第3章 選挙人資格と被選挙人資格

 

 第1節 総説

 選挙には選ぶ人と選ばれる人がいます。私たちは選ぶ側の人のことを選挙人と呼び、選ばれる側の人を被選挙人と呼んでいます。私たちはまた、選ぶ側の者のことを、選挙権をもっている者という意味で有権者と呼ぶ場合もありますが、選ぶ側についても、選ばれる側についても一定の資格があることが求められています。

 スウェーデン公職選挙法は、第1章に選ぶ者と選ばれる者と題して、選挙人と被選挙人のそれぞれについてその資格条件を定めていますが、しかし、特にわが国の場合のような年齢的な差別は設けられていません。但し、ヨーロッパ議会代表者選挙の場合、不適格条項が定められています(第1章第8条)。また、スウェーデンでは地方議会選挙の場合、外国人に対しても選挙権を認められていますので、国会選挙の場合と異なる規定が設けられています。以下、国会選挙、地方議会選挙およびヨーロッパ議会代表者選挙の場合にわけて選挙人資格と被選挙人資格について説明をします。

 

 第2節 国会選挙の場合

 国会選挙(val till riksdagen)の場合、選挙日当日、選挙人がスウェーデン国籍を有し、且つ18歳になっていることが必要です。また被選挙人の場合も同様です。かってはスウェーデンにおいても、現在のわが国の場合と同様、選ぶ側と選ばれる側に年齢的な差別が設けらていましたが、1975年の選挙法改正のときにその区別が廃止されました。また1996年の親子法改正によって禁治産宣告制度が廃止され、未成年者(満18歳未満の者)の場合を除いて、無能力者という概念が法律の上から排除されたため、成年に達している者は、スウェーデン人であれば誰でも国会選挙に参加することができます。またスウェーデンの公職選挙法の規定には選挙違反に関する規定がありませんので、選挙違反による公民権停止ということもありません。

 

 第3節 地方議会選挙の場合

 ここに地方議会選挙とは県議会選挙(val till landstingsfullmäktige)およびコミューン議会選挙(val till komunfullmäktige)のことをいいます。

 地方議会選挙の場合、特にスウェーデン国民であることは必要とされていません。但し、スウェーデン国民以外の国民で、ヨーロッパ連合に加盟している国の国民、およびノルウェー、アイスランド国民の場合、スウェーデンの地方議会選挙の投票に参加しようとする場合、選挙に参加しようとする県またはコミューン内に住民登録をしていることが必要です。尚、それ以外の外国人の場合、その者自分の居住している県またはコミューン議会選挙に参加しようとする場合、その県またはコミューン内に2年以上居住し、且つ住民登録を行っていることが必要です(公職選挙法第1章第3条第2項、第3項)。地方議会選挙の場合の選挙人資格については、地方自治法(kommunallagen (1991:900)第4章第2条から第4条に詳細な規定が設けられています。

  

 第4節 ヨーロッパ議会代表者選挙の場合

 ヨーロッパ議会代表者選挙の場合、国会選挙について選挙権をもっているスウェーデン国民なら誰もヨーロッパ議会代表者選挙に参加することができます。但し、ヨーロッパ連合の公的機関に勤務している者は、そのポストによって立候補権が制限されています(公職選挙法第1章第8条)。またスウェーデン国民以外の者でも、ヨーロッパ連合に加盟している国の国民であれば、スウェーデン国内において投票を行うことができます。更にまたヨーロッパ連合に加盟している国の国民はスウェーデン国内においてヨーロッパ議会代表者選挙に立候補することができます。尚、ヨーロパ議会代表者の被選挙人資格については別の機会に改めて取り上げてみたいと思っています。

 公職選挙法第1章参照


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