専修大学文学部日本語学科

専大日語・コラム

専大日語の教員による、月替わりのコラムです。

2017年5月:目には青葉

風薫る五月となりました。専修大学生田キャンパスに隣接する生田緑地は、木々に若葉が茂り、とても気持ちのよい眺めになっています。(この写真は、新入生のY.H.さんが撮って送ってくれました)

「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」

と詠んだのは、江戸時代の俳人、山口素堂(1642~1716)です。この季節の青葉は、古来から人々に愛でられてきたのでしょう。

生田緑地の写真です。

さて、「青葉」と聞いて、不思議に思いませんか。みなさんは、「青い」葉を見たことがあるでしょうか。木々に生い茂る若葉の色は、「青」ではなく、実際には「黄緑色」(または「萌黄色」)です。

他にも、「青りんご」「青じそ」「青菜」「青野菜」「青信号」など、実際には緑色や黄緑色をしたものが、「青」と呼ばれる場合があります。

青りんごの写真です。 青じその写真です。 青菜の写真です。 青信号の写真です。

古代の日本語において、「青(あを)」は、現代の青色だけでなく、緑色や紫色、灰色などの色を総称する語でした。一方、「緑」は平安時代に出てきた語で、元来「新芽」を表していたのが、後に色の意味に転じたと言われています。青色と緑色を区別しない言語は、東アジアや、東南アジア、インド、アフリカなどにもあるようです。色彩をどう言語化するか、これは言語・文化によって決まると言えます。

「青」という語の意味をどう定義すべきか、これは、現代における私たちの生活の中で用いられている「青」の用例を収集し、歴史的な事情も鑑みながら、帰納的に考えていく必要があるでしょう。

さて、色を表す語(色彩語)は、次のように、形態的な対立を見せることがあります。

「―い」と「―の」では、どちらの形が多く使われるのでしょうか。「―い」「―の」で形容される名詞には、それぞれどんな特徴があるでしょうか。コーパスを使って用例を検索し、その結果を分類・分析することで、答えを明らかにしていくことができるでしょう。

丸山岳彦

<参考文献>
  1. 北原保雄 (1997)『青葉は青いか』大修館書店. [OPAC]
  2. 沢田奈保子 (1992)「名詞の指定性と形容詞の限定性、描写性について:色彩名詞と色彩形容詞の使い分け要因の分析から」『言語研究』102, pp.1-16. [PDF]
  3. 藤村逸子 (2003)「色彩名詞と色彩形容詞の対立 ―新聞と文学のコーパスからわかること―」『日本語学習辞書編纂に向けた電子化コーパス利用によるコロケーション研究 中間報告論文集』. pp.25-48. [PDF]

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