専修大学文学部日本語学科

専大日語・コラム

専大日語の教員による、月替わりのコラムです。

2017年7月:声のコントロール

みなさん、「声」という語が何を表すか、想像してみてください。

話し声、笑い声、泣き声、驚きの声、大声など、いろいろな「声」がありますね。それだけでなく、犬の鳴き声、カエルの声、蝉の声のような動物の「声」、市民の声、反対の声、心の声など、具体的に聞き取れる声とは異なる意味の「声」もあります。

言語学における研究分野の一つ、音声学では、そうしたさまざまな「声」のうち、ヒトの話し言葉における声(音声)を分析します。周波数を抽出して高さを見たり、持続時間を計測して音の長さやポーズの長さを分析したりします。

次に示す図は、そうした分析の一部です。Praatという音声分析ソフトで、「日本語を教えるとかー」という音声を分析しています(『日本語話し言葉コーパス』から引用)。刑事ドラマの鑑識で出てきそうな感じですね。音声を視覚化することで、目には見えない現象を分析することができます。

さて、普段、私たちは特に意識せずに話をしていますが、「意識して声を出す」ということはあるでしょうか。意識的に声をコントロールすると、どんな効果があるのでしょうか。

ナレーターや声優の方は、「意識して声を出す」プロフェッショナルです。先日、プロのナレーター・声優の方を専大日語にお招きし、自分の声をコントロールする方法を学ぶワークショップを行いました(パンフレットはこちら)。自分の名前をはっきり発声するだけでも実はかなり大変。大きく声を出さないと、お好み通りのほどよい音量に調整することもままなりません。

さらに、声に表情をつけたり、意図を的確に伝えたりするためには、いろいろな「筋肉」や「気持ち」を使わなくてならないことを学びました。大学院生や学部生、そして「声」関係の活動をしている卒業生も参加し、ビデオカメラも駆使して、最後は各自でナレーションを仕上げました。

自分の声をコントロールして、表情豊かな声を思い通りに出す。その大切さと大変さを実感した一日でした。

時々、自分に問いかけてみてください。意識して声を出していますか?

王伸子

<参考文献>
  1. 杉藤美代子(1994)『日本語音声の研究 1 日本人の声』和泉書院. [OPAC]

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