研究所の概要と歴史

1949年4月1日、専修大学が新制大学に移行したとき、小林良正学長の下で専修大学社会科学研究所が発足しました。事業内容は、機関誌その他の刊行物の刊行、講演会、講習会の開催、受託研究調査といったものでした。発足当初の研究員数は専任・兼任合わせて11名。1949年度には、100万円の予算の下で、第一部歴史班「民主主義の歴史的学説史的研究」、第二部現状分析班「戦後の日本資本主義の再生産構造分析」の研究体制の下で研究活動に入りました。社研予算100万円というのは、当時の本学財政にとっては破格というべき額だったが、大学の財政窮乏の中で、1951年以降、研究所は休眠状態に置かれることになりました。

しかし、この間、有志による日本の労働問題研究会が継続的に実施され、『日本資本主義の諸問題』の刊行(1960年)を経て、1960年から所員の共同研究会である日本資本主義構造研究会が発足しました。この研究会は、『日本資本主義構造研究会会報』を継続して発行するなど、精力的な研究活動を持続し、その延長線上に社研の再発足が実現することになりました。1963年9月1日、山田盛太郎初代所長の下で、学則第50条に基づく「研究所規程」を有する専修大学社会科学研究所が再発足となりました。こうして所員50名を擁し、「経済学及びこれに関する諸科学の総合的研究を行うこと」を目的とし、研究会の開催、特定課題に基づく総合研究、実態調査、公開講演会の開催、機関誌の発行を主な事業としました。

それ以降、社研は定期的な「社会科学研究所月報」、「社会科学年報」を継続的に刊行し、社会科学叢書の発刊、あるいは海外企業視察研究旅行、シンポジウム、プロジェクト研究などを組織することによって、所員(2012年現在所員総数174名)の研究活動を刺激し、専修大学における学部を超えた学際的研究機関として機能し続けています。

ご挨拶

2019年度末のわずか数か月のあいだに、このようにパンデミックと言われるような世界的な流行をみている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、今後どのように展開していくのか、まだまだ未知のところで……。
 と記し始めたのは、2021年4月のことでした。2020年度の一年間、長期国内研究(国内サバティカル)の機会に恵まれ、単身仙台に生活拠点を移して、専らとする復興コミュニティ研究(東日本大震災・10年総括検証)に就いていたところに、社研事務局より打診があって、宮嵜晃臣所長の後をお引き受けすることとなりました。帰京後、新年度早々、冒頭のように新所長「ご挨拶」を記し始めました。ところが、2021年度も学内全体、完全なコロナシフトで、社研でも事務局会議は完全オンライン開催で、各種事業の予算執行もままならず、どのように社研業務、そして体制を維持していくべきか…、暗中模索の日々が続き、「ご挨拶」の次の文章を綴ることがままなりませんでした。私の所長任期の第一期・2021-22両年度は、このように慌ただしく過ぎていきました。
 幸い、学部を横断して構成されている専大社研は、所内の所員だけでも実に学際的、人材豊富で、国内外各研究機関の知見、特にこのコロナ禍対応の最先端の工夫について、様々な情報を持ち寄っていただけました。それらを咀嚼・吸収しながら、事務局では何とか工夫を重ねて、事業・体制を維持してまいりました。そして2022年度末の総会で次期所長に再任されて、こうして2023年度冒頭、遅ればせながら改めて、「ご挨拶」を書き始めたところです。
昨年度2022年度はコロナ禍もいくぶん治まりをみせ始め、対面(リアル)とオンラインを融合したハイブリッドで各種事業が進められてきました。一般の方々に公開する定例研究会、シンポジウムなども、次第にZOOMやYou Tubeを併用したハイブリッド方式で、多くの皆さんをお招きする形を準備できるようになりました。
 また、専大社研は海外研究機関との交流の履歴が厚く、この10数年を振り返ってみても、中国、韓国、ベトナムと国際シンポジウム等を共催して書籍等を刊行してきましたが、2023年度は、日越外交関係樹立50周年記念の国際シンポジウムの開催が企画されており、これに向けて、ベトナム社会科学院・東北アジア研究所(VASS-INAS)と国際交流組織間協定(MOU)を再締結したところです。コロナ禍を強(したた)かにいなしながら果敢に研究事業を展開していきたいと考えております。
専大社研はこれまで以上に研究交流の場を、このように様々な形で広げていき、社会に対して積極的に問題提起していきたいと考えております。忌憚のないご批判、ご教示を賜りますようお願いいたします。

