専大日語・コラム
専大日語の教員による、月替わりのコラムです。
2026年5月:「方言であそぼ」プロジェクト
消滅の危機にある言語(方言)
ユネスコの世界危機言語アトラス(UNESCO Atlas of the Languages in Danger:ALD)というものを知っていますか?
世界で現在話されている言語の約半数が消滅の危機に瀕しているとされています。1992年に消滅危機言語委員会が形成され,ユネスコの下で危機言語を整理することとなりました。先に挙げたアトラスはその改訂版で,現在利用されているもの(第3版)です。
消滅の危険度を 「安全(Safe)」 「潜在的に脆弱(Potentially vulnerable)」 「危険(Endangered/unsafe)」 「明確な危険(Definitely endangered)」 「重大な危険(Severely endangered)」 「極めて深刻(Critically endangered)」 「不使用(Not in use)」 の7段階で分類しており,151の国・地域の2,724の言語が危機言語であるとされています。
日本についても,15の地域で話される言語(方言)がリストに挙げられています。
| 危険度 | その言語を話す地域 |
|---|---|
| 安全(Safe) | 日本(本島) |
| 潜在的に脆弱(Potentially vulnerable) | 日本手話 | 危険(Endangered/unsafe) | 宮窪手話 |
| 明確な危険(Definitely endangered) | 喜界,奄美大島北部,奄美大島南部,徳之島, 沖永良部,与論,国頭,八重山 |
| 重大な危険(Severely endangered) | 沖縄中部,宮古,与那国 |
| 極めて深刻(Critically endangered) | 北海道アイヌ |
| 不使用(Not in use) |
このような現状のなかで,日本語学(あるいは言語研究全般)に携わる私たちに,何ができるでしょうか。あるいは,何をすべきでしょうか。
消滅危機言語のために ―「方言であそぼ」プロジェクト
1つは,消滅の危機に瀕した言語を,言語学的な知見を活用して,しっかりと記録することです。音声,語彙,文法などを後世に残し,言語学的な研究を可能にする。それは,ある意味では,ある時代に使用された言語を“生かし続けること”と言ってよいかもしれません。国立国語研究所のプロジェクトなど,国内/外でもさまざまな研究・活動が行われています。
加えてもう1つ,できること/すべきことがあると考えています。世界には(日本にも)たくさんの消滅危機言語があることを,広く周知していくという活動です。
その活動の一環として,2025年度の阿部ゼミで「方言であそぼ」プロジェクトをたちあげました。方言に触れるという活動を通して,日本の方言の(ひいては世界の言語の)現状を知り,考え,行動を促すという目的のもと,その目的を達成するためのモノを作成していくというプロジェクトです。
まず作成したのは,「方言ドンジャラ」です。(画像をクリック・タップすると拡大します)
基本的にはドンジャラ(BANDAI)のルールと同じで,9枚の牌を使って絵柄を3枚1組のセットに揃えるというものですが,以下の2つの点で違いがあります。
- 牌に文字で方言を記していること
- その組合せが,決められた文になると高得点になること
「文を完成させる」というオリジナル・ルールを加えているため,ドンジャラの対象年齢(基本的に6歳以上とされています)よりはやや難易度は高くなりますが,小学校高学年なら問題なくプレイできるものとなっています。また,3色セット(同じ色の牌を3枚1組として3組作ればあがれる)を禁止して難易度を挙げたモードなど,複数のモードも準備しました。
2025年度は,北海道バージョンと沖縄(中部)バージョンを作成し,さまざまな方にトライアル(テストプレイ)を行ってもらって改善点などを見つけ,改訂するところまでプロジェクトを進行することができました。
2026年度からは,小学校などを訪問して,完成した北海道バージョンと沖縄バージョンを使用して(遊んで)もらい,加えて,現在の方言がおかれた状況を伝えていくといった活動をしていく予定です。そのためのワークシート等も作成していく予定です。また併せて,新バージョンの作成も進めていきます。
私たち阿部ゼミは,これらの活動をSDGsの活動の一環であるとも考えています。SDGsには17の目標がありますが,その11番目の「住み続けられるまちづくりを」に位置づけられると考えているのです。
一般に「住み続けられるまちづくりを」で挙げられる,災害,貧困,大気汚染といった課題とは異なるかもしれませんが,いま,人類が取り組むべき課題があり,そのために課題を整理し,解決方法を考え,行動していくという趣旨は,私たちの考え・行動と共鳴するものだと考えています。
<参考資料>




