第7章 夫婦の財産

(7 Kap. Makars egendom)

 

 第1条 夫婦の財産は特有財産(enskild egendom)と婚姻財産(giftorättsgods)に区別される。

 

 第2条 本法において、特有財産とは、次ぎに掲げる財産のことをいう。

  1.夫婦財産契約(äktenskapsförord)によって特有財産とされている財産

  2.夫婦の一方が配偶者以外の者から、受贈者の特有財産とすることを条件として、贈与を受けた財産

  3.夫婦の一方が配偶者以外の者から、受遺者の特有財産とすることを条件として、遺言によって贈与を受けた財産

  4.夫婦の一方が配偶者以外の者から、相続によって取得した財産で、且つ被相続人の遺言 によって相続人の特有財産とすることが指定されている財産

  5.夫婦の一方が配偶者以外の者によって締結された生命保険、損害賠償保険、疾病保険、または「個人年金預金法」(註3)に規定されている年金預金の受取人指定約款等によって、配偶者に帰属した財産で、且つ受取人の特有財産とすることが条件とされている財産

  6.本条第1号乃至第5号の規定に定められている財産に代わるべき財産で、その財産を特有財産としている法律行為において、別段の定めがなされていない場合の財産

 特有財産から生じた果実は、第1項に定められている書面において特別の定めがない限り、婚姻財産とみなされる。(1993:310)

 

 第3条 夫婦または婚約当事者は、夫婦財産契約(äktenskapsforord)によって、それぞれの財産を、それぞれの特有財産とすることができる。夫婦は、新しい夫婦財産契約によって、それぞれの特有財産を、それぞれの婚姻財産とすることができる。

 夫婦財産契約は、契約当事者双方の署名ある書面によって、これを行わなければならない。以上のことは、配偶者の一方が未成年者の場合、または夫婦財産契約が親子法第11章第7条の規定されている管理後見の対象となっている財産を含んでいる場合においても適用される。但し、その場合、後見人または管理後見人からの書面による同意を得なければならない。

 夫婦財産契約はこれを裁判所に登記しなければならない。婚約当事者の間で締結された夫婦財産契約は、婚姻成立の日から、1ケ月以内にその契約を裁判所に登記した場合に限り、婚姻成立の日からその効力を生ずる。それ以外の場合、夫婦財産契約は登記の日からその効力を生ずる。(1988:1254)

 

 第4条 本法において夫婦の共用住宅(gemennsamma bostad)とは、次に掲げる財産のことをいう。

   1.夫婦の双方またはそのいずれか一方が所有権またはトムトレット(tomträtt)(註1)に基づいて取得している土地で、その土地の上に夫婦の共用住居が建てられている場合、またはその土地が主として夫婦の共用住居を建てる目的をもって取得されている場合の土地

   2.利用権に基づいて夫婦の双方またはそのいずれか一方が自己の建物を建てる目的で所有している土地で、且つその土地に夫婦の共用住居が建てられている場合、またはその土地が主としてそのような建物を建てる目的をもって保有されている場合

   3.夫婦の双方またはそのいずれか一方が借家権、ブースターヅレットbostads rätt)(註2)、またはそれに類似する権利をもって借り受けている建物または建物の一部で、且つその建物または建物の一部が夫婦の共用住居としてもしくは主としてその目的のために保有されている場合

   4.夫婦の双方またはそのいずれか一方が、将来、ブースターヅレットに関する法律(bosta drättslagen 1991:614)第5章に規定されている予約に基づいて、ブースターヅレット付きで取得する権利をもっている建物または建物の一部で、且つその権利が契約締結の時に夫婦の共同住居にすることまたは主としてその目的のために占有されている場合

 本法において夫婦の共用家財(gemensamma bohag)とは、家具、家庭用機器、その他、夫婦が共同利用を目的として取得した家財道具のことをいう。但し、専ら、夫婦いずれか一方の個人的な用に供されている家財道具は共用家財の中に含まれないものとする。

 主として、夫婦いずれか一方の余暇目的に利用されている財産は、夫婦の共用住居または共用家財の中に含まれないものとする。(1991年法律第618号により改正)。

 

 第5条 配偶者の一方が次に掲げる行為を行う場合、他の一方の同意を得なければならない。

   1.夫婦の共用住居となっている不動産を譲渡、担保、賃貸、その他の利用権付きで他人に提供する場合   

   2.夫婦の共用住居となっているその他の財産を譲渡、担保、賃貸、その他、利用権付きで他人に提供する場合

   3.夫婦の共用家財を譲渡、担保に供する場合

 本章第2条第1項第2号乃至第4号の規定によって、配偶者の一方の特有財産となっている共用住居または共用家財については、本条第1項の規定は適用されない。

 財産が夫婦の共用住居となっていない場合であっても、当該財産が配偶者の一方の婚姻財産となっている場合、その財産を所有する配偶者は、他の一方の同意なしに、その財産を他人に譲渡し、または担保に供しもしくはその他の利用権付きで他人に提供してはならない。但し、離婚訴訟が裁判所に係属している場合で、且つその財産が離婚の申し立てが行われた後に取得された財産であるときにはその限りでない。

 配偶者の一方が土地の処分を行う場合、他の一方からの同意は書面によってこれを行わなければならない。

 土地及びその権利に関する規定は、トムトレットについても適用される。

 

 第6条 第5条の規定は、死亡した配偶者の相続法人(dödsboet)が前条に定められている処分行為を行う場合にも適用される。

 

 第7条 同意をなすべき配偶者が必要な同意を与えることができない場合、または相当の期間内に同意を与えることができない場合、第5条、第6条に定める同意を要しない。離婚によって、既に財産分与が行なわれている場合には第5条に定められている同意を要しない。

 

 第8条 財産処分を欲する者が、第5条または第6条の規定に定められている同意を得ることができない場合、裁判所の許可を得て財産処分を行うことができる。

 

 第9条 他の一方からの同意なしに配偶者の一方が、または生存配偶者の同意なしに死亡した配偶者の相続法人が財産処分をなったためもしくは財産の利用権を第三者に譲渡したため生存配偶者の利用権が侵害された場合、裁判所は、他の一方からの申し立てによって、その処分行為を取り消し、同時に処分によって取得した財産の返還を命ずることができる。配偶者の一方が他の一方から、または相続法人が生存配偶者からの必要な同意なしに夫婦の共用家財を担保に供した場合、また同じ。但し、そのことをもって善意の第三者に対して対抗することができない。

 前項の規定に基づいて取り消しの訴えを提起しようとする場合、配偶者の他の一方が処分行為の行われたことを知ってから3ケ月以内にその訴えを提起しなければならない。但し、家財道具の場合、その期間は引渡しの行なわれたことを知ってから3ケ月以内とする。不動産またはトムトレットについては、既に登記が行なわれている場合、取り消しの訴えを提起することができない。

 建物の明け渡しの訴えが提起された場合、裁判所は、相当の期間を定めて建物の明け渡しを命ずることができる。

以  上

 

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