第11章 特別代理人と管理後見人

(11 Kap. Om god man och förvaltare)

 

特別代理人(Om god man)

 第1条 病気、その他の事由によって後見人がその職務を行うことができない場合、または第10章第17条の規定によって後見人がその職務から排除されている場合、後見監督人は後見人に代わって未成年者の財産管理を行うため、特別代理人を選任しなければならない。 

 第10章第17条の規定により、裁判所が後見人の職務執行の停止を命じた場合、裁判所は、第1項の規定により、特別代理人を選任しなければならない。(1994:1433)

 

 第2条 後見人、または後見人の配偶者もしくは内縁の配偶者が成年者と共に共同相続人となった場合、後見監督人は遺産分割に際して、未成年者の権利を保護するため特別代理人を選任しなければならない。財産分割、遺産分割または相続財産の共同管理契約を締結する場合、また同様である。

 未成年後見、特別代理後見または管理後見に付されている者が法律行為を行う場合、もしくは訴訟当事者となるときその補助者を必要とする場合、第12章第8条の規定により後見人、特別代理人また管理後見人が本人を代理することができない場合、後見監督人は特別代理人を選任しなければならない。既に訴訟が提起されている場合には、裁判所が特別代理人を選任する。

 前2項の規定に定められている場合を除いて、被後見人の利益と法定代理人またはその配偶者もしくは内縁配偶者の利益が相反する場合、後見監督人は特別代理人を選任しなければならない。その場合、後見監督人は未成年者の監護者、後見人、特別代理人または管理後見人もしくはそのような資格において本人を代理している者からそのことが請求された場合、または相当と認められる場合、特別代理人を選任しなければならない。(1994:1433)

 

 第3条 次に掲げる場合、後見監督人は特別代理人を選任しなければならない。

1.被相続人が死亡したとき、相続人となる者の住所が不明の場合または遠隔地にあって遺産に対する権利を行使、もしくは自己の相続分を管理することができない場合

2.被相続人が死亡したとき、相続基金財団または知れたる相続人と同一順位において、もしくはその者に優先して相続する者が不明の場合、または死者に相続人がいることが判明している場合で相続人の氏名、住所が不明の場合、

  相続人の権利を保護し相続分を管理する必要がある場合

3.住所不明または遠隔地にいる受遺者のためにもしくは知れざる受遺者のためにその権利を保護する必要がある場合

4.不在者の権利を確保しまたは不在者の財産管理を行うため必要とみなされる場合

5.遺言、その他の書面によって将来の財産の帰属者が指定され、または最初に所有者となるべき者が指定されているとき、将来の所有者の権利を確保し、または将来の所有者のために財産管理が必要とされる場合

6.財産が特別の規定によって、本章に規定されている特別代理人の保護、管理におかれている場合

 後見監督人は届け出の後またはその他の事由から、その必要性が生じた場合、第1項の規定によって特別代理人を選任する。相続財産に対して権利をもっている者のために特別代理人の選任が必要とされる場合、その財産を占有管理している者はその旨を後見監督人に届け出なければならない。

 本条の規定によって選任された特別代理人が、本条の規定にしたがって法律行為を行った場合、管理の対象とみなされた財産が、特別代理人の代理権の対象となっていない者に帰属している場合であっても、その法律行為は、有効なものとみなされる。(1994:1433)

 

 第3a条 婚姻法第18章第1条第1項および第20章第2条第1項に規定されている場合、その特別代理人は、裁判所によって選任される。(1994:1433)

 

 第4条 ある者が、病気、精神的障害、健康状態の衰え、その他、それに類する事由によって自分の権利を行使しまたは自分の財産を管理し、その他日常生活を行うために他人の介助を必要とする場合、裁判所においてその必要あるとみなされたとき、裁判所はその者のために特別代理人を設置しなければならない。但し、特別代理人の設置決定は本人の健康状態からみてそのことができない場合を除いて、本人の同意なしにこれを行うことができない。

 前項の規定によって裁判所がその決定を行った場合、裁判所は、その職務を行わせるため、特別代理人を選任しなければならない。但し、それ以外の場合に前項の規定に基づいて特別代理人が設置されるとき、特別代理人の選任は後見監督人によって行われる。(1994:1433)

 

