第5章 在外公館投票

  第1節 総説

  ここに在外公館投票とは、スウェーデン国外に設置されているスウェーデン大使館または領事館等の在外公館において行われる投票のことをいいます。スウェーデン国外に居住している有権者のために、1968年の国会選挙から設けられている投票制度ですが、1994年の通常選挙にはスウェーデン国外に居住している有権者の77パーセントの者が投票に参加しています。尚、1968年からの在外公館投票の投票者統計については、在外公館投票統計を参照して下さい。

  在外公館投票の行われるスウェーデン大使館または領事館は、外務省と協議よって、中央選挙庁が決定されます(公職選挙法第13章第1条)。在外公館投票の行われる大使館または領事館が決定された場合、在外公館における投票場所、投票時間は在外公館長によって決定されます(公職選挙法第13章第3条)。在外公館投票の場合、在外公館長または在外公館長によって選任された者が投票受取人(投票責任者)となります。在外公館で投票が行われる場合でも、投票締め切り時間が経過したとき、まだ投票所または投票待合室に投票人がいる場合、すべての者の投票が終わるまで投票時間が延長されます(公職選挙法第13章第5条)。

  在外公館投票の場合、通常選挙の場合には、選挙日の24日前から、そしてまたそれ以外の場合には選挙日の20日前から投票受付が行われることになっていますが、投票締め切り日は、在外公館で行われた投票が遅くとも選挙日前日の12時までに中央選挙庁に到着するまで継続されることになっています(公職選挙法第13章第2条)。

 尚、最近、RSV(Riksskattsverket)から、在外公館投票及び郵送投票に関する投票手続き並びに在外公館投票の受付を行うスウェーデン大使館名が公示されました。

 

  第2節 投票方法

 1.本人が直接在外公館に出向いて投票を行う場合

前にも述べたように、在外公館投票の場合も、他の投票所における投票の場合と同様、選挙人本人が、病気、身体障害または高齢のため、直接、投票所に出向いていって投票を行うことができない場合以外、選挙人本人が直接、投票所に指定されている在外公館に出向いていって投票を行うことが原則となっています。その場合、選挙人は、指定された場所で、投票用封筒の中に投票用紙を入れ、封をし、選挙人カードと一緒に投票受取人に渡します。その場合、選挙人が選挙人カードをもっていなかった場合、投票受取人は選挙人カードに代えて、アドレスカードを作成、発行します。アドレスカードの作成、発行する場合、選挙人の身元確認を行わなければなりません。選挙人が身元確認を拒否した場合、投票受取人は、投票を拒否することができます(公職選挙法第13章第7条)。

 投票受取人が選挙人から投票用紙の入っている投票用封筒を受け取った場合、投票受取人は選挙の種類別に一枚ずつ投票用紙が投票用封筒に入っているか否かを点検し、さらに投票用封筒に必要記載事項以外のことが記載されていないか否かを確認します。投票用封筒に特に問題がなければ、投票受取人は、選挙人のいる前で、その投票用封筒を選挙人カードと一緒に窓開き封筒に入れ、封をし、投票受付台帳の投票受付欄に、選挙人の氏名を記入します。そして更に投票受取人は、投票受付台帳に記載されている受付番号と同じ番号を窓開き封筒の表に記載します(公職選挙法第13章第19条)。

  在外公館において準備された窓開き封筒は、中央選挙庁に郵便で送られることになっていますが、その場合、必ず、書留郵便で送付されなければならないことになっています(公職選挙法第13章第20条)。

  在外公館から中央選挙庁に送られてきた投票用封筒の入っている窓開き封筒は、中央選挙庁において枚数を確認した後、選挙人の選挙人名簿が設置されているそれぞれのコミューン選挙管理委員会に送付されます。窓開き封筒がコミューン選挙管理委員会に郵便で送付される場合、書留郵便で送付しなければならないことになっています。尚、各コミューン選挙管理委員会に送付された窓開き封筒の選挙人の住所が知れない場合、その窓開き封筒は、選挙が終わるまで中央選挙庁において補完されることになっています(公職選挙法第13章第21条第2項)。

 

 2.在外公館投票が代理人によって行われる場合

 前にも述べたように、在外公館において投票を行うことができる者が、病気、身体障害、または高齢のため、本人が直接、在外公館に出向いていって投票を行うことができない場合、代理人によって投票を行うことができます。その場合、代理人となることができる者は、他の投票所における代理投票の場合と同様、代理投票を委託する者の配偶者、子、孫、父または母、兄弟姉妹、配偶者の子、内縁の配偶者もしくは内縁配偶者の子、または代理投票を委託している者の看護者であることが必要です(公職選挙法第13章第13条)。但し、同性婚の一方が他の一方の投票代理人になりうることができるか否かについては問題があります。

 在外公館において代理投票が行われる場合、代理投票人は選挙人本人によって予め用意されている投票用封筒の封入されている代理投票用外封筒と代理投票を委託した選挙人の選挙人カードを一緒に投票受取人に提出します。投票代理人が投票を委託した選挙人の選挙人カードを提出することができない場合、選挙人カードの代わりに、アドレスカードを作成、発行することができます(公職選挙法第13章第15条)。

 投票受取人が投票代理人から代理投票用外封筒を受け取ったとき、投票受取人は、代理投票用外封筒の表に記載されている記載事項から、代理投票用外封筒が間違いなく、所定の期間内に、代理投票を依頼した選挙人本人によって準備され、且つ代理投票を依頼した選挙人が病気または身体障害もしくは高齢のため、投票所に出頭することができない者であることを確認します。また更に、投票受取人は、代理投票用外封筒が投票代理人と投票立会人の立ち会いの許に準備されていること、投票代理人が選挙人と一定の身分関係のあるものであること、投票代理人が投票立会人になっていないこと、代理投票用外封筒の上に、投票代理人の氏名、個人番号および住所が記載されていること、更に投票代理人および投票立会人がともに満18歳に達していることを確認します。代理投票人が投票受取人によって知られていない場合、投票受取人は、投票代理人に身分証明書の提示を求めることができます。投票代理人が身分証明を拒否した場合、投票受取人は投票代理人による投票を拒否することができます(公職選挙法第13章第16条)。問題がなければ、投票受取人は、投票代理人から提出された代理投票用外封筒と選挙人カードまたはアドレスカードを一緒にして窓開き封筒に入れ、封をします。その後で、投票受取人は備え付けの投票受付台帳に選挙人の氏名を記入し、窓開き封筒の表に投票受付台帳に記載されている投票受付番号を記載し、中央選挙庁に送付します。送付が郵便によって行われる場合、書留郵便が使用されます(公職選挙法第13章第20条)。

 尚、在外公館から中央選挙庁に窓開き封筒が送られてきた場合、中央選挙庁はその数を記録し、直ちに選挙人の選挙人名簿のあるコミューン選挙管理委員会に転送します。転送が郵便をもって行われる場合、書留郵便をもって送付されます(公職選挙法第13章第21条第1項)。窓開き封筒の記載されている送付先コミューン選挙管理委員会が不明の場合、または送付先コミューン選挙管理委員会の選挙人名簿に選挙人の氏名が搭載されていない場合、窓開き封筒は、中央選挙庁に返却され、選挙結果が確定されるまで、中央選挙庁において保管されることになっています(公職選挙法第13章第21条第2項)。

 


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