第1章 投票用紙

 

 第1節 総説

 投票用紙(valsedlar)とは、選挙人が選挙権を行使する場合、自分が支持する政党または支持する候補者を最終的に表白するために用いられる用紙のことですが、選挙人カード、選挙人名簿、選挙用封筒とならんで、選挙に不可欠な小道具の一つです。スウェーデン公職選挙法第6章は、投票用紙と題して、国会選挙、県議会選挙そしてコミューン議会選挙の際に使用される投票用紙紙(valsedlar)の規格、投票用紙の注文方法に特別の規定を設けています。

 

 第2節 投票用紙の規格

 投票用紙は、国会、県議会、コミューン議会とそれぞれの選挙毎に別々の用紙が用いられることになっていますが、投票用紙の色以外は、同一紙質、同一規格の用紙が用いられることになっています。投票用紙の色は、国会選挙が黄色、県議会選挙が水色、そしてコミューン議会選挙とヨーロッパ議会代表者選挙の場合には白色の投票用紙が用いられることになっています(公選法第第6章第2条第1項)。

尚、国会選挙用の投票用紙と県議会選挙用の投票用紙には、投票用封筒に封入されている投票用紙の種類を識別するため、投票用紙の左右両辺、真ん中に、国会選挙用投票用紙には二本、県議会選挙用の投票用紙には一本の黒線が施されています。

今度の選挙に使用される投票用紙の見本です。 

 第3節 投票用紙の準備

 すべて投票用紙は、各選挙に参加する政党からの注文によって、中央選挙庁によって準備されます(公職選挙法第6章第1条)。

 スウェーデンの選挙には、名簿式投票用紙と白地式投票用紙の二つの種類の投票用紙が用いられています。名簿式投票用紙とは、選挙に参加する各政党の候補者名が投票用紙に推薦順位に従って印刷されている投票用紙のことですが、白地式投票用紙とは、ただ、単に政党名または選挙の種類だけが記載されている投票用紙のことを言います。尚、今度の選挙から、特別指名投票を行うために、名簿式投票用紙には、候補者の氏名のほかに、候補者の氏名の前に四角の枡が置かれることになっています。

 

 第4節 投票用紙の注文

投票用紙は、各政党からの注文によって、中央選挙庁によって、準備されますが、選挙に参加する政党は、自分の欲するだけの投票用紙を注文することができます(公職選挙法第6章第7条)。但し、直近、過去二回の国会選挙のうち、いずれかの国会選挙において、スウェーデン全国における総投票数の1パーセント以上の得票数を取得している政党については、各選挙区の有権者総数の3倍まで、無料で投票用紙の配布を受けることができます(公職選挙法第6章第8条)。しかし、前回の選挙においてその得票数が1パーセントに及ばなかった政党であっても、新しい選挙において、1パーセント以上の得票数が見込まれる政党の場合、同じような投票用紙の無償交付規定が適用されることになっています(公職選挙法第6章第8条後段)。投票用紙の注文は政党代表者によって行われなければならないことになっています(公職選挙法第6章第7条第2項)。

地方選挙の場合には、選挙に参加している政党が既に地方議会に議席を有している場合、または選挙において議席を獲得する見込みのある場合、当該選挙区における有権者総数の3倍まで無償で投票用紙の配布を受けることが認められています(公職選挙法第6章第9条)。ヨーロッパ議会代表者選挙の場合には、直近、過去二回のヨーロッパ議会代表者選挙において、スウェーデン全国における総投票数の1パーセントを獲得している政党は、スウェーデン全国における有権者総数の3倍まで、無償で投票用紙の配布を受けることができるようになっています(公職選挙法第6章第10条)。それ以外の場合には、投票用紙の注文者は前金で投票用紙代を納付しなければなりません(公選法第6章第4条第2項)。但し、前金をもって投票用紙の注文を行った政党が、当該選挙において、1パーセント条項をクリアした場合、もしくはその政党が参加した選挙において、議席を獲得した場合、その前払い代金は返却されることになっている。尚、前払い代金の返却は、政党に対して行われることになっています(公選法第6章第6条)。

 投票用紙の注文は、中央選挙庁によって指定されている注文締め切り日までに行わなければならないことになっていますが、投票用紙の注文締め切り日は、少なくとも投票用紙の配布が、選挙当日の4日前に配布が可能な日時までとされています(公職選挙法第6章第15条)。但し、中央選挙庁は、特別の事情がある場合、その日時を延長することができます。投票用紙の注文が、注文締め切り日以降に到達した場合、その投票用紙の配布が、選挙日までに配布することが可能で、且つ既に行われている投票用紙の配布に支障をきたさない場合、その注文に受けることができます(公選法第6章第8条)。遅れた投票用紙の注文に応ずるか否かは、中央選挙庁の判断によって決定されます。尚、中央選挙管理委員会の行った決定に対して異議ある場合、選挙委員会に対して異議の申し立てを行うことができます(公選法第6章第8条)。

投票用紙の準備枚数は、選挙の行われる前年の11月1日現在の有権者総数を基礎にして計算されます(公選法第6章第5条第3項)。


第2章 選挙用封筒に進む     公職選挙法第6章参照