言葉とは何か?」「非流暢性とは何か?」「コーパスとは何か?」という講義。 2日目は日本語コーパスを「中納言」で検索し、集計・分析して発表するグループワークです。

チェコ国内の3つの大学から、日本語を学んでいる学部生・大学院生・教員、30名ほどが集まりました。 コーディネーターは、プラハ・カレル大学の Petra Kanasugi 先生。 最初に、初対面の学生同士でグループを組ませて、仲良くなってもらうためのアイスブレイク。 日本地図を書いてもらいました(珍回答が続出でした)。

次に、じゃんけんで各グループの代表者を決めてもらいます。 代表者は教室の前に出て、私の鉄板ネタ、「フィラーを使わずに30秒スピーチをせよ」というお題にチャレンジ。

日本語を学び始めたきっかけをチェコ語でスピーチしてもらいます。ただし、一言でもフィラーを発したら即終了。 一人ずつスピーチをするも、思わず Ach...と口からこぼれてしまうチェコのみなさん。大いに盛り上がりました (このネタは、どの国でやっても必ず受けます。機会のある方、お試しあれ)。

ここからは話し言葉をめぐる講義。「言語が備えるべき条件」「話し言葉と書き言葉の違い」「非流暢性のタイプ」「コーパスの基礎概念」などについて学びました。 専大日語で私の授業「日本語の語彙・意味」「コーパス日本語学」を受講したみなさんは、覚えていますよね(よね?)。

1日目の終了後、学生たちが伝統的なhospoda(パブ)に連れて行ってくれました。 チェコ名物の「フライチーズ」を、とても美味しくいただきました。チェコではジャガイモ(とパン)が主食です。

チェコはビールの個人消費量が世界一。隣の醸造所で作ったばかりの美味しいビールを楽しみました。 さらに、私が大好きなBecherovkaやFernet Stock(薬草酒)、 Božkov(ラム。ただしサトウキビではなく、テンサイやジャガイモが主原料)、Vaječný koňak(牛乳+玉子+ラム)などチェコのお酒を堪能。 それにしても酒が強いチェコのみなさん、私がちびちびやっているショットグラスを、次々に一口で空けていくのは圧巻でした。

ワークショップ2日目は、日本語コーパスの歴史と現状についてレクチャーした後、各自のPCを使ってコーパスを検索してもらいました。 『日本語話し言葉コーパス』(CSJ)、『日本語日常会話コーパス』(CEJC)、『昭和話し言葉コーパス』(SSC)を使って、 話し言葉に現れるフィラーの分布(男女差、独話vs会話、時代差)について分析しました。 また、『現代日本書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)を使って、書き言葉に現れるコロケーションの分析も行いました。

各グループで分析した結果をスライドにまとめ、発表してもらいました。 短時間の分析だったにもかかわらず、みなさん、とてもよい発表をしてくれました。

こうして2日間にわたったワークショップは終了。中身の濃い、充実したワークショップとなりました。 チェコで日本語を学んでいるみなさん、これからも頑張って勉強を続けてください。またお会いしましょう!
Všem, kteří studují japonštinu v České republice, děkuji za dobré časy. Těšíme se na další shledání!


以下、プラハの景色をおすそ分けします(クリック・タップで拡大します)。

(1) 旧市街広場、ティーンの前の聖母教会とヤン・フス像。世界中からの観光客で賑わう場所ですが、夜明け直後は誰もいませんでした。
(2) カレル橋から見るブルタバ川(モルダウ川)と、山頂にそびえるプラハ城。美しい風景です。

(1) (2)

(3) チェコの伝統的なお菓子、Trdelnik(トゥルデルニーク)。街のあちこちで売られています。
(4) 色とりどりのチーズ。中にはかなり臭いがきつい(でも美味しい)ものもあります。

(3) (4)

美しい石畳の道(スーツケース泣かせ)。中世の面影が残る街並みです。ワークショップの会場はこんな場所でした。

以上、「プラハ通信(第2号)」でした。

なお、チェコとの交流は今後も続けていきたいと思います。 専大日語の学生と、チェコの学生たちをオンラインでつなぎ、交流会・研究発表会を開催するなど、企画していこうと考えています。 どうぞお楽しみに!

丸山岳彦


<参照URL>
  1. ONLINE TOPICS「チェコ共和国で「話し言葉を巡るワークショップ」」 [link]

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