専修大学国際コミュニケーション学部日本語学科

専大日語・コラム

専大日語の教員による、月替わりのコラムです。

2023年9月:「誤文訂正問題」作成装置としての生成AI

このコラムの担当月が須田に回ってきました。何を書こうか、しばらく天井を見上げて逡巡していました。が、いいことを思いつきました。― そうだ、AIに聞いてみよう。 

ChatGPTを立ち上げ、「日本語学関係のやや専門的なコラムを書いてください。」と神頼み。すると、「タイトル: 日本語の複雑な敬語体系:言語と文化の融合」などと言って、全6段落からなるエッセイをものの2分ほどで書いてくれました。

内容はというと、間違いはないが、なんの面白みもない、どこかのガイドサイトにありそうな抽象的な話しに終始。少し引用させてもらうと、

日本語は、その独特な敬語体系によって知られています。この敬語体系は、日本社会の階層的な構造や尊重の文化と密接に結びついており、日本語学の面白い研究対象となっています。敬語は日本語の一般的なコミュニケーションスタイルを形成し、言語と文化の融合を浮き彫りにしています。 

といった調子です。眠くなりますね。

ためしに、ということで、Bingの「副操縦士」さんにも、同じ相談をしてみました。

こちらのほうは、「こんにちは。日本語学関係のやや専門的なコラムを書いてみますね。😀」などと愛想を振りまきながら、やはりたちまち、

日本語は世界で最も話されている言語の一つであり、約1億3千万人の話者がいます。日本語は日本の国内だけでなく、日本に関心のある人々や日本の文化や歴史に触れたい人々にとっても魅力的な言語です。しかし、日本語を学ぶにはどのような方法があるのでしょうか?そして、日本語を学ぶことでどのようなメリットが得られるのでしょうか?

などと第一段落。全体の段落構成は、ChatGPTと違いましたが、総字数はどちらも「コラム」らしい分量800~900字程度で仕上げてくれました。

(ちなみに、今、このコラム自体は、須田本人が書いていますよ (^^♪)

好みの問題ですが、私はChatGPTよりも、副操縦士のほうが、「方法」→「メリット」という段落構成で、さらにその下位区分もいくつかになされていて、好感が持てました。ただ、残念ながらその内容は、やはり眠気を誘うものでした。ありきたり過ぎる感じで、具体例が無い・・・

少し話が変わりますが、今年度初めの4月頃、遊び半分で申し訳ないなと思いつつ、ChatGPTに「ら抜き言葉」について、何段階かで、少し突っ込んで聞いてみたことがありました。やや具体的なトピックだと、どのくらい正しいことや眠くないこと言ってくれるか、試したかったからです。

結果は、予想どおり。自信たっぷりな感じで、しかし、思いっきり間違えもする。これは、それなりの誤文訂正問題を自動で生成してくれる装置としては、使える! そう確信しました。

もちろん、これまでどの生成AIも、日本語で書かれたデータにはあまり興味がなかったのかもしれません(今は猛勉強中だと思います)。他方、先日(2023年7月)、ある授業で1年生に、生成系AIを使ったことがあるか否かを聞いてみたところ、「使ったことがある」は、1年生18人中、0名でした。理由は、「ディープラーニングされそうで怖い」などでした。双方、様子見、というところでしょうか。

さて、以下はこの4月にゼミの皆で、誤文訂正問題として検討したChatGPTの「ら抜き」の説明です。どのような誤りがいくつあるか、是非みなさんもトライしてみてください。

User;  Q.「ら抜き言葉」は、形態論上はどのようなルールがありますか  

ChatGPT;
「ら抜き言葉」は、形態論的には、以下のようなルールがあります。日本語の動詞には、「五段活用」と「一段活用」という2つの活用形があります。五段活用の動詞は、語幹に活用語尾を付けて活用されるため、「ら抜き言葉」が発生する可能性があります。五段活用のうち、語幹の末尾が「え」音で終わる動詞において、助動詞「ら」を省略することが多く、その結果、語幹末尾の「え」が「い」に変化します。例えば、「食べられる」が「食べられる」という形で活用されるのに対して、「食べれる」が「食べれる」という形で活用される、といった具合です。ただし、このように「ら抜き言葉」を使うことは、正しい日本語とはされていないため、口語表現や非公式な場面で用いることが適切です。

須田淳一

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