 第5条 特別代理人が代理権の範囲を超えて法律行為を行った場合、その法律行為は本人に対してその効力を生じない。また特別代理人が代理権の範囲内における法律行為を本人の同意を得ないで行った場合、本人の精神的状態またはその他の事情によって本人の意思を聴取することができなかった場合を除いて、その法律行為は本人に対して拘束力を生じない。

 特別代理人がその代理権の範囲内において慣習的に日常家事とみなされている法律行為を行ったとき、その法律行為に先立って本人から取引の相手方に対して別段の意思表示が行われていなかった場合、その法律行為は最初から本人の同意があったものとみなされる。(1988:1251)

 

 第6条 特別代理人によって行われた法律行為が第5条の規定によって本人に対して拘束力を生じない場合、特別代理人はそのことによって善意の第三者が被った損害を賠償しなければならない。但し、特別代理人において知ること能ざる場合で、且つその相手方においても特別代理人の善意を否定することができない場合、特別代理人は損害賠償責任を免れることができる。(1988:1251)

 

管理後見人(Om förvaltare)

 第7条 ある者が第4条に規定されている状況にあって、自分の身体、財産を保護、管理することができない場合、裁判所はその者に対して管理後見人を設置しなければならない。但し、特別代理人の設置をもって足りる場合、またはその他軽度の介助をもって足りる場合、管理後見人を設置することができない。

 裁判所は、管理後見人の職務を管理後見に付される者の必要に応じて定めその職務の範囲を特定の財産、特定の業務もしくは一定額を超える財産に限定することができる。

 裁判所は、管理後見人の職務範囲の決定を後見監督人に委ねることができる。

 裁判所が第1項の規定によって決定を行う場合、裁判所は同時にその職務を行う管理後見人を選任しなければならない。それ以外の場合、管理後見人が第1項の規定によって選任される場合、その選任は後見監督人によって行われる。(1994:1433)

 

 第8条 第7条の規定によって管理後見に付されている場合であっても、被後見人は次の各号に掲げる事項について単独で法律行為を行うことができる。

   1.労働契約を締結すること

   2.管理後見に付された後、自己の労働によって取得した財産またはその財産より生じた果実、もしくはその財産に代わるべき財産を処分すること

   3.管理後見に付された後、管理後見人の管理に属さないことを条件として贈与、遺言または保険金受取人指定約款もしくは私的年金預託法の規定によって本人が取得し     た財産を処分すること

 但し、特別の理由がある場合、裁判所は管理後見人に対して第1項に規定されていることと異なることを命ずることができる。(1994:1433)

 

 第9条 管理後見人はその権限の範囲内において、単独で管理後見に付されている者の財産を管理し、その職務に属するすべての法律行為において本人を代表する。

 管理後見に付されている者は他人のために法律行為を行うことがきない。(1988:1251)

 

 第10条 管理後見に付されている者は管理後見人の同意を得て、管理後見人の職務権限に属する行為を行うことができる。管理後見に付されている者が管理後見人の同意を得ないでなしたる契約の効力については未成年者に関する第9章第6条、第7条の規定が準用される。(1988:1251)

 

 第11条 管理後見人がその権限を超えて行った法律行為は本人に対してその効力を生じない。その法律行為によって善意の第三者が損害を被った場合、管理後見人はその損害を賠償しなければならない。(1988:1251)

  

 共通規定

 第12条 特別代理人または管理後見人には学識経験のある者が選任されなければならない。相続財産に対する未成年者または不在者の権利を保護するため、特別代理人が選任される場合で、且つ被相続人が特別代理人を指定している場合、特別の事情のない限り、その者を特別代理人に選任しなければならない。

 未成年者または管理後見に付されている者は特別代理人または管理後見人になることができない。(1988:1251)

 

 第13条 周囲の事情からみてそのことが必要と認められる場合、一人の人に複数の特別代理人または管理後見人を選任することができる。(1994:1433)

 

 第14条 複数の特別代理人または管理後見人が第三者に対して損害を与えた場合、特別代理人または管理後見人は連帯してその損害を賠償しなければならない。その場合、損害賠償責任は最終的にそれぞれの損害に対する寄与分に応じて分割される。損害賠償責任を負担すべき者がその責任を負担する資力を欠いている場合、それ以外の損害賠償責任を負担すべき者がそれぞれその損害の寄与分に応じてその損害を負担しなければならない。(1994:1433)

