心理学は歴史的に、心を科学的・実証的に探究する学問としてはじまりました。ただし、学問が誕生した当初、その科学的・実証的な知見は現代社会の問題に対し、直ちに直接的な貢献ができるほど精緻なものではありませんでした。かつては、気持ちが落ち込んでいる人や不安でおびえている人たちに、確固たる証拠に基づいてアプローチができない時代もありました。しかし近年になり、行動測定の洗練や脳科学・神経科学の爆発的進歩により、現実的な問題に直結する様々な知見が蓄積してきています。
このような背景のもと、第3回シンポジウムは、不安・うつ・妄想をテーマとして取り上げ、科学的・実証的な研究と臨床的なアプローチとの関係を探る目的で開催いたしました。心の時代と呼ばれる現代において、多くの方々が不安、うつ、妄想を経験し、悩んでいます。これらの問題に対して、心理学者たちは、最先端の脳機能計測や行動の測定に基づき、新たな取り組みを模索しています。このシンポジウムではそれらの研究の一端を紹介し、参加者の方々と議論を深めました。