第2章 投票区投票所投票

 第1節 総説

 ここに投票区投票所投票とは、選挙日当日、各選挙区の投票区内に設置されている投票所(vallokal)において行う投票のことをいいます。投票区投票所は、他の投票所の場合と異なって、選挙日当日だけ設置されます。多くの場合、投票所には、公立学校の建物が利用されているようですが、それ以外の公共施設の建物、たとえば教区の公会堂等も使用されているようです。どこの建物を、投票区投票所投票所に使用するかは、コミューンにおいて決定されます(公職選挙法第9章第4条)。スウェーデンの選挙の場合、選挙人は、原則として、選挙日当日、自分の選挙人名簿の設置されている投票区投票所において投票を行わなければなりませんが、選挙人本人が病気、身体障害または高齢によって投票所に出向いていって投票を行うことができない場合、代理人によって投票を行うことが認められています。公職選挙法は、選挙人本人が、選挙日当日、投票区投票所に出向いていって投票を行う場合と本人以外の者が投票区投票所に出向いていって投票する場合、別々の投票の受付方法を定めています。したがって、投票管理人は、選挙日当日、投票が選挙人本人によって行われる場合と投票が代理人によって行われる場合の両方の手続きを知っていなければなりません。

 

  第2節 投票が選挙人本人に行われる場合

 スウェーデンの公職選挙法の規定では、投票は、選挙日当日、選挙人本人が投票区投票所において行うことが大原則となっていますが、その場合、選挙人は自分の選挙人名簿が設置されている投票区投票所において投票を行わなければなりません。選挙人が投票区投票所において投票を行う場合、まず、選挙人は、投票所入り口で係員から投票用封筒をもらって、係員の指示する投票用衝立(valskarm)のあるところにいって、投票用紙を投票用封筒に入れ、封をします(公職選挙法第10章第4条)。もちろん、投票用封筒を自宅で用意してきている者は、そのまま投票受付人のところにいって、予め用意してきた投票用封筒を提出します。投票用紙も投票用封筒も用意してこなかった者は、投票用紙を投票所の入り口でもらって、投票用衝立のところにいって投票用封筒の準備をします。 

 投票用封筒の準備ができた者は、その投票用封筒を投票管理人(投票用封筒の受取人)のところもっていって、投票管理人に提出します。選挙人から投票用封筒を受け取った投票管理人は、投票用封筒の封がしまっているかどうかを確認し、更に投票用封筒に選挙の種類別に一枚ずつ投票用紙が封入されているか否かを確認します。投票用封筒に封入されている投票用紙の種類、枚数の確認は、投票用封筒に設けられている覗き穴から確認します。投票用封筒に必要な投票用紙が封入されていることを確認した後、投票用封筒の上に必要記載事項以外のことが記載されていないか否かを点検し、更に投票人が選挙人本人であるか否かを確認します。

 投票者が投票管理人によってよく知られていない場合、投票管理人は、投票者に選挙人カードの提示を求め、ときには身分証明書の提示を求め、投票者が選挙人本人であることを確認します。投票者が選挙人カードの提示を拒否した場合、もしくは身分証明を拒否した場合、投票受付人は投票を拒否することができます。尚、投票区の投票管理人の場合、他の投票所における投票受取人の場合と異なって、投票者が二重投票を行っていないか否かを確認しなければなりません。また、投票区投票所における投票の場合、投票用封筒の受け取りには、必ず、投票管理委員長か副委員長が立ち会っていなければなりません(公職選挙法第4章第6条第2項)。

 投票者の身元確認ができた段階で、投票管理人は、選挙人の氏名が記載されている選挙人名簿に投票済みの印を付け、選挙の種類別に設けられている投票箱に一枚ずつ投票用封筒を投函してゆきます。尚、スウェーデン語では、投票箱のことを選挙瓶(壷)(valurna)と呼んでいますが、その昔、投票箱として、蓋付の大きな瓶が使われていたことからそう呼ばれているということです。今、投票箱として選挙瓶を使っている投票所は、一部の投票所だけだと思いますが、今でも選挙瓶を投票箱として、昔ながらの大きな瓶を使用しているところもあるということです。

 投票区投票所の場合、窓開き封筒を準備する必要がありませんので、他の投票所の場合と異なって、投票手続きは比較的簡単です。

 

 第3節 投票が代理人によって行われる場合

前にも述べたように、選挙は、選挙人本人が、投票区投票所に出向いていって投票を行うことが原則となっていますが、選挙人本人が病気、身体障害、高齢等の理由によって、投票所に出向いていって投票を行うことができない場合、スウェーデン公職選挙法は代理人よる投票を認めています。代理投票には親族による代理投票と郵便配達人による代理投票が在りますが、代理投票の方法については、後で説明することにして、ここでは、代理投票が行われた場合の投票管理人の投票受付方法について説明を行っておきます。

投票が選挙人本人以外の者によって行われる場合、投票管理人は代理投票人から提出された代理投票用外封筒を受け取り、まず、最初に、代理投票を依頼している選挙人が投票区投票所の選挙人名簿に登載されているか否か、二重投票を行っていないか否かを確認します。代理投票の依頼者が選挙人名簿に登載されていることが確認された場合、投票管理人は、次に代理投票用外封筒を選挙人本人が準備し、且つ、代理投票用外封筒の表に記載されるべき必要記載事項が選挙人本人によって自書、署名されているか否かを確認します。更に代理投票を行っている者が、選挙人の親族である場合、選挙人とどのような身分関係の者であるか、また選挙人の親族が立会人になっていないか否かを確認します。また代理投票人および立会人が満18歳に達しているか否かも確認します。

以上のことが確認できた段階で、投票管理人は代理投票用外封筒を開披し、中から投票用封筒を取り出します。そして投票用封筒に選挙の種類別に投票用紙が封入されているか否かを点検します。点検は投票用封筒の覗き窓から行われます。またそのとき、投票用封筒の上に必要記載事項以外のことが記載されていないか否かを確認します。もし、その段階で、投票管理人が投票用封筒に瑕疵のあることに気がついた場合、直ちに投票用封筒はもとの代理投票用外封筒に戻され、投票代理人に返還されます。

特に問題がなければ、投票管理人は投票用封筒を受理し、投票代理人のいる前で、選挙の種類別に設けられている投票箱に一枚ずつ投票用紙入りの投票用封筒を投函します。投票管理人によって開披された代理投票用外封筒はひとまとめにして投票管理人からコミューン選挙管理委員会に送付され、コミューン選挙管理委員会において次の選挙まで保管されます。

 

  第4節 投票区投票所における投票受付時間

 投票区投票所における投票受付時間は、他の投票所の場合と異なって、選挙日当日、朝の8時から夜8時までの終日となっています(公職選挙法第10章第1条前段)。この日ばかりは昼休みもありません。但し、投票時間に余裕のある投票区投票所の場合、中央選挙庁は、投票時間の短縮を行うことができます(公職選挙法第10章第1条後段)。尚、投票締め切り時間が経過しても、尚且つ、選挙人が投票所内または投票待合室に残っている場合、すべての選挙人の投票が終わるまで、投票締め切り時間を延長しなければなりません。すべての選挙人の投票が終わった段階で、投票管理人が投票締め切りの宣言を行い、投票箱を閉鎖します。そしてその後で、投票管理人は他の投票所から届けられてきている投票用封筒の処理に移りますが、その前に、簡単に投票区投票所内における投票手続きについて、簡単に説明しておきたいと思います。

 


       第3章郵便局投票に移る    公職選挙法第10章参照