第11章 財産分与分と具体的取り分

(Andelar och lotter)

 

 財産分与分(Makarnas andelar i boet)

 条 財産分与(bodelning)に際して、まず、最初に、夫婦の財産における夫婦の財産分与分(makarnas andel i boet)計算される。

 

 第2条 夫婦の財産分与分の計算に際して、それぞれの婚姻財産の中から、離婚の訴えが提起されたとき、または第9章第1条第2項の規定によって婚姻中における財産分与の届出がなされたとき、もしくは配偶者が死亡したときに、夫婦のそれぞれが負担している債務が控除される。

 配偶者の一方が、自己の特有財産をもって債務の優先弁済の対象としている場合で、且つその特有財産をもって債務を完済することができない場合、その不足分は婚姻財産から控除される。債務配偶者が、自己の特有財産の保全または改善のために負担した債務、もしくはその他の方法によって特有財産のために負担したる債務についてもまた同じ。

 前項に定められている特有財産に関する規定は、第10章第3条の規定によって財産分与の対象とならない権利についても適用される。

 

 第3条 債務控除が行なわれた後、夫婦の残存婚姻財産が合算され、合算された財産の価格が夫婦間で平等に配分される。

 

 第4条 配偶者の一方が、他の一方の同意を得ないで、自己の婚姻財産を贈与によって減少させた場合、または配偶者の一方が自己の特有財産を殖やすために婚姻財産を費消した場合、離婚を理由として財産分与が行なわれるとき、贈与または婚姻財産の増殖のために費消した分は、離婚の訴えが提起された時から、3年前に遡って、常に、贈与配偶者または費消配偶者の婚姻財産の中に含まれていたものとして計算される。そしてその分は、贈与配偶者または費消配偶者に帰属すべき婚姻財産の中から控除される。

 前項の規定において、特有財産(enskild egendom)に関して規定されていることは、第10章3条に定める財産分与の対象とならない権利についても適用される。その場合、そのような権利の価値の増加は、権利の取得と同様に取り扱われる。更に、配偶者の一方が婚姻財産を利用することによって、自己の年金保険(pensionsförsäkring)または年金預金(pensionssparkonto)の価値を増加させた場合、もしくは配偶者がそのような保険または年金預金契約(pensionssparavtal)によって利益を受ける場合、他の一方がそのことに同意している場合であっても、前項の規定が適用される。(1993:933)

 

 第5条 配偶者の死亡によって財産分与が行なわれるとき、配偶者のいずれか一方の婚姻財産からなされている相続分の先渡し分が死亡した配偶者の遺産(arvet efter den döde)から控除されるべき場合、その先渡し分は、財産分与に際して、死亡した配偶者の相続人に帰すべき財産分与分の上で清算される。但し、遺産の中から相続の先渡し分の全部を控除することができなかった場合、その不足分は、相続の先渡し分によって清算される。

 債務控除が行なわれた後、被相続人の婚姻財産は、生存配偶者の婚姻財産と合算される前に、財産分に際して控除されるべき額と同じ額をもって増額される。

 

 第6条 配偶者の一方が自己の債務に充当するために取得した婚姻財産及び残存婚姻財産の配分に際して取得した婚姻財産の総額がその配偶者の財産分与分となる。但し、支払い期日の到来している扶養料で、且つ第6章第8条の規定によって一括して他の一方の配偶者に支払うべき扶養料は、財産分与に際して、扶養料を支払うべき配偶者が債務の支払いに当てている財産以外の財産から控除される。扶養料の控除分は、扶養義務を負担している配偶者の財産分与分において減額され、他の一方の配偶者がもっている財産分与分において増額される。

 

 具体的取り分による財産の配分(Egendomens fördelning på lotter)

 第7条 夫婦のために計算された財産分与分にしたがって、婚姻財産がそれぞれの具体的取り分に応じて配分される。夫婦は、それぞれの取り分に応じて、自己の財産または自分の欲する財産を優先的に取得することができる。

 

 第8条 夫婦の共用住宅または共用家財を最も必要とする者は、自己の財産分与分との相殺において、その額が僅少な場合には相殺なしに、その財産を引き取ることができる。但し、その財産が第7章第2条第1項乃至第4項の規定によって、配偶者の一方の特有財産となっている場合にはその限りでない。配偶者の一方が引き取ろうとする財産が、他の一方の財産である場合、周囲の状況からみて、その財産を引き取るに足る相当な事由がなければならない。

 配偶者の一方が引き取ろうとする財産が、優先弁済権の付着している債務の対象となっている場合、債務配偶者が、債務免除を受けるか、相当の担保を供しない限り、その財産を引き取ることができない。

 配偶者の一方が死亡した場合、第1項の規定は生存配偶者のためにのみ適用される。

 

 第9条 配偶者の一方が自己の財産分与分を超えて婚姻財産を有する場合、財産分与分を越える部分については、相手方に対して自己の財産を提供する代わりに、相当な金銭を支払うことによって超過分財産を取得することができる。金銭によってその支払いを行う場合、相当の担保を提供して、その支払いの期日の延期を求めることができる。支払いが行われなかった場合、他の一方は、可能な限りにおいて、その者にとって相当とみなされる財産を取得することができる。

 配偶者の死亡によって財産分与が行なわれる場合、第1項の規定は、生存配偶者のみに適用されるものとする。

 

 第10条 配偶者の一方が、自己の財産分与分との相殺において、夫婦の共用住宅、共用家財を引き取り、且つ自己の婚姻財産からその相殺分を補填することができない場合、共用財産を引き取った配偶者は、金銭をもってその不足分を支払わなければならない。但し、相当の担保を提供することによって、その支払いの延期を求めることができる。

 

 第11条 財産分与に際して、配偶者の一方が自己の財産分与分の全部を取得することができなかった場合、その不足分は他の一方の債務として請求することができる。

以  上

 

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