2026.03.06 Fri
生物科学科トピックス一覧

【生物科学科】卒業研究発表会を開催(海洋系)

2月3日・4日の2日間、5号館にて理工学部生物科学科の令和7年度卒業研究発表会が開催され、海洋系では4年次生26名が口頭発表を行いました。

一人あたりの持ち時間は15分(発表12分、質疑応答3分)で、学生たちは制限時間を最大限に活用し、これまで取り組んできた実験や調査・研究の成果を発表しました。
発表後には、教員や学生から次々と質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。
発表の様子①▲研究発表の様子
発表の様子③▲発表後に質疑応答が行われました
【発表した学生のコメント】

甲地 由樹さん(海洋ベントス学研究室)
(1)卒業研究のテーマ・研究内容を教えてください。
「テーマ:見た目は1種 本当は何種? ~汽水性多毛類ヤマトスピオの地理的遺伝構造の把握~」
 汽水域の代表種な多毛類であるヤマトスピオを対象に、地理的遺伝構造の把握を目的として研究に取り組みました。国内各地で採集したサンプルのDNA解析を行い、地域集団間における遺伝的な違いについて考察しました。

(2)なぜそのテーマを選びましたか?
 3年生の頃から多毛類に興味を持っていたことに加え、ベントス(底生生物)の中でも特に多毛類は分類学的な研究が十分に進んでいないことを知り、多毛類の分類に関する研究に取り組みたいと思ったことがきっかけです。
 当初はDNA解析により塩基配列の一致率を比較する作業が中心でしたが、研究を進める中で解明したい点が増え、集団遺伝学的解析も取り入れたことで、現在の研究テーマへと発展しました。

(3)研究で判明したこと、理解が深まったことを教えてください。
 国内でヤマトスピオと呼ばれている生物には遺伝的に異なる2つの系統が含まれ、台湾と韓国を含めると4つの系統が存在していることが明らかになりました。形態だけでは種の判別が難しいものの、DNA解析によって4つの隠蔽種の存在を明らかにすることができました。
 また、本種で系統が分化した背景として、数百〜数千万年前に起きた地形変化の影響が考えられました。生物・環境・地形など複数の要因を踏まえて考察することで、得られた結果の解釈をより深めることができました。


(4)研究で苦労した点はありましたか?
 地道な作業や慣れない解析も多く苦労する場面はありましたが、毎日が発見の連続で、日々成長を実感することができた時間でした。
 自分の研究成果を学術的な言葉で説明する際には、まとめることができずに何度も修正が必要になり、苦労することもありました。しかし、文章を書く機会は今後も多くあると思いますので、今は成長のチャンスだと捉え、書籍や論文など様々な文章に積極的に触れていきたいと考えています。


(5)卒業後の目標を教えてください。
 私は大学院に進学する予定なので、研究内容をさらに深めていけるよう、これまで以上に学びを重ねるとともに、さまざまな視点から物事を捉えられるよう努めたいと考えています。
 また、研究だけでなく、人としても成長できるような充実した修士課程の2年間を過ごしたいと思っています。
■渡部 渓斗さん(海洋ベントス学研究室)
(1)卒業研究のテーマ・研究内容を教えてください。
「テーマ:毛束の大きさが違うのはなんで? ~ケフサとタカノの視覚的な種間認識を探る~」
 私は、形態がよく似た近縁種であるケフサイソガニとタカノケフサイソガニを研究対象としました。この2種には、オスのハサミの付け根に毛束が生えているという共通の特徴がありますが、ハサミの外側にある毛束には、ケフサイソガニでは小さく、タカノケフサイソガニでは大きいという違いが見られます。しかし、この毛束の生態的役割は明らかになっていないため、毛束が2種の間で視覚的な種間識別に利用されているのではないかと考え、その可能性を検証しました。

(2)なぜそのテーマを選びましたか?
 研究室に配属された当初は別のテーマで研究を進める予定でしたが、先輩方の研究内容に触れたり、調査に同行したりする中で、カニの研究に興味を持つようになりました。その過程で、干潟には形態がよく似たケフサイソガニとタカノケフサイソガニが数多く生息していること、そして両種に見られる毛束の役割が明らかになっていないことを知り、このテーマに取り組むことを決めました。

(3)研究で判明したこと、理解が深まったことを教えてください。
 本研究により、ケフサイソガニとタカノケフサイソガニの間では交尾には至らないものの交尾体勢をとること、また、両種の間の雄同士の闘争行動の頻度には、同種の雄間闘争と大きな違いはないことが分かりました。
 これらの結果から、近縁な別種間の交尾や闘争を避けるために、毛束を用いて種間識別を行っている可能性は低いと判断されました。仮説が否定される結果となりましたが、1つの可能性を排除できたという意味で次の研究につながる知見が得られたと思います。


(4)研究で苦労した点はありましたか?
 私の研究では主に室内飼育実験を行いましたが、カニが思い通りに動かないことが多く、失敗した実験も少なくありませんでした。その中で試行錯誤を繰り返し、失敗が減るように実験環境を整えていくことに最も苦労しました。
 また、発表の際のスライドデザインについても、先生や先輩方からアドバイスをいただきながら、時間をかけて伝わりやすさを工夫していきました。

