第1章 政党名登録

 第1節 政党名登録とその要件

スウェーデンの政治は完全な政党政治であります。したがって、選挙も政党単位で争われることになっています。そのため、選挙に立候補する者は必ずどこかの政党に所属していなければならなりません。スウェーデンではわが国のような無所属候補ということは認められていません。そういった意味ではスウェーデンの選挙は、まず政党ありきということであります。そこでスウェーデンでは、選挙に立候補しようと思っている者がどこか既存の政党に所属していない場合には、まず自分で政党をつくってそこから立候補しなければなりません。そしてまた更に、政党をつくって選挙に参加しようとする場合には、まず国会または地方選挙の場合とを問わず、政党名登録と政党によって推薦している立候補者を中央選管に届け出ておかなければなりません(公職選挙法第5章第1条)。スウェーデンでは、完全に選挙が公営になっていますので、中央選管に政党名登録をしておきませんと政党としての保護を受けることができません。たとえば、政党名登録を行っておきませんと投票に必要な投票用紙の配布を受けることができないからです。

(参照。スウェーデンの国会政党名と各政党のシンボルマーク)

 政党名登録が選挙の際に行われる場合、登録政党は、選挙の行われる年の2月末日までに中央選管に対して政党名登録を行っていなければなりません(公職選挙法第5章第3条)。但し、選挙以外の目的で政党名登録が行われる場合、政党は、投票の行われる1週間前までに政党名登録を行えばよいことになっています(公職選挙法第5章第5条)。ここに選挙以外の目的とは、国民投票または住民投票の行われる場合のことです。

 政党名登録は、書面によって行われなければなりません(公職選挙法第5章第4条)が、その場合、登録される政党名は文字で登録しなければならないことになっています。ロゴ等による登録は認められないことになっています(公職選挙法第5章第6条第1項)。また政党名登録を行おうとする政党は特定の政治団体の下部組織であってはならないことになっています(公職選挙法第5章第6条)。尚、国会選挙を目的として政党名登録を行おうとする場合、政党名登録を行おうとする政党に既存の国会議員がいない場合、スウェーデン全国の有権者のうち、最低限、1,500人の賛同者の支持を得ていることが必要です。県議会、コミューン議会選挙を目的として政党名登録を行おうとする場合には、県議会の選挙の場合には、全県区の有権者総数のうち100人以上、コミューン議会選挙の場合には、コミューン議会選挙内に居住する有権者のうち、最低、50人の有権者の支持があることが必要とされています。ヨーロッパ議会代表者選挙の場合には、未だヨーロッパ議会に党代表者をもっていない場合、スウェーデン全国の総有権者のうち、1,500人の賛同者を得ていなければなりません(公職選挙法第5章第6条)。政党登録を行う場合、登録政党に上記支持者がいるか否かを確認するため、登録政党の支持者から提出されている賛同書を添付しなければならないことになっています。尚、賛同書には支持者の氏名、個人番号およびコミューンの名称を記載しておかなければなりません(公職選挙法第5章第7条)。

 政党名登録に使用される政党名は、他の政党と同一名称でないこと、または他の政党と紛れやすい名称でないことが必要です。政党名登録の場合、既に他の政党が使用している政党名は使用できませんが、しかし、その名称が5年前に取り消されている場合、または政党名登録を行っている政党の許可を得た場合には既存の政党名であっても登録することができます(公職選挙法第5章第6条)。

 政党名登録が国会選挙を目的として行われている場合、その登録は国会選挙と同日に行われる地方選挙にも適用されます。また県議会選挙のために政党名登録が行われますと、県議会選挙と同時に行われるコミューン選挙にもその登録を準用されます。コミューン議会選挙のために政党名登録が行われた場合、その登録はコミューン議会選挙にのみ有効となります。またヨーロッパ議会代表者選挙のためにのみ政党名登録が行われた場合、その登録はヨーロッパ議会代表者選挙にのみ有効となります(公職選挙法第5章第8条)。

 

 第2節 政党代表者届

 政党名登録を行う政党は、政党名登録と同時に政党代表者の届け出を行わなければならないことになっていますが、政党代表者の届け出は政党名登録の公示があってから1ヶ月以内に中央選管に届け出ればよいことになっています(公職選挙法第5章第10条第1項)。政党代表者届けを行う場合、政党代表者となっている者の承諾書を添付しなければなりません(公職選挙法第5章第10条第2項)。

 

 第3節 政党名登録の取消

 中央選管に登録されている政党名は次の場合、抹消、削除されます(公職選挙法第5章第11条)。

1.登録政党から政党名登録の取消申請があったとき

2.政党が国会、県議会、コミューン議会の通常選挙の際に、2回以上続けて候補者の届け出を行わなかったとき

3.政党が政党名登録を行ってから1ヶ月以内に政党代表者の届け出を行わなかったとき

 政党名の登録または政党名登録の取消、削除が行われたとき、中央選管はその旨を官報に掲載しなければならない(公職選挙法第5章第12条)。


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