第4章 特設投票所投票

 

 第1節 総説

 特設投票所投票とは、病院、老人ホーム、刑務所等の保護施設内に設置されている投票所において行われる投票のことです。旧公職選挙法では、選挙のときに、病院、老人ホーム、刑務所等の施設に入っている者のために、特設郵便局が設置され、病院、老人ホーム、刑務所等に収容されている者は、そこで投票を行うことができるようになっていましたが、今度の公職選挙法の改正で、特設郵便局の設置が廃止され、その代わりに特設投票所が設置されることになりました。特設投票所の設置される場所は、これまで通り、病院、老人ホーム、刑務所等の施設内であることには変わりがありませんが、更にその他に、中央選挙庁がその必要性を認めた場合、それ以外の場所にも特設投票所を設置することができるようになっています(公職選挙法第12章第3条)。特設郵便局投票の場合と異なって、特設投票所投票の場合、特設投票所の設置、監督、すべてが中央選挙庁の判断で行われることになっているからです(公職選挙法第12章第1条)。

 選挙投票に際し、特設投票所を設置する場合、中央選挙庁は、特設投票所が設置されるコミューンの選挙管理委員会と事前に打ち合わせをしておくことが必要ですが、更に特設投票所が病院、老人ホーム、刑務所等の社会福祉施設に設置される場合には、施設の長と特設投票所の設置場所、設置期間について十分な打ち合わせをしておくことが必要です。尚、それ以外の場所に特設投票所を設置する場合には、県行政府およびコミューン選挙管理委員会と特設投票所の設置場所を協議しなければならないことになっています(公職選挙法第12章第4条)。

 

 第2節 特設投票所における投票受付期間と投票受取人

 病院、老人ホームおよび刑務所等の保護施設内に特設投票所が設置された場合、特設投票所における投票は、選挙日の一週間前から受付が行われることになっていますが、それ以外の特設投票所の場合、投票受付は選挙日当日に限られています。またその場合、投票受付時間を午前中、11時前の1時間、午後3時からの1時間と限定することもできます。特設投票所の投票受取人(責任者)は中央選挙庁によって選任されることになっていますが、中央選挙庁はその人選をコミューン選挙管理委員会に委託することもできます(公職選挙法第12条第6条)。

 

 第3節 特設投票所における投票手続

 (1)総説 特設投票所における投票は、他の投票所において行われる投票の場合と同様、原則として、選挙人本人が、投票受付期間中に投票所に出向いていって投票を行うことになっています(本人投票の原則)。しかし、選挙人が病気、身体障害、高齢のため、選挙人自身が投票所に出向くことができない場合、代理人による投票が認められています(公職選挙法第14章第2条、第12章第15条)。但し、投票が選挙人本人以外の代理人によって行われる場合、投票所における投票受付手続きが異なっています。したがって、特設投票所における投票手続きを説明する場合、本人投票の場合と代理人による投票の場合を区別して説明する必要があります。そこで次に、特設投票所で選挙人本人が投票を行う場合と代理人が投票を行う場合を別々に説明することにします

 (2)投票が選挙人本人によって行われる場合 特設投票所において選挙人本人が投票を行う場合は、まず、最初に投票受取人に選挙人カードを提示し、投票用紙を入れるための投票用封筒をもらって、係員の指示に従って、投票所内に設けられている選挙用衝立のところで、予め用意してきた投票用紙を投票用封筒に入れ、封をし、投票受取人のところに持参します。既に自室で投票用封筒を用意してきている場合には、そのまま投票受取人のところにいって、選挙人カードと一緒に投票用紙入りの封筒を投票受取人に手渡します。投票用紙は折り曲げないように注意して投票用封筒に封入しなければなりません。

 選挙人から選挙人カードと投票用紙入りの投票用封筒を受け取った投票受取人は、まず、投票人が選挙人本人であるか否かを確認します。投票受取人によって、投票人が選挙人本人であるか否かが確認できない場合、投票受取人は投票人に身分証明書の提示を求めることができます。投票人からその請求が拒否された場合、投票受取人は、投票用紙入り封筒の受け取りを拒否することができます(公職選挙法第12章第9条)。

 投票人が選挙人本人であることを確認することができたら、次に、

  1.選挙人の氏名が選挙人名簿の上に搭載されているか否かを確認し

  2.各投票用封筒に選挙の種類別に一枚づつ投票用紙が封入されているか否かを確認します。確認は、投票用封筒に設けられている確認用の窓から行われます。一枚の投票用封筒に種類の異なる投票用紙が封入されている場合、または2枚以上の投票用紙が封入されている場合、投票用封筒を選挙人に戻して、もう一度、投票用封筒の入れ直しをさせます。もし、選挙人がそのことを拒否した場合、投票用封筒の受け取りを拒否することができます。また選挙人が一つの選挙に2枚以上の投票用封筒を提出した場合、そのうちから一枚だけを受け取って後は選挙人に返還しなければなりません。選挙人が一つの選挙に2枚以上の投票用封筒の受け取りを強要した場合、投票受取人はすべての投票用封筒の受け取りを拒否することができます。その手続きが終わったら、更に

  3.投票用封筒の上に必要記載事項以外のことが記載されていないか否かを確認します。

以上の事柄に関して点検が終わったら、投票受取人は、選挙人のいる前で、窓開き封筒に投票用紙入りの封筒と選挙人カードを入れ、封をします。投票受取人は、窓開き封筒に選挙人カードと投票用紙入り投票用封筒を封入した後、投票受付台帳に選挙人の氏名を記入し、且つ窓開き封筒の表に発送先コミューン選挙管理委員会名を記入します。時間があれば書留郵便で郵送することになっていますが、選挙日当日、投票が選挙日当日行われた場合、投票受取人が投票用紙の入っている窓開き封筒をコミューン選管まで持参することになっています。尚、コミューン選管に届けられた窓開き封筒の処理は、開票手続きのところで説明します。

(3)投票が代理人によって行われる場合 投票が代理人によって行われる場合、投票受取人は代理投票用封筒を受け取るとき、次のことを点検、確認しなければなりません。

 投票受取人が投票代理人から代理投票用外封筒を受け取る場合、まず、最初に、代理投票を委託している選挙人本人の氏名が、投票所備え付けの選挙人名簿に搭載されているか否かを確認します。その確認ができたとき、投票受取人は、代理投票用外封筒の表に記載されている文言を通じて、その代理投票用外封筒が選挙人自身によって整えられたものであること、そして選挙人が病気、身体障害または高齢によって本人自ら投票所にきて投票を行うことができないということを確認します。そしてまた更に、投票用封筒が所定の期間内に準備されたものであることを確認します。以上の点が確認できた場合、次に投票代理人と選挙人そして投票立会人の身分関係および投票代理人と投票立会人の年齢を確認します。投票代理人が投票受取人によって知られていない場合、投票受取人は、投票代理人に身分証明を求めることができます。投票代理人が身分証明を拒否した場合、投票受取人は代理投票用外封筒の受け取りを拒否することができます。特に問題がなければ、投票受取人はその代理投票用外封筒を受理し、投票代理人のいる前で窓開き封筒に代理投票用外封筒と選挙人カードを入れ、封をし、更に代理投票用受付台帳に必要事項を記載し、その窓開き封筒を関係コミューン選挙委員会に発送します。

 


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