◆新井勝紘(あらい・かつひろ) 日本近・現代史(自由民権運動史/民衆史)
近況:最近「先の戦争」といっても、通じなくなってしまった。戦争末期に生をうけた私は、戦争に二度も駆り出された父から、戦勝と「八紘一宇」の願いを込めて「勝紘」という名を授かった。直接の戦争体験者が少なくなっている現状を考え、最近の戦争にこだわり、一般的な兵士の視線から戦争をみようと、戦地から銃後に宛てた軍事郵便と従軍日記に注目し、埋もれた軍事郵便に新たな光をあてるべく、その解読と分析に取り組んでいる。
担当授業:【大学院】日本史特講W(日本近・現代史)講義・演習(修士課程)/日本史特殊研究W(日本近・現代史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【編著】『近代移行期の民衆像』(「民衆運動史」4 青木書店 1999年)/『戦いと民衆』(「人類にとって戦争とは」3 東洋書林 2000年)/『自由民権と近代社会』(「日本の時代史」22 吉川弘文館 2004年)
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◆荒木敏夫(あらき・としお) 日本古代史、古代王権の研究
近況:2006年度は、『日本古代王権の研究』(吉川弘文館)『日本の女性天皇』(小学館文庫)の2冊の著書を公刊できました。日本の王権についての研究は、いまだ沢山の未開拓の領域があり、それを埋める試みを続けていきたいと考えています。そのための思索と史料読みに時間を割いていますが、他方で、2007年度は、遠ざかっていた古代社会の具体像を探る研究もフィールド・ワークを伴わせてやってみたいものです。
担当授業:【大学院】日本史特講T(日本古代史)講義・演習(修士課程)/日本史特殊研究T(日本古代史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【著書】】『日本古代の皇太子』(吉川弘文館 1985年)/『可能性としての女帝−女帝と王権・国家−』(青木書店 1999年)/『日本古代王権の研究』(吉川弘文館 2006年)
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◆飯尾秀幸(いいお・ひでゆき) 中国古代史
近況:ここ数年、張家山漢簡、とくに『二年律令』を通して、中国古代における法と支配構造の問題、すなわち郷里社会と国家権力の関係を考えている。具体的には、犯罪人の社会的位置づけ、爵制と「身分」、土地「所有」と郷里社会、門を境界とする郷里社会の周縁に居住する人々の問題などである。院生たちと『二年律令』訳注を作成しながら、国家論・共同体論を議論することは楽しいひと時である。訳注の成果は、『専修史学』に掲載中である。
担当授業:【大学院】東洋史特講T(中国古代史)講義・演習(修士課程)/東洋史特殊研究T(中国古代史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【著書】『中国史のなかの家族』(山川出版社、2008年) 【論文】「秦・前漢初期における里の内と外」(『中国前近代史論集』汲古書院、2007) 【共訳】「張家山漢簡『二年律令』訳注(一)」〜「同(一二)」(『専修史学』35号、2003年より継続掲載中)
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◆太田順三(おおた・じゅんぞう) 世界史からみた日本の中世
近況:古代から中世・近世の移行期の問題を内政と外交史から捉え直さねばならない。特に中世地域的一揆世界は無文字社会アフリカのタンザニアに習俗として残るムラマチ制度、イスラム地域の成立と変容、インド社会史や中国など「東・南アジア世界」を考慮した世界史の形成も、少数多民族社会と社会構成の観点から捉えられないと21世紀の歴史学がみえてこない、というようなことを考えている。
担当授業:【大学院】日本史特講U(日本中世史)講義・演習(修士課程)/日本史特殊研究U(日本中世史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【論文】「長禄期の『当知行』・『不知行』(中野栄夫編『日本中世史の政治と社会』吉川弘文
2003年)/「『得宗被官』安東蓮聖再考」(悪党研究会編『悪党と内乱』岩田書店 2005年)/「但馬国」(網野善彦他編『講座日本荘園史8 近畿地方の荘園V』吉川弘文館 2001年)
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◆大谷 正(おおたに・ただし)
近況:大学院修士課程の授業では、日本近代の政治外交史とメディア史に関する授業と演習をおこなっています。2007年度は、明治の西南戦争と日清戦争を「戦争と報道」・「戦争の叙述」という観点から検討する予定です。私自身の興味関心はメディア史に深入りしつつありますが、今年から数年間は今までの書き散らした論文や資料紹介を、何冊かの本に纏めるという、後始末的な仕事に精進潔斎して集中しようと思います。
担当授業:【大学院】日本史特殊講義W(日本近代史)講義・演習(修士課程)
