2024.01.26 Fri
ONLINETOPICS
「学長伝書鳩」No.24
Si Flower Island
-「神田神保町カルチェラタン」の花園として-

■誕生のきっかけ
2020年4月、本学の神田キャンパスに高層新校舎10号館(専修大学140年記念館)が完成し、その運用が始まった。ただし、当時はコロナ禍の真っただ中であり、授業は原則すべてオンライン方式で行われたので、その校舎の主人公となるべき学生たちの姿はなく、非常に寂しい「杮落とし」となった。静まり返ったこの新校舎の周りをよく散歩したが、近隣の景観に目を向けることもあった。新校舎が建つ場所の西側には、神田川の分流でもある日本橋川が流れている。また新校舎の前面には、ソメイヨシノ(※寄贈者にちなみ通称「小宮桜」と私は呼んでいる)、オオシマザクラ、イロハモミジ等の植栽が施され、垣根で囲まれた切通しもある。新校舎の1階には、地元の「Kanda Coffee」がプロデュースしたカフェ(SENDAI-Kaffee)が併設されている。このカフェの店内にいると、靖国通りとの間に、大小様々な樹木が植えられているので、さながら林の中にいるような気分にさせてくれる。
川、樹林、カフェ、大学、それは、パリのカルチェラタンを想像させるが、ここにも「神田神保町カルチェラタン」があるではないかと思った。ただし、一つだけ気になるスポットがあった。それは、この新校舎の斜め前の「俎橋(まないたばし)」交差点前の歩道の真ん中に設置されている「ひょうたん形の植栽枠」であった。私は、荒れていたこの場所を、花や緑あふれる花壇に再生したいと切に思った。
2020年4月、本学の神田キャンパスに高層新校舎10号館(専修大学140年記念館)が完成し、その運用が始まった。ただし、当時はコロナ禍の真っただ中であり、授業は原則すべてオンライン方式で行われたので、その校舎の主人公となるべき学生たちの姿はなく、非常に寂しい「杮落とし」となった。静まり返ったこの新校舎の周りをよく散歩したが、近隣の景観に目を向けることもあった。新校舎が建つ場所の西側には、神田川の分流でもある日本橋川が流れている。また新校舎の前面には、ソメイヨシノ(※寄贈者にちなみ通称「小宮桜」と私は呼んでいる)、オオシマザクラ、イロハモミジ等の植栽が施され、垣根で囲まれた切通しもある。新校舎の1階には、地元の「Kanda Coffee」がプロデュースしたカフェ(SENDAI-Kaffee)が併設されている。このカフェの店内にいると、靖国通りとの間に、大小様々な樹木が植えられているので、さながら林の中にいるような気分にさせてくれる。
川、樹林、カフェ、大学、それは、パリのカルチェラタンを想像させるが、ここにも「神田神保町カルチェラタン」があるではないかと思った。ただし、一つだけ気になるスポットがあった。それは、この新校舎の斜め前の「俎橋(まないたばし)」交差点前の歩道の真ん中に設置されている「ひょうたん形の植栽枠」であった。私は、荒れていたこの場所を、花や緑あふれる花壇に再生したいと切に思った。

(2020年12月)
■試行期間の始まり
まず、この植栽枠の維持を本学自らができるようにするため、管轄する東京都と交渉することとなった。本学の交渉窓口となった庶務課の努力や卒業生のアドバイスの甲斐あって、2022年3月に、その希望を叶えることができた。ただし、植栽できる植物には制限があり、当初こちらが希望した桜のような樹木は、植栽枠の地下部分にライフラインが埋設されているため禁止とされた。しかも、この植栽枠を本学が維持していることを表記する看板を即時に設置することはルール上認められず、一定の試行期間が必要なことがわかった。そこで、2022年6月、私は、夏の猛烈な暑さ等を考慮して、ハイブリッド種のゼラニウム(スーパーゼラニウムチャンピオン)とシバザクラ(アメージンググレース)を植えることを提案した。
まず、この植栽枠の維持を本学自らができるようにするため、管轄する東京都と交渉することとなった。本学の交渉窓口となった庶務課の努力や卒業生のアドバイスの甲斐あって、2022年3月に、その希望を叶えることができた。ただし、植栽できる植物には制限があり、当初こちらが希望した桜のような樹木は、植栽枠の地下部分にライフラインが埋設されているため禁止とされた。しかも、この植栽枠を本学が維持していることを表記する看板を即時に設置することはルール上認められず、一定の試行期間が必要なことがわかった。そこで、2022年6月、私は、夏の猛烈な暑さ等を考慮して、ハイブリッド種のゼラニウム(スーパーゼラニウムチャンピオン)とシバザクラ(アメージンググレース)を植えることを提案した。