 

 第15条 第1条乃至第4条に規定されている特別代理人または管理後見人の選任は、後見人、本人が16歳に達している場合には、本人、本人の配偶者、内縁の配偶者および直近親族の請求にもとづいて行われる。第4条に規定されている特別代理人または管理後見人の設置請求は、上記に掲げられた者以外に後見監督人もまたこれを行うことができる。

 管理後見人の設置申請は、第4条に規定されている特別代理人によっても行われる。

 特別の事由ある場合、裁判所は第4条に規定されている特別代理人および管理後見人の設置に関して、職権をもってその問題を取り上げることができる。後見監督人は特別代理人または管理後見人の選任に関して、同様の義務を有する。(1994:1433)

 

 第16条 16歳以上の者に対する特別代理人または管理後見人の選任問題に関しては、裁判所または後見監督人は可能な限り、本人に対して意見を述べる機会を与えなければならない。

 第4条の規定によって設置される特別代理人または管理後見人の設置に関し、そのことが不要とみなされない限り裁判所は被後見人の配偶者、内縁配偶者、子、後見監督人および収容施設から意見を求めなければならない。またその必要がある場合、親族、関係コミューンの社会福祉委員会その他の関係機関から意見を求めなければならない。特別代理人または管理後見人の設置申請の対象となっている者については、その者に対して精神的苦痛を与えることなしそのことが可能な場合で、且つその者がそのことを完全に理解できる場合、口頭で本人の意見を聞かなければならない。但し、裁判所は管理後見に付される者が、自ら特別代理人または管理後見人の設置申請を行っている場合もしくは本人が特別代理人または管理後見人の選任に同意している場合、またはその他特別の事由ある場合、本人からの意見聴取を取りやめることができる。

 第2項の規定は第4条に規定されている特別代理人または管理後見人の選任に関する問題が後見監督人によって取り上げられた場合にも適用される。

 第2項に規定されている行政機関または収容施設は事件の決定に対して重要な意味をもっている情報を裁判所に提出しなければならない。(1994:1433)

 

 第17条 裁判所は管理後見人の設置に先立って、医師の診断書または本人の健康状態を証明する書面を取り寄せなければならない。本人の意思に反して第4条の規定によって特別代理人が設置される場合また同様である。

 第1項に規定する調査に関する細則は政府または政府はの指定する行政機関によってこれを定める。(1994:1433)

 

 第18条 第4条に規定する特別代理人または管理後見人の設置問題に関し、直ちに裁判所において最終決定を行うことができない場合、そのことによって本人の身体または財産に対して危険をもたらすおそれあるとき、最終決定が行われるまでの間、裁判所は暫定的に特別代理人または管理後見人の設置決定を行うことができる。決定が未成年者に対してなされた場合、その決定は未成年者が18歳に達したときからその効力を生ずる。

 特別代理人または管理後見人の選任に関してその最終決定が直ちに行われない場合、後見監督人は第1項に規定されている理由から緊急を要する場合、その最終決定が行われるまでの間、特別代理人または管理後見人を選任することができる。

 第1項、または第2項の規定による決定が行われる場合、決定に先立って、特に時間的余裕がない場合、またはそのことによって本人に対して精神的苦痛を与えるおそれある場合を除いて管理後見に付される者に対して、自己の意見を表明する機会を与えられなければならない。

 第1項の規定に基づいて行われた決定は何時でも裁判所によって変更することができる。後見監督人は何時でも第2項の規定によって行った決定を変更することができる。(1994:1433)

 

 第19条 特別代理人または管理後見人の必要がなくなった場合、特別代理後見人または管理後見人は廃止される。第4条の規定によって設置された特別代理人または管理後見人の廃止は、裁判所によって決定される。その他の場合においては、後見監督人によって行われる。特別代理人が第3条第1号乃至第5号の規定によって選任されている場合、特別代理人の選任対象となっている者からその請求が行われたとき、後見監督人は直ちに特別代理人を解任しなければならない。特別代理人または管理後見人がその任務を終了したとき、直ちに後見監督人にその旨を報告しなければならない。

 特別代理人または管理後見人は自らその職を辞任することができる。解任の決定は後見監督人によって行われる。特別代理人または管理後見人を継続的に必要とする場合、特別代理人または管理後見人は新しい特別代理人または管理後見人が選任されるまでの間、その職の留まっていなければならない。(1994:1433)

