第3章 選挙人名簿

 第1節 総 説

 ここに選挙人名簿(röstlängd)とは、選挙に際し、選挙権を行使することのできる者、つまり、有権者の氏名が記載されている名簿のことをいいます。選挙人名簿はまた別名、有権者名簿とも呼ばれていますが、投票を行う際の投票人の身元確認を行うために作成されるものです。

これまでスウェーデンには、スウェーデン国内において投票を行う者ために、基本選挙人名簿(allmän röstlängd)、そしてスウェーデン国外の在外公館において投票を行う者のために特別選挙人名簿(särskild röstlängd)の二種類の選挙人名簿が作成されていましたが、今回の法改正で、その区別が廃止され、基本選挙人名簿だけになりました。そしてスウェーデン国外において投票を行おうとする者は、事前に中央選挙庁に書面をもってその申請を行わなければならないことになっていました(旧公職選挙法第4章第3条)が、その手続きが煩雑で、選挙人の投票意欲を減殺するということで、今回の法改正に際し、特別選挙人名簿の作成が廃止されることになりました。(prop.1996/97:70 s.137 f.f.)その代わりということもありませんが、新しい公職選挙法では、国内選挙用の選挙人名簿と更にヨーロッパ議会代表者選挙用選挙人名簿の二種類の選挙人名簿が作成されることになっていいます。

 

第2節 選挙人名簿の搭載者

 国会選挙用の選挙人名簿には、選挙日までに成年(満18歳)に達したすべてのスウェーデン国民および過去10年以内にスウェーデン国内において住民登録を行っている者が搭載され、県議会およびコミューン議会選挙用の選挙人名簿には、当該県議会行政区またはコミューン内に住民登録を行っているスウェーデン国民で、選挙日当日までに満18歳になる者が搭載されています(公職選挙法第7章第2条)。また地方議会選挙の場合、スウェーデン国民のほかに、ヨーロッパ連合に加盟している国の国民、およびアイスランド、ノルウェー国民で、選挙日までに満18歳に達している者は、その者がスウェーデン国内に住民登録を行っている場合、地方議会選挙用の選挙人名簿に登載されます。更にまたそれ以外の国の国籍をもっている者については、その者が選挙日までに3年以上スウェーデン国内に居住し、且つ住民登録を行っている場合、地方議会選挙人名簿に登載されることになっています(公職選挙法第7章第2条)。

ヨーロッパ議会代表者選挙の場合、選挙人名簿には、選挙日までに満18歳に達しているスウェーデン国民のほかに、ヨーロッパ連合に加盟している国の国民で、且つスウェーデン国内に住民登録を行っている者が搭載されることになっています。但し、その場合、スウェーデン国民以外の場合、選挙日の30日前までに所管税務署に選挙人名簿搭載搭載届けを行っていなければなりません(公職選挙法第7章第3条)。

選挙人名簿には、過去10年間、スウェーデン国内に住民登録を行っている者がすべて搭載されることになっていますが、住民登録を行っていなかった者については、選挙日30日前に選挙人名簿搭載届けを行った場合、その時点で選挙人名簿に登載され、以後、10年間、選挙人名簿に登載されることになっています(公職選挙法第7章第1条第2項)。尚、選挙人名簿に登載されていなかった者で、選挙に際し、投票が認められた場合、投票を行ったときに選挙人名簿に登載されたものとみなされることになっています(公職選挙法第7章第1条第3項)。

 

 第3節 選挙人名簿の作成

選挙人名簿は、各県の県税事務所において、選挙日30日前の通知簿台帳を基礎として各選挙区毎に作成される(公職選挙法第7章第4条)ことになっていますが、更にその選挙人名簿は各投票区毎に分割作成されることになっています。

尚、ここに通知簿台帳とは通知簿法(lag (1995:743) om aviseringsregister)の規定によって作成されている住民台帳のことで、行政機関からスウェーデン国内に住民登録を行っている者に対して諸通知を行う場合に使用されることになっています。

 

 第4節 選挙人名簿の訂正

 選挙人が選挙人名簿に登載されている自分の個人情報について、誤りのあることを発見した場合、選挙人は選挙日直前の月曜日まで書面によって誤謬訂正の申立を行うことができます。また、選挙人名簿も選挙人カードもすべてコンピュータ処理され、選挙人カードは直接コンピュータによって選挙人名簿から引き出すことができるようになったことから旧公職選挙法に規定されていた選挙人名簿の事前閲覧ということがなくなりました。尚、選挙日前、30日以内に生じた選挙人の個人情報の変動は原則として個人情報の訂正事由とされません(公職選挙法第7章第11条)。但し、ヨーロッパ議会代表者選挙の場合、スウェーデン国内の選挙人名簿に登載された者がスウェーデン以外の場所で既に投票を行っている場合、税務署は直ちに選挙人名簿の訂正を行い、その旨を投票区関係コミューンに通知しなければならないことになっています(公職選挙法第7章第12条)。


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