第7章 代理投票

 

 第1節 総 説

 代理投票とは、病気、身体的障害、または高齢によって選挙人本人が投票所に出向いていって自ら投票を行うことができない場合、代理人によって投票を行うことです(公職選挙法第14章第2条)。旧公職選挙法の規定では、病気、身体障害、高齢とは関係なく配偶者であるということによって代理投票が認められていましたが、新しい公職選挙法では、ただ、配偶者だからという理由によって代理投票を行うことができなくなりました。選挙人本人が病気、身体障害、または高齢によって投票所に自ら出かけてゆけないということが必要です。

 代理投票には、選挙人の親族等による代理投票と郵便配達人による代理投票の二つ方法が認められています(公職選挙法第14章第1条)。選挙人の親族等による代理投票とは、選挙人の配偶者、子、孫、父または母、兄弟姉妹、配偶者の子、内縁の配偶者または内縁配偶者の子によって行われる投票のことを、郵便配達人による代理投票とは、投票事務を取り扱っている郵便局に勤務している郵便配達人によって行われる投票のことをいいます。代理投票の場合の投票代理人になりうる者は、いずれの場合においても、満18歳に達していることが必要です(公職選挙法第14章第3条第2項)。但し、選挙人の親族以外の者でも、職業として選挙人の介護を行っている者または日常、選挙人の面倒を見ている者も、例外的に選挙人に代わって選挙人のために代理投票を行うことができます(公職選挙法第14章第3条後段)が、ここでは親族による代理投票として説明することにします。

 

 第2節 代理投票の方法

 1.親族等による代理投票

 親族等による代理投票の場合、選挙人は、まず、最初に、自ら投票用封筒に投票用紙を入れ、封をした後、投票代理人と投票立会人の立ち会いの許で、その投票用封筒を代理投票用の外封筒に入れ、封をします。そしてその後、代理投票用封筒の表に、選挙人は、病気または身体的障害もしくは高齢によって自ら投票所に出頭して投票を行うことができない旨と投票委託年月日を記載し、署名を行った後、代理投票用封筒を投票代理人に引き渡します。

 代理投票を引き受けた者は、投票立会人のいる前で、代理投票用封筒の表面に、代理投票用封筒が選挙人自身によって整えられたものであること、本人が署名を行ったものであることを記載し、自分の住所、氏名、個人番号を記載し、署名を行います。代理投票用外封筒が整えられた後、投票代理人はその代理投票用外封筒をもって所定の投票所に出向いていって投票を行います。

 

 2.郵便配達人による代理投票

 投票が郵便配達人によって行われる場合、投票を依頼できる者は投票事務を取り扱っている郵便局に所属している郵便配達人に限られます。但し、代理投票を引き受けることのできる郵便配達人が特定の路線の郵便配達人に限られている場合もあります。代理投票の引き受けを特定の路線の郵便配達人にのみ限定するか否かは、郵便会社と中央選挙庁との協議の上、中央選挙庁によって決定されます。

投票を郵便配達人に依頼しようとする場合、選挙人は、まず、自分で投票用封筒を準備しなければなりません。投票用封筒を準備した後、選挙人は、投票立会人の立ち会いの許で、投票用紙の入っている投票用封筒を代理投票用外封筒に入れ、封をします。代理投票用に投票用封筒を封入した後、選挙人は、投票用封筒および代理投票用外封筒を選挙人自らが用意したことおよび投票用封筒が所定の期間内に準備されたものであることを誓書し、署名を行います。選挙人の署名が行われた後、投票立会人は、代理投票用外封筒の上に記載されている文書が選挙人本人によって誓署されたものであることを誓書します。その場合、投票立会人は満18歳に達していなければなりません。

 郵便配達人は郵便局において投票受け付きが行われている間、代理投票を受け付けることができますが、その期間中、郵便配達人は、直近過去2回の選挙のうち、いずれかの回の選挙においてスウェーデン全国における総投票数の1パーセントを超えている得票数を獲得している政党の名簿式投票用紙および白地投票用紙を携行していなければなりません。

 代理投票用外封筒が準備できたとき、選挙人は投票を委託する郵便配達人に代理投票用外封筒と選挙人カードを引き渡します。選挙人から投票を委託された郵便配達人は、委託された代理投票用外封筒を郵便挙に持ち帰り、投票受取人に引き渡します。投票受取人に対する代理投票用外封筒の引き渡しは郵便局の執務時間が過ぎてもできます。郵便配達人から代理投票用外封筒を受け取った投票受取人は公職選挙法第11章第15条の規定に従って代理投票用外封筒を点検、確認した後、特に問題がなければ、郵便配達人のいる前で、窓開き封筒に封入し、関係コミューン選挙管理委員会に送付します。送付が郵便で行われる場合、書留郵便によらなければなりません。投票受取人が代理投票用外封筒に異常を発見した場合、代理投票用外封筒は投票を引き受けてきた郵便配達人に返還され、選挙人に戻されます(公職選挙法第11章第19条)。

 代理投票は親族投票の場合、通常の国会、県会、コミューン議会およびヨーロッパ議会の選挙の場合、選挙日の24日前から、その他の選挙の場合には選挙日の10日前から準備することができますが、郵便配達人による投票準備は、郵便局投票の受付が開始される18日前から行われます(公職選挙法第14章第11条)。

 


      第8章後悔投票に進む    公職選挙法第14章参照