法学部
School of Law
神田キャンパス

法学研究所公開講座~学生と市民のための公開講座~

  皆さん、学生と市民のための公開講座へようこそ!

 今年度も、昨年度に引き続き、『現場からの法律学・政治学』の第三シリーズをお届けします。
 法律学も政治学も、生々しい「現場」との多くの接点を持っています。学術的な研究が「現場」で起きている諸問題から示唆を受けることも多くあります。また、研究がそれらの諸問題を解決するための何らかの示唆を「現場」に提供できることもあるでしょう。「現場」と研究とのそれぞれの立場が交流し合うことは、それぞれにとって極めて有意義であるに違いないと私たちは考えました。
 このような考えに基づき、この公開講座では、まずそれぞれの「現場」の第一線で実際に活動しておられる方から、現場の様々な問題についてご報告を頂きます。そして、そこで提示された課題について討論することを通じて、「現場」と研究との接点を探っていきます。
 私たちの社会には、多くの困難な課題が山積しています。テレビや新聞などで、それらの報道に接しても、一体どこに問題の本質があるのか、我々はどういう視点からその問題を考えたらいいのか、途方に暮れることも少なくありません。また、その課題の余りの困難さに、思わずそこから逃避したくなったりもします。しかし、私たち社会科学を学ぶ者は、その現実から目を背けたり逃避したりすることは出来ません。どんなに克服し難い困難があろうとも、それに立ち向かう強靭さと冷静さを、またそのための叡智を身に着けねばなりません。この講座では、そのような積極的な取り組みのための手がかりを皆さんに提供したいと考えています。

Hier stehe Ich. Ich kann nicht anders. ( M. Luther)
ここに我は留まる。我、他に為し能わず。(マルティン=ルター)


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第一回(10月27日)「国際法・国際政治の現場から」

報告者略歴
 長沼 善太郎(ながぬま ぜんたろう)

外務省国際法局国際裁判対策室長。1962年新潟県生まれ。
1986年に外務省入省。条約局国際協定課(当時)において生物多様性条約の締結業務などに従事した後、在ウィーン国際機関日本政府代表部、包括的核実験禁止条約機関準備委員会(事務局長補佐官・議長補佐官として出向)、国際原子力協力室、不拡散・科学原子力課、海洋法室などで多数国間外交の現場を経験し、原子力供給国グループなどの輸出管理レジーム会合、BBNJ準備委員会(公海・深海底の生物多様性の保全及び持続可能な利用のための国際約束を議論するための国際会議。2015年から2017年にかけて開催。)において日本政府の代表団長を務めた。2018年5月より現職。

講座の概要
「公海・深海底の生物多様性をいかに保全し利用すべきか――第3の国連海洋法条約実施協定の交渉開始」

 2018年9月、公海・深海底の生物多様性を保全し、持続可能に利用するための新たな国際約束を第3の国連海洋法条約実施協定として作成するための交渉が、国連総会の下で開始された。海洋は国家の管轄権が及ぶ程度によって領海、排他的経済水域、公海などに区分されるが、国家の管轄権が及ばない公海・深海底は海洋の大半を占めるため、地球全体の生態系を効果的に保全し、持続可能な形態で利用するためには、公海・深海底の保全及び利用に関する適切なルールを策定することが極めて重要である。新協定の策定交渉は、始めるべくして始まったものと言える。
 新協定は、地球環境保全の観点から極めて重要であるとともに、多くの関連分野における活動に多大な影響を及ぼし得るものである。また、新協定の策定交渉に当たっては、①海洋遺伝資源(利益配分の問題を含む)、②区域型管理ツール(海洋保護区を含む)、③環境影響評価、④能力構築・海洋技術移転、の4つが交渉分野として定められたが、環境の保全・利用に密接に関連する②及び③に加えて①及び④も交渉分野となったことは、国際政治の現実を如実に示すものである。
 本講座においては、交渉開始の背景と主要論点についてご紹介することにより、講座に参加される方々に対し、地球環境保全のための国際ルール策定において先進国の政府と市民社会がどのような貢献を行うべきかについて、考察いただく機会を提供することとしたい。


対論者・コーディネーター:  森川 幸一(本学法学部教授)
時 間:14:00~16:00
場 所:神田校舎1号館209教室
対 象:学生、一般の方




第二回(11月10日)「刑事法・刑事政策の現場から

報告者略歴
 林 大悟(弁護士・弁護士法人鳳法律事務所)

東京弁護士会所属。全国万引犯罪防止機構正会員・一般社団法人アミティ代表理事。主にクレプトマニア患者や認知症に罹患した高齢者の万引き事件等に特化して全国で弁護活動をしている。
(弁護士法人鳳法律事務所 URL:http://yokohamaootori-law.com/)