2023年4月1日
専修大学社会科学研究所 第18代所長 大矢根 淳

社研略史

19494社研所長発令(初代所長:大河内一男学監)
研究員11名、第一部:歴史班、第二部:現状分析班
1950専任研究員4名退所
1951社研休止状態へ
1953 共同研究再開、54年度「日本の労働者の質的構造の研究」で文部省科研費
19549群馬県多野郡万場町で鉄鋼労働者の給源調査
19583小林 良正 第2代所長 還暦記念論文集企画により研究者集団形成
19601『日本資本主義の諸問題』(未来社)刊行
7日本資本主義構造研究会(「構造研」)発足。社研再発足の母体となる。
19634山田 盛太郎 社研所長(第3代)発令 社研再発足の準備にかかる
9社研再発足、所員50名、社会科学研究所規程発効。第1回所員総会開かれる。
10「社会科学研究所月報」第1号発行
19663『社会科学年報』第1号発刊
1967 小林 義雄 第4代所長
19687『日本資本主義構造の研究』(社会科学研究叢書第1号)未来社より刊行
石渡 貞雄 第5代所長
1969 江沢譲爾 第6代所長
19739社研、神田校舎から生田校舎図書館(現図書館分館)5階に移転
11神田校舎に社研分室設置
1975 大友 福夫 第7代所長
社研、生田図書館5階から6号館に移転
19796『山谷-失業の現代的意味-』(社会科学研究叢書第2号)未来社より刊行
1981 三輪 芳郎 第8代所長
1991 麻島 昭一 第9代所長
1993 韓国企業視察調査 三星電子(水原)、浦項製鉄(浦項)、現代自動車(蔚山)
1995 泉 武夫 第10代所長
中国企業視察調査 北京、天津、上海の企業訪問、中国企業管理協会・上海社会科学院との交流
1996 水川 侑 第11代所長
公開シンポジウム「戦後50年の現在」
1997 ベトナム視察調査 計画投資省、ベトナム共産党、社会科学院人文研究所、その他企業訪問
1999 古川 純 第12代所長
中国華南経済圏視察調査 深せん(土へんに川)市を中心とした企業訪問
20013社研、生田6号館から生田図書館別館5階に移転
新たに「社会科学研究叢書」刊行開始 
社研叢書1『グローバリゼーションと日本』(社研編)刊行
中国北京大連視察調査  北京大学国際関係学院訪問、大連市政府訪問
20033中国雲南省視察調査   雲南大学学術交流、少数民族問題調査、西部開発視察
4柴田 弘捷 第13代所長
9公開シンポジウム「野口眞理論の可能性」
20052月報500号発刊
200611日中公開シンポジウム「中国経済・社会の現在(いま)」
20074内田 弘 第14代所長
200810公開討論会「アメリカ発金融危機の影響」
20093檀国大学・専修大学合同研究会
5町田 俊彦 第15代所長
創立60周年記念
10第2回 檀国大学との合同研究会―世界同時不況下の日韓経済・企業システム
1160周年記念公開シンポジウム―今、なぜ『資本論』なのか?―
第1回『資本論』から現代を読む
12第2回 今日の貧困と『資本論』
20107公開シンポジウム「21世紀日本における学術の展望」
10第3回檀国大学との合同研究会
201110第4回檀国大学との合同研究会
12公開シンポジウム「原発事故とエネルギー政策の転換」
20122ベトナム社会科学院東北アジア研究所と国際交流組織間協定締結
7国際財政カンファレンス「地方財政の過去・現在・未来」
10第5回檀国大学との合同研究会
20134村上 俊介 第16代所長
9専修大学社会科学研究所・ベトナム社会科学院共同開催シンポジウム
日越外交関係樹立40周年(1973-2013)記念シンポジウム「日越関係:40年の回顧と将来の方向性」
10第6回檀国大学との合同研究会
201411第7回檀国大学との合同研究会
20151ベトナム社会科学院東北アジア研究所との国際交流組織間協定更新