主要業績:【著書】『近代日本の対外宣伝』(研文出版、1994年)/『兵士と軍夫の日清戦争』(有志舎、2006年) 【共著】『男性史T−男たちの近代−』(日本経済評論社、2006年)
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◆近江吉明(おうみ・よしあき) フランス民衆蜂起論・フランス革命史
近況:15世紀フランスの民衆蜂起研究として、1413年のカボシャン蜂起や1490年代ブルターニュの蜂起に関する史料の分析を行なっている。また、フランス革命期のジャクリーについての実証分析として、1789年3月段階に作成された農村教区陳情書を読んでいる。グランド・プール期にジャクリーの激しい展開のあったバス・ノルマンディーのオルヌ県に注目し、第一次選挙集会時の農村民の意識の中に、フランス革命がどのように展望されていたのかを見ている。
担当授業:【大学院】西洋史特講T(ヨーロッパ前近代史)講義・演習(修士課程)/西洋史特殊研究T(ヨーロッパ前近代史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【著書】『黒死病の時代のジャクリー』(未来社 2001年) 【共著】『フランス革命とナポレオン』(未来社 1998年)/『100問100答、世界の歴史』(河出書房新社 2003年)
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◆亀井明徳(かめい・あきのり)
近況:最近3年間、大学院生・修了生等との共同調査および研究として、@『中国出土元青花瓷資料集成』を2005年に刊行。Aモンゴル・カラコルム遺跡出土陶瓷器の調査を2年間実施し、『研究報告書T』を2007年に刊行でき、引きつづき『同U』を2008年に発刊できるように準備を進めている。B「日本出土元青花瓷資料」について3年間にわたり全国的な調査をつづけてきたが、2007年度中に出版できる見通しである。
担当授業:アジア考古学特講U(東・東南アジア考古学)講義・演習(修士課程)/東アジア考古学特殊研究T講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【著書】『亜州古陶瓷研究T』(2004年)/『亜州古陶瓷研究U』(2005年)/『モンゴル・カラコルム遺跡出土陶瓷器の研究T』(2007年)
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◆田中正敬(たなか・まさたか) 朝鮮近代史・日朝関係史
近況: 朝鮮近代史、なかでも植民地期の1920年代において、日本人と朝鮮人とが相互にどのような認識を持ち、関係を結んでいたのか、その前提は何かという問題に関心を持っています。最近のゼミでは、個々の研究報告とは別に、もっぱら関東大震災時に起こった「人災」のことについて資料を集め読み進めると同時に、フィールドワーク等にも出かけています。ゼミは東アジアや日本など様々な専攻分野から集まっている院生のみなさんで構成されています。
担当授業:【大学院】東洋史特講W(朝鮮史)(修士課程)
主要業績:【論文】「近年の関東大震災史研究の動向と課題―現在までの10年間を対象に―」(関東大震災80周年記念行事実行委員会編『世界史としての関東大震災―アジア・国家・民衆―』日本経済評論社、2004年)/「韓国の歴史教科書と東アジア―高等学校『国史』を中心に―」(『日本歴史学協会年報』20、2005年)/「関東大震災と朝鮮人の反応―その意識を考察する手がかりとして―」(『専修大学人文科学年報』35、2005年)
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◆内藤雅雄(ないとう・まさお) 南アジア近現代史
近況: 南アジアの近現代史を専攻し、現在は19世紀から今日までのインドにおける宗教と社会・政治の関わり(コミュナリズムの問題)、および世界各地における南アジア系移民社会の歴史と現状を主な研究テーマとしている。大学院でもこれらのテーマを取り上げるが、前者の場合、とくにM・K・ガンディーやM・A・ジンナーといった個人に焦点を当てることも考えている。東南アジアや西アジアにおける宗教と政治の問題に関心ある人も歓迎したい。
担当授業:【大学院】東洋史特講V(南アジア史)講義・演習(修士課程)/東洋史特殊研究V(南アジア史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【共編著】『移民から市民へ』(東京大学出版会 2000年)/『南アジアの歴史』(有斐閣 2006年) 【論文】「ガンディーと日本人」(『アジア・アフリカ言語研究』2002年3月)/「パール判決の実像と虚像」(『歴史地理研究』2007年1月)
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◆西坂靖(にしざか・やすし) 日本近世史
近況:江戸・京都・大坂など日本近世の巨大都市社会の特質について、近世屈指の豪商である三井越後屋の史料をもとに解明するというかたちの研究を続けています。近年の関心は、越後屋それ自体の奉公人組織にあり、具体的には、幕末維新期の越後屋で実施された大規模な人員整理について、それがいかにして可能であったかという点に関心をもって研究を進めています。