講座の概要
「病的窃盗常習事件に関する量刑及び責任能力判断の現状と課題」

 万引きは窃盗の一類型である。窃盗について定めた刑法235条は、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定する。
 クレプトマニア(病的窃盗)事案に限らず、初めて万引きで起訴(公判請求)された場合、判決では執行猶予付きの懲役刑が言い渡されるのが通例である。これに対し、執行猶予中に再び万引きをして起訴された場合、懲役の実刑が選択され、前刑の執行猶予も取消されるため、前刑と合わせて服役することになるのが原則である。例外的に、「情状に特に酌量すべきものがあるとき」に限り、懲役刑に関し再度の執行猶予が付くことになる(25条2項本文)。この場合、必要的にその猶予の期間中保護観察に付されることになる(25条の2第1項)。そして、保護観察中の執行猶予者に対しては、再度の執行猶予は許されない(25条2項ただし書)。
 以上は、懲役刑が選択される場合であるが、罰金刑が選択される場合は、通常、前科がない被疑者に対し、検察官が略式起訴を選択して裁判所に罰金を求める場合が念頭に置かれている。被疑者に前科があり、検察官があえて起訴(公判請求)を選択し、裁判所に対して懲役刑を求めた場合には、裁判所は、懲役刑を選択し、執行猶予か実刑を言い渡してきた。従前の刑事裁判においては、再度の執行猶予が付されるのは狭き門であり、前科前歴を重視して安易に懲役の実刑に処してきたといえる。そこには思考停止した行為責任の考え方が見出せる。
 ところが、最近、裁判中に専門的な治療を実施して再犯防止効果が期待できる被告人に関し、例外的な再度の執行猶予判決が言い渡される事例が増えてきた(東京高裁第10刑事部平成28年12月13日判決、東京簡裁平成28年12月22日判決、大宮簡裁平成29年5月11日判決等)。また、保護観察中の同種万引き事件において、異例の罰金判決が言い渡される事例もみられるようになった(松戸簡裁平成27年11月25日判決、東京高裁第2刑事部平成28年5月31日判決等)。
 刑事裁判においては、思考停止した行為責任の考え方により安易に懲役の実刑に処すのではなく、上記の各裁判例のように、被告人が実践している治療効果に着目して再犯防止のためにいかなる処遇が望ましいかを個別具体的に検討した上で適正な量刑判断がなされるべきである。刑事裁判は、抽象的な「事件」あるいは「行為」を扱っているのではなく、被告人という「人間」を対象としていることに留意すべきなのである。
 本講座では、常習的万引き行為の原因となるクレプトマニア、摂食障害、認知症等の精神障害が万引き行為に与える影響の機序を説明した上で、そのような精神障害の影響下での常習的万引き行為の量刑傾向や責任能力判断の現状と課題について取り上げたい。


対論者・コーディネーター:  稲垣 悠一(本学法科大学院准教授)
時 間:14:00~16:00
場 所・神田校舎1号館209教室
対 象:学生、一般の方




第三回(12月8日)「地方行政の現場から

報告者略歴
 原 清(八王子市都市計画部都市総務課課長)

八王子市入庁(1995年採用)。
福祉部総合福祉センターに配属。その後、税務部住民税課、(財)日本都市センター研究室派遣、総務部法制課、まちづくり計画部都市計画室の勤務を経て、2016年4月から都市計画部都市総務課課長。


 高野 芳崇(八王子市市民部市民生活課課長)
八王子市入庁(1991年採用)。
福祉部老人福祉課に配属。その後、多摩ニュ-タウン環境組合、税務部納税課、行政経営部経営監理室、こども家庭部子育て支援課、市民部市民課の勤務を経て、2017年11月から市民部市民生活課課長。


講座の概要
「地方行政の最前線――公共施設移転後の跡地活用と市役所の窓口業務改革」

 人口減少時代に突入した現在、地域活性化に結びつく都市の再開発(跡地活用)のあり方に注目が集まっている。また、情報化や家族形態の変化が進む中、窓口業務の新しい方向性について考えることは、市民にも行政にも極めて重要であると考えられる。そこで、本講座では、近年、多くの自治体が直面している「公共施設移転後の跡地活用」および「市役所の窓口業務改革」という2つの取組みに焦点を当てたい。
 まず、「公共施設の跡地活用」と題して、八王子医療刑務所の移転後用地の活用検討の事例を報告する。八王子医療刑務所が2018年1月に昭島市へ移転したことから、八王子市では、移転後用地の活用に向けた検討を進めている。多様な市民のニーズを反映しつつ、地域の活性化につながる拠点を整備するための課題や工夫について報告する。
 次に、「市役所の窓口業務改革」と題して、住民と行政の接点である窓口業務のあり方について報告する。役所の窓口業務については民間企業と比較して効率化・電子化が進んでいないのではないか、共働き世帯の増加などの住民の家族形態の変化にも十分に対応できていないのではないか、との意見がある。旧態依然とした窓口業務を改革に向けた国と自治体の取組みについて報告する。
 本講座では、地方行政の最前線で起こっている2つの取組みについて、多面的に検討することとしたい。


対論者・コーディネーター:  鈴木 潔(本学法学部准教授)
時 間:14:00~16:00
場 所:神田校舎5号館542教室
対 象:学生、一般の方



お問い合わせ
法学研究所事務局 
houken@isc.senshu-u.ac.jp

 
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