(5)卒業後の目標を教えてください。

 卒業後は海洋系とは異なる分野への就職となりますが、新しい環境でも失敗を恐れず挑戦し、学び続けることで成長していける人間になりたいと考えています。
 また、この4年間で身につけた知識や経験も活かしながら励んでいきたいと思います。
■板野 陽菜さん(地域水産利用学研究室)
(1)卒業研究のテーマ・研究内容を教えてください。
「テーマ:金華山沖合で漁獲された深海魚に関する基礎的研究 ―異なる調理法による硬さの変化―」
 未利用魚として扱われ、捨てられてしまう深海魚を有効利用するための基礎的な情報を明らかにすることを目的に研究を行いました。その中でも私は、カナガシラ、キアンコウ、コンゴウアナゴ、シロゲンゲ、アカドンコの5種類を対象とし、調理前後における硬さの変化に着目して調査を行いました。
 さらに、官能検査を実施し、各魚種に適した調理方法についても検討しました。


(2)なぜそのテーマを選びましたか?
 深海魚は外見の特徴や調理方法の難しさなどから十分に活用されず、廃棄されてしまうことが多い現状を知り、その有効利用に貢献したいと考えました。
 また、深海魚の食材としての可能性にも関心があり、このテーマに取り組むことを決めました。

(3)研究で判明したこと、理解が深まったことを教えてください。
 実際に試食を行った結果、外見に特徴のある魚種であってもおいしいものがある一方、見た目の印象どおり独特の風味を持つ魚種も存在し、外観と味の評価は必ずしも一致しないことが分かりました。
 また、好みは個人によって異なるため、一般的には評価が分かれる魚種であっても、その風味を魅力と感じる人もいると考えられます。こうした特性を生かすことで、未利用魚の新たな活用方法につながる可能性があると感じました。


(4)研究で苦労した点はありましたか?
 全6種について各3~5個体を使用し、背側頭部と尾部に分けて、さらに生および4種類の調理法で処理した上で、一切れにつき3か所ずつ硬さを測定しました。そのため取得データが非常に多く、整理・分析に時間を要したことが大きな苦労の一つでした。加えて、コンゴウアナゴは皮の処理が難しく、作業方法を工夫しながら進めたため、多くの時間を要しました。

(5)卒業後の目標を教えてください。
 卒業後は、魚食普及活動に取り組んでいる株式会社 仙台水産に就職します。私もその一員として、より多くの方に魚の魅力を知っていただけるよう取り組んでいきたいと考えております。
甲地由樹さん▲発表する甲地さん
渡部渓斗さん▲発表する渡部さん
板野陽菜さん▲発表する板野さん
発表タイトルは下記の通りです。

■海洋ベントス学研究室(阿部博和研)
・隠れた多様性スポット? 渡波海岸における海岸ベントス相の特徴
・オカダンゴムシの模様における性的二形の解剖学的考察
・ニホンコツブムシにおける中間型のナゾ ~性転換の可能性について探る~
・形態およびDNA解析に基づくテッポウエビ属の分類学的再検討 ~北日本における隠蔽種と種内変異の実態に迫る~
・見た目は1種 本当は何種? ~汽水性多毛類ヤマトスピオの地理的遺伝構造の把握~
・毛束の大きさが違うのはなんで? ~ケフサとタカノの視覚的な種間認識を探る~
・ヤドカリはなぜ殻放棄をするのか ~Home/Away の捕食回避戦略に迫る~

■海洋浮遊生物学研究室(太田研)
・AIを用いた下痢性貝毒プランクトンDinophysisの画像判別Ⅱ
・北上川河口域におけるマイクロプラスチック調査
・オクヨウジ稚魚と成魚における尾部脊椎骨の定量比較
・河川感潮域の底泥中に検出された海産植物プランクトン休眠細胞について
・仙台湾で採取されたギヤマンクラゲの種同定
・培養液自動サンプリング装置の試作

■魚類生態学研究室(久米研)
・サプライチェーンを通した表浜アナゴのブランド価値に関する研究

■地域水産利用学研究室(鈴木研)
・アカザラガイの最適な採苗時期、および 水深に関する基礎的研究
・簡易的な手法によるアニサキス亜科属幼虫の運動を停止させる方法の基礎的検討
・金華山沖合で漁獲された 4 種の深海魚のうま味強度
・各種海藻多糖類とカナガシラの皮ゼラチンからなる生分解性プラスチックの作成
・未利用魚を用いた耐久資材開発に向けた基礎的検討
・金華山沖合で漁獲された深海魚に関する基礎的研究 ー異なる調理法による硬さの変化ー

■漁業生産システム学研究室(渡邊研)
・女川町沿岸における定置網漁業の漁獲変動と持続可能性に関する検討

■二枚貝生理学研究室(高橋研)
・アカガイ血漿リゾチームの特性
・アカガイ血漿レクチンの活性
・マガキ血漿のプロテアーゼ

■沿岸環境生態工学研究室(玉置研)
・宮城県波津々浦における人工干潟の自然的撹乱後の粒度環境とアサリの個体密度の変化
・海水温上昇による万石浦の海草アマモ場への影響と湾央・湾奥部における海水温の比較
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