担当授業:【大学院】日本史特講V(日本近世史)講義・演習(修士課程)/日本史特殊研究V(日本近世史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【著書】『三井越後屋奉公人の研究』(東京大学出版会 2006年) 【論文】「京本店元〆市川忠三郎奉公履歴―別宅時代―」(『三井文庫論叢』41号、2007年) 【共編著】『京都冷泉町文書』全7冊(思文閣出版 1991〜2000年)
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◆土生田純之(はぶたよしゆき) 日本考古学(古墳時代)
近況:古墳時代を国家段階であると見る見解が近年台頭している。しかし、これは各地に所在する遺跡の実態を十分に踏まえたものとはいえず、巨大古墳の存在を唯一の「証拠」として、後の「畿内」地方の優位性を喧伝するものである。現在はこの問題に関して、古墳時代の政治や社会を、規模や副葬品の多寡のみではなく、各地に残る遺跡を様々な観点から分析して追求することを目標としているが、その際朝鮮半島との関連性にも特に注意を向けている。
担当授業:【大学院】アジア考古学特講T(日本考古学)講義・演習(修士課程)/東アジア考古学特殊研究U(日本考古学)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【著書】『古墳時代の政治と社会』(吉川弘文館 2006年) 【共著】『古墳構築の復元的研究』(雄山閣 2003年) 【編著】『古墳時代の実像』(吉川弘文館 2008年)
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◆樋口映美(ひぐち・はゆみ) アメリカ史(人種関係・社会史)
近況:アメリカ合衆国における人種と記憶の問題に取り組み始めました。とりわけ、@往々にしてアメリカ合衆国南部に限定して研究されてきた公民権運動を、インタビューによるオーラルヒストリーの手法も交えて総体的にとらえることを試みる一方で、Aシカゴに照準を合わせて、アフリカ系コミュニティと移民との関係・アフリカ系ビジネスマンの役割と生活空間・娯楽文化など多面的に考察していきたいと思っています。
担当授業:【大学院】西洋史特講X(アメリカ史)講義・演習(修士課程)/西洋史特殊研究X(アメリカ史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【著書】『アメリカ黒人と北部産業−戦間期における人種意識の形成−』(彩流社 1997年) 【訳書】アン・ムーディ『怒りと貧困のアメリカ南部―公民権運動への25年―』(彩流社 2008 年) 【共編著】『歴史のなかの「アメリカ」―国民化をめぐる語りと創造―』(彩流社 2006年)
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◆日暮美奈子(ひぐらし・みなこ) ドイツ近現代史
近況:ヴィルヘルム期ドイツにおいて「社会問題」の解決をめざした様々な団体運動に関心を持っています。具体的には、婦女売買撲滅運動と道徳向上運動の相互関連性を明らかにすることを通じて、保守派による「危機」克服の試みに分析を加えたいと考えています。授業では、研究文献を読みつつ、ネイションが形成・構築・再構築される際のジェンダーのあり方について議論しています。参加者の研究領域が多様であることをいかして、今後は授業が有益な情報交換の場となるようにしたいと思っています。
担当授業:【大学院】西洋史特講V(西洋近現代史)講義・演習(修士課程)/西洋史特殊研究U(西洋近現代史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【論文】「1890年代ドイツにおけるキリスト教福音派系社会事業と婦女売買」(『専修史学』44、2008年)/「女がシュテトルを離れるとき―ユダヤ人移民史の一側面―」(『歴史評論』625、2002年)/「『20世紀の汚辱』―ヴィルヘルム期ドイツにおける婦女売買―」(『現代史研究』44、1998年)
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◆矢野建一(やの・けんいち) 日本古代史・古代宗教史
近況:2004年9月に中国の西安で発見された遣唐留学生「井真成」墓誌の研究も『遣唐使の見た中国と日本』で、関連する唐日天壇の研究も『長安都市文化と日本・朝鮮』で終わりとし、そろそろ本来の神祇史研究に立ち戻るつもりです。
担当授業:【大学院】日本史特講T講義・演習(日本古代史)(修士課程)/日本史特殊研究T(日本古代史)講義・演習(博士後期課程)
主要業績:【著書】『古代祭祀論考』(塙書房 1991年) 【共著】『遣唐使の見た中国と日本』(朝日新聞社 2005年) 【編著】『長安都市文化と日本・朝鮮』(汲古書院 2006年)
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