 

 第20条 特別代理人または管理後見人に職務上の不正、怠慢、経済的破綻、その他、特別代理人または管理後見人として不適任とみなされる事由が生じた場合、その特別代理人または管理後見人を解任することができる。解任決定は後見監督人によって行われる。

 前項の規定によって特別代理人または管理後見人を解任すべきか事由が生じた場合、直ちにその解任決定を行うことができないとき、後見監督人はその決定の遅延によって特別代理または管理後見の対象となっている者に損害が生ずるおそれある場合、その問題が解決されるまでの間、特別代理人または管理後見人に対して職務執行の停止を命ずることができる。(1994:1433)

 

 第21条 特別代理人または管理後見人の解任、廃止請求は、第15条第1項に規定されている者または特別代理人または管理後見人によって行われる。

 裁判所または後見監督人は職権をもって前項に関する問題および所管事項に関する問題を取り上げることができる。

 裁判所または後見監督人は可能な限り、本条に関する問題の決定に際し本人に対して意見を述べる機会を与えなければならない。(1994:1433)

 

 第22条 特別代理人または管理後見人が死亡したとき、その者の財産を管理している者は、遅滞なくその旨を特別代理人または管理後見人を監督している後見監督人に対して報告しなければならない。(1994:1433)

 

 第23条 裁判所は第15条第1項に規定されている者または特別代理人もしくは管理後見人からの請求があった場合、第4条の規定によって選任されている特別代理人または管理後見人の職務権限の範囲を審理、調整しなければならない。裁判所は職権をもって特別代理人または管理後見人の職務の範囲を審理することができる。

 前項の規定によって裁判所が決定を行う場合、裁判所はその決定に先立って、特別代理人、管理後見人、後見監督人および本人の意見を聞かなければならない。

 直ちに最終決定を行うことができない場合で、且つ決定の遅延によって本人に損害の生ずるおそれあるとき、裁判所は最終決定が行われるまでの間、暫定決定を行なわなければならない。暫定決定については第18条第3項および第4項の規定が適用される。

 第1条乃至第3条に規定されている特別代理人については後見監督人がその職務範囲を変更すべきか否かを審理する。第1項乃至第3項の規定は後見監督人によって審理が行われる場合にも適用される。(1994:1433)

 

 第24条 ある者が裁判所または後見監督人によって特別代理人または管理後見人に選任もしくは解任される場合、選任または解任に先立って、選任または解任される特別代理人または管理後見人に対して意見を述べる機会を与えられなければならない。第20条第2項に規定されている事件の場合、時間的余裕がある場合に限って特別代理人または管理後見人に対して意見を述べる機会を与えることができる。(1994:1433)

 

 第25条 第4条の規定によって設置される特別代理人または管理後見人に関する管轄裁判所は、被後見人の住所地を管轄する地方裁判所とする。被後見人となる者がスウェーデン国内に住所を有しない場合、管轄裁判所はストックホルム地方裁判所とする。

 第1条、第2条および第4条に規定されている特別代理人または管理後見人に関する監督機関は被後見人が住所を有するコミューンの後見監督人とする。被後見人がスウェーデン国内に住所を有しない場合、後見監督機関はストックホルムコミューンの後見監督人とする。(1994:1433)

 

 第26条 相続財産の管理に関し、第3条の規定による特別代理人の選任の問題が生じた場合、その問題は被相続人が住所を有していたコミューンの後見監督人によって処理され、被相続人がスウェーデン国内に住所を有していなかった場合には、ストックホルムコミューンの後見監督人によって処理される。第3条の規定によって特別代理人が選任される場合、その事務は特別代理人によって管理され、その財産の存在しているコミューンの後見監督人または特別代理人選任の必要性をもつコミューンの後見監督人に帰属する。

 第3条に規定されている特別代理人に関するその他の事務については特別代理人を選任した後見監督人帰属する。(1994:1433)

 

 第27条 管理後見人の設置、廃止に関する決定が行われた場合、裁判所は直ちに、官報において告示しなければならない。第23条に規定されている管理後見人の職務範囲に変更が行われた場合、また同様である。(1994:1433)

 

 

第12章 「後見人、特別代理人及び管理後見人の職務に関する一般規定」に移る。                  目次の戻る