(2022年6月)
■ゼラニウム全滅とシバザクラの復活
2022年夏、ゼラニウムは、赤い花を咲かせ続けてくれたが、シバザクラは、根付きが不十分であったのか、日陰にあった株以外は、枯れた状態となってしまった。
2022年夏、ゼラニウムは、赤い花を咲かせ続けてくれたが、シバザクラは、根付きが不十分であったのか、日陰にあった株以外は、枯れた状態となってしまった。

枯れてしまったシバザクラ
(2022年7月)ようやく、秋口から、シバザクラが元気を取り戻し、徐々に植栽枠の全体を覆っていった。一方、安心して見ていたゼラニウムは、なぜか2年目(2023年)の夏の時期にみるみるうちにその勢いを失って、ほぼ全滅状態となってしまった。ゼラニウムが植えられていた部分は、あたかも鉄道の廃線のようにすっぽりと抜けているような状態となってしまった。
■地域の方々にも見守られていた花壇
2023年9月下旬となって、その「廃線跡」に曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の花が咲いているという情報が寄せられた。私は、枯れたゼラニウムを気にかけて、植栽を担当する本学の管理課の担当者が、同じ赤い花を咲かせる曼珠沙華を植えてくださったのかと思い、お礼をするため問い合わせてみたが、心当たりがないという。恐らくではあるが、この花壇の様子を定期的に見てくださっていた学外の方が、ゼラニウムのイメージに近い曼珠沙華を選んでその球根をそっとおいてくださったのではないか。この出来事を通じて、私は、この花壇が、もはや本学だけではなく、地域の方とも一緒になって維持してゆくことができるものになりつつあると実感した。
2023年9月下旬となって、その「廃線跡」に曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の花が咲いているという情報が寄せられた。私は、枯れたゼラニウムを気にかけて、植栽を担当する本学の管理課の担当者が、同じ赤い花を咲かせる曼珠沙華を植えてくださったのかと思い、お礼をするため問い合わせてみたが、心当たりがないという。恐らくではあるが、この花壇の様子を定期的に見てくださっていた学外の方が、ゼラニウムのイメージに近い曼珠沙華を選んでその球根をそっとおいてくださったのではないか。この出来事を通じて、私は、この花壇が、もはや本学だけではなく、地域の方とも一緒になって維持してゆくことができるものになりつつあると実感した。

(2023年9月)
■「Si Flower Island」と名付けて
2024年1月現在、花壇では、シバザクラが繁茂して、季節外れ(?)のかわいい小さな白い花も咲かせている。私は、俎橋交差点前の広い歩道スペースの中にぽつんと位置するひょうたん形の花壇が、大海に浮かぶ小島のようにもみえるので、これを「Si Flower Island」*と名付けた。 1月20日(土)、東京都から贈られた看板も設置された。私は、今後この花壇が、「神田神保町カルチェラタン」入口のサインとなり、また地域交流の担い手にもなることを願っている。
*「Si」(Socio intelligence)は、専修大学の21世紀ビジョン「社会知性の開発」を表現しています。
2024年1月現在、花壇では、シバザクラが繁茂して、季節外れ(?)のかわいい小さな白い花も咲かせている。私は、俎橋交差点前の広い歩道スペースの中にぽつんと位置するひょうたん形の花壇が、大海に浮かぶ小島のようにもみえるので、これを「Si Flower Island」*と名付けた。 1月20日(土)、東京都から贈られた看板も設置された。私は、今後この花壇が、「神田神保町カルチェラタン」入口のサインとなり、また地域交流の担い手にもなることを願っている。
*「Si」(Socio intelligence)は、専修大学の21世紀ビジョン「社会知性の開発」を表現しています。

(2024年1月)

