2023.05.08 Mon
ONLINETOPICS
「学長伝書鳩」No.22
コロナ禍の後に見える新しい景色

■5月8日に思うこと
世界保健機関(WHO)は、5月5日、2020年1月末に発せられた新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を終了すると発表した。わが国では、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が、5月8日以降、季節性インフルエンザや麻疹等と同様に五類感染症(感染力や重篤性などに基づく総合的な観点から危険性が最も低い)に引き下げられた。
これに伴い、本学の「新型コロナウイルス感染症拡大防止のための活動レベル」も、5月7日をもって廃止された。
本学の諸活動にCovid-19が直接影響を及ぼし始めたのは、2019年度卒業式・学位記授与式の中止からであった。その後、2020年4月7日、東京都や神奈川県を含む地域に「緊急事態宣言」が発出されて、学生のキャンパスへの入構が制限されるに至った。変異株が次々と発生し、感染の波が世界を覆っていた当時、レベル0(平常時)の状態など、遙か遠くに霞んで見え、今日という日が本当にやってくるのかと思えたほどであった。
この間、教育・研究の継続のため、オンライン授業の運営と改善、各種のオンラインコミュニケーションツールの導入、感染防止対策、そして経済的支援対策等を重ねてきたが、その過程は、学生の皆さんは言うまでもなく、全教職員、法人、校友、育友、一般の企業や個人の方々のご協力なしでは、なし得なかったことばかりである。節目となるこの日を迎えるにあたり、あらためて当職として皆様に厚くお礼を申しあげたい。
■コロナ禍での経験を今後にどう活かすのか
私たちの生活は、単純に「コロナ前」に戻るのではなく、コロナ禍での経験を活かした新しい生活に向かいあっている毎日というべきであろう。本学に関しても、コロナ禍での対応からもたらされた「副産物」が、このポストコロナ時代での大学教育・研究のあり方にも少しずつ影響を与えつつあるように思う。
例えば、その「副産物」の一つに「オンライン授業・会議の運営体制の構築」がある。当職は、コロナ前に、伊勢原体育寮をベースに活動する体育会の学生向けに、「遠隔授業」を提供してはどうかと提案したことがあったが、すぐに実施の仕組みが整っていないという現実に直面することとなった。しかし、先日、伊勢原グランドを訪れた際に、ある監督さんから、「公式試合の曜日は朝練をするので、せめて午前中の授業を「オンライン授業」(オンデマンド型)で履修できるようにしてもらえると、練習の質と量が確保しやすくなる」と伺ったが、今は、それをより現実的な課題と受けとめることができる。また日々の諸会議においても、会議資料のペーパーレス化が一気に進んでいる。
ここ数年、「何年に一度級の台風豪雨」が関東地方に襲来することが多くなった。その際、本学は、学生の登校が危険であり困難と判断した場合に、「休講の措置」を講じるが、今後は、「対面授業をオンライン授業に切り替える」という判断も選択肢のなかに入ってくるであろう。さらに、本年度から、学内の情報システムサービスの基本は、BYOD(Bring Your Own Device)とVDI(Virtual Desktop Infrastructure)が前提となり、それを踏まえた「SiUグローカル・スマートキャンパス」が2024年度から順次導入予定である。このような計画立案の前提には、全学レベルのオンライン授業の運用体制構築というインフラ整備が必須であった。
■「個人の判断に委ねる」の意味
「マスクを付けるかどうかは、個人の判断に委ねる」という方針が先に行われた卒業式や入学式の際に採られた。国の緊急事態宣言や本学の「新型コロナウイルス感染症拡大防止のための活動レベル」では、個人の行動について具体的な制限ないし禁止事項が盛り込まれたが、これからは、(マスク着用に限らず)これまでに学んだ公衆衛生に叶うあらゆる行動が適切にとられるよう、個人の判断に期待されるところが大きいと理解できよう。当職もこの意味を噛みしめて、ポストコロナ時代の大学運営に当たってゆきたい。