専修大学国際コミュニケーション学部日本語学科

専大日語・コラム

専大日語の教員による、月替わりのコラムです。

2023年10月:日本語学校で行う職業体験型プログラムについて

九段日本語学院での「日本語学応用実習」について

2023年度の日本語学応用実習のうち、九段日本語学院で行う実習が8月21日(月)~9月1日(金)に実施されました。九段日本語学院での日本語学応用実習は今年で3年目となるので、今年の実習の報告に加え、これまでの実習についても振り返ってみようと思います。

「日本語学応用実習」は、授業時間外に実施する定時外科目の一つです。学外のさまざまな機関で実習をすることにより、日本語学科の専門科目で学んだ専門知識の有用性を確認し、学修意欲を高めることを目的としています。そのため、九段日本語学院での実習も、いわゆる教育実習ではなく、日本語学校の業務についての実習という位置づけになっています。日本語学校で、授業以外に行われている業務を実際に見たり、その一部を体験したりすることができるので、将来、日本語教育に関わる仕事をしたいと考えている人にとって、とても貴重な体験となると言えます。

九段日本語学院について

九段日本語学院の創立は1988年で、今年で創立35年を迎えます。最初は現在の神田キャンパス10号館の靖国通り沿いの隣のビルに入っていたそうです。私は、初めてこの話を聞いた時に、なぜ学校名に「九段」と付いているのか分かった気がしました。現在の学院はJR水道橋駅の近くにあり、九段からは少し離れていますから。

専修大学との関係は、2020年春までに国際コミュニケーション学部の設置の準備をしていく中で、神田キャンパスの近隣の日本語学校ということできっかけができました。日本語学応用実習に参加した人は知っていると思いますが、九段日本語学院に専修大学の卒業生の方がいらっしゃることも、色々な話が順調に進む要因となりました。

日本語学科の皆さんは、九段日本語学院を「日本語教授法A」のクラスビジターで訪問して知ったという人が多いでしょう。この他に、国際交流センターが神田キャンパス10号館のグローバルフロアで開催するイベントに、九段日本語学院の学生も参加しているので、そこでの交流を通して知った人もいるかもしれません。

昨年と一昨年を振り返って

ここで1、2年目を振り返ってみましょう。1年目の2021年度はコロナ禍が続く中でのスタートでした。前年度は実施できなかったクラスビジターと合わせて、九段日本語学院への訪問が始まりました。様々な感染症対策をし、オンラインでの活動も取り入れながらの実施でした。

九段日本語学院での応用実習は、前半が日本語学校の業務を知るための内容で、後半は実習生がプレゼンテーションに向けてグループワークをするというものです。前半には、試験監督などの教務に関わることや、交流会の準備や課外活動への参加などの学務に関することがあり、さらに、学生向けのシェアハウスや就職説明会の見学などがあります。九段日本語学院はYoutubeチャンネルで様々な動画を公開しているのですが、その動画の作成を行った年もありました。

後半のプレゼンテーションのテーマは、年ごとに異なっています。2021年度のテーマは、「時代に合わせて求められる日本語教育・日本語学校の在り方」というものでした。コロナ禍前とコロナ禍に入ってからの日本語教育の環境の変化を踏まえ、将来の日本語教育の在り方を考えるというものでした。私はプレゼンテーションの動画を見せてもらいましたが、実習生自身のオンライン授業の経験に基づき、さらにICT(情報通信技術)の発達や、日本語学習者のニーズや価値観の変化なども押さえていて、充実した内容だと感じました。

2022年度のテーマは「専修大学と九段日本語学院の連携について」でした。専修大学が行っている社会連携・社会貢献活動を踏まえ、すでに九段日本語学院と連携して行っている活動をまとめた上で、新たに連携による活動を提案するというものでした。日本語学科のゼミナールや、神田キャンパスでのサークル活動への参加、神田キャンパスの学食でのランチ会などの提案がありました。この年からは私もプレゼンテーションに直接出席したので、そこでのやり取りもとても興味深いものでした。

今年度のプレゼンテーションについて

2023年度の「日本語学応用実習」には、新たにマイナビ、プーラ大学(クロアチア)での実習が加わりました。九段日本語学院での実習は、3つの応用実習のうちの1つとしての実施でした。プレゼンテーションのテーマは「やさしい日本語」で、実際に学院の窓口で説明することが多い「引越しにかかる手続き」と「銀行での口座開設」について、説明の仕方を考え、窓口用の資料を作るというものでした。プレゼンテーションでは、実習生自身が「やさしい英語」に助けられた経験を踏まえていることや、手続きの流れをフローチャートで視覚化する工夫をしたことなどがよく分かりました。また、「やさしい日本語」に関して、相手に合わせてどの情報をどのように提供するかを調整する、インフォメーションデザインが意識されていたのも印象的でした。

このような九段日本語学院での「日本語学応用実習」を経て、実習生のみなさんは、「日本語学応用実習」の目的のように、専門科目への学習意欲をさらに高め、日本語教育実習や卒業時の日本語教員養成プログラムの修了へと進んでいくものと思います。この記事を読んで興味を持ったみなさんは、まずは来年度の定時外科目説明会に参加してみてください。

高橋雄一


<参考資料>
  1. 「日本語学応用実習」2023年度前期シラバス [シラバス]
  2. 九段日本語学院ウェブページ [link]
  3. YouTubeチャンネル「Kudan Institute of Japanese language」 [link]

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