専修大学社会知性開発研究センター / 古代東ユーラシア研究センター
古代東ユーラシア世界の人流と倭国・日本

ご挨拶

 2014年度、専修大学社会知性開発研究センターに附置されている古代東ユーラシア研究センターの研究プロジェクト「古代東ユーラシア世界の人流と倭国・日本」が、文部科学省「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択されました。
 本センターは、東アジア世界史研究センターの研究プロジェクト(2007~2011年度)の後継として2012年度に設立され、古代東アジアを新たな視点で捉え直すことを継続して追究しています。
 研究期間は、2018年度までの5年間です。
 前回のプロジェクト同様、よろしくお願いいたします。

古代東ユーラシア研究センター概要

研究プロジェクトの位置づけ
 本プロジェクトのメンバーは、日本古代史、朝鮮考古学、中国古代史、中国古代文学、中国思想史、古代日中文学の比較研究などの分野で高い評価を得ている研究者である。こうした諸研究を有機的に結びつけることにより、東ユーラシアにおける渡来者・渡来集団の流動と土着化についての研究基盤を形成することを目的に、外部資金による大型研究プロジェクトを統括している「社会知性開発研究センター」内に、「古代東ユーラシア研究センター」を設置する。

研究プロジェクトの意義・目的
 本プロジェクトは、「倭国」から「日本」へと変化する日本における古代国家形成期を中心に、前近代日本の外来文化の受容に際して、その移植・仲介者となった渡来者・渡来者集団に焦点をしぼり、その<流動と土着>化の歴史的経緯やその意義を明らかにすることを課題する。また、今までの諸研究を有機的に結びつけることによって、新たに「東ユーラシア」という研究領域を構築できる。
 従来、この分野は遣隋使・遣唐使に随行した留学生・留学僧の研究や朝鮮半島からの渡来人の研究に収斂されていた。本プロジェクトでは、1)中国や朝鮮半島からの渡来者だけでなく、2)少人数ゆえに従来は等閑視されてきた「靺鞨人」・「崑崙人」・「胡国人」・「林邑人」などにも対象を広げ、こうした人々の人流の動向を東ユーラシアの多面的な歴史展開にも留意して多角的視野から検討をこころみる。3)当然、彼らが日本列島各地に形成したコミュニティーも対象とするとともに、4)こうした移植・媒介された文化がその後の日本文化・社会においてどのように咀嚼・変容され、日本文化の一部となっていったかを検証する。
 主たる研究対象は、①隋・唐からの来日外国人、②朝鮮半島からの渡来人と彼らが日本列島内に形成したコミュニティの研究、③ベトナムなど周縁国からの来日外国人とその伝来文化、④中世・近世における来日外国人の伝来文化など4つの柱を中心とし、文化・文物・情報の直接の「移植者」・「媒介者」の<流動と土着>化の歴史的な検証とその正当な位置づけ、その歴史的意義を明らかにするものである。そのことによって、今日の多極化する国際社会のなかで、さまざまな文化衝突を克服し、深い自己理解とともに正確な他者理解を実現することに寄与するものであり、この点において、本プロジェクトは、すぐれて現代的意義を有する研究と言える。
 なお、「井真成墓誌」やオープン・リサーチ・センター整備事業である「古代東アジア世界史と留学生」の研究を通じて培われた中国・西北大学との共同研究を継続し、同大学国際文化交流学院で設置準備の進む「遣唐使研究所」とも連携する予定である。また、この度西北大学が新たに発掘した墓誌等についても共同で研究していく予定であり、研究期間終了後においても、学術の国際交流という点でも効果が期待できる。
 このような学術交流やメンバーの研究分野の有機的結合等により、渡来者・渡来集団の流動と土着化についての研究基盤が形成され、国内外の東ユーラシア世界の研究者との交流は、若手研究者の養成にもつながる。