専大日語・コラム
専大日語の教員による、月替わりのコラムです。
2018年12月:わしが書いたコラムを読むのじゃ
卒論には人気のテーマというものがあります。
例えば,「役割語」というテーマ。役割語は下記のように定義されています。
ある特定の言葉遣い(語彙・語法・言い回し・イントネーション等)を聞くと特定の人物像(年齢,性別,職業,階層,時代,容姿・風貌,性格等)を思い浮かべることができるとき,あるいはある特定の人物像を提示されると,その人物がいかにも使用しそうな言葉遣いを思い浮かべることができるとき,その言葉遣いを「役割語」と呼ぶ。(金水2003)
(1)わしが博士じゃ。
(2)まろは○○○でおじゃる。
(3)そうでちゅ。
(1)~(3)は「キャラコピュラ」とよばれるもの(定延2007)の一例です。
マンガやアニメに登場する博士は,なぜか(1)のように「~じゃ」と話すイメージがありますね。だけど,私,未だにそう話す博士に会ったことがありません。でも,何となく博士っぽい。この「○○っぽい」言葉が人々の頭の中に刻まれているのでしょう。(2)を読んだあなた,特定のアニメのキャラクターっぽいと思いましたよね? (3)は幼児っぽいでしょ?
私のゼミでも,役割語をテーマに卒論を書く学生がたくさんいます。例えば,小説『図書館戦争』の主人公の役割語や,アニメ『アイカツ!』に登場する8キャラクターの役割語,宝塚歌劇団の男役の男性語など。「○○っぽさ」を明らかにする面白い研究がたくさんあります。
人気の卒論テーマと言えば,「集団語」に関する研究もあります。集団語とは下記のように定義されます。
(4)のような職業語,(5)のようなキャンパス言葉も集団語ですし,(6)のような若者言葉も含まれます。文の意味は,各自,ググってくださいね。
(4)おい,お客さんにあがりとむらさき! [すし屋]
(5)登山・下山つらいなー。 [専大生]
(6)かわいみがすぎて草生える。 [若者のSNS]
ある特定の集団内で使われる言葉ってありますよね。
私のゼミでも,集団語研究は人気です。例えば,Dオタ語(ディズニーオタクの集団語),キャンパス言葉の変遷,「やばみ」や「お母さんみあるよね」のような「○○み」に関するものなど。念のため言っておきますけど,用語を集めて楽しむのではなくて,造語法や意味の拡張などを日本語学的に解明したものです。
ところで,卒論テーマとして人気の役割語と集団語には,どんな関係があるのでしょう。具体的に,次のような問いで考えてみましょう。
(a)役割語が集団語化することはあるのでしょうか? あるとしたら,どんなものでしょうか?
(b)集団語が役割語化することはあるのでしょうか? あるとしたら,どんなものでしょうか?
みなさんの周りにある現象を思い浮かべながら,(a)と(b)の問いに取り組んでみましょう。新たな研究テーマが見つかるかもしれません。
<参考文献>