2023.05.24 Wed
ONLINETOPICS
文・英語英米文学科 特別総合講義
生成AIなど翻訳技術の発展と課題学ぶ

文学部英語英米文学科の「特別総合講義」で、翻訳の分野におけるAI(人工知能)の現状と課題などについての講演が行われた。
「特別総合講義」は渡邉真理子教授が担当し、毎回、学内外のさまざまな分野の専門家や研究者がオムニバス形式の授業を行っている。今年度は「文化と翻訳」をテーマに、異文化との出合いの場である「翻訳」について、歴史的・文化的視点から学んでいる。
5月18、25日は、辞書や英米文学書の編集者である株式会社研究社の星野龍さんが「辞書と翻訳のテクノロジー」と題して講演。翻訳の分野でも、生成AIは急速に浸透しており、18日の講義では、昨今大きな注目を集める対話型AI「ChatGPT」や、翻訳に特化したAI「DeepL」を使って和訳した例文を示し、それぞれの翻訳の特徴を説明した。
これらのAIは継続的な学習機能を持つ一方で、「その過程で常に新たなデータを取り込んで反映し続けるため、質のコントロールが難しい」と問題点を指摘。最新ではないが、検証を経て一定の正確性が担保されたデータ(辞書)を持っておくことの重要性を語った。併せて、辞書には、言葉の現状を反映しようとする「descriptive(記述的)」と、言葉の規範を示そうとする「prescriptive(規範的)」の二つの方向性があると解説した。
また、学生たちに新英和大辞典(研究社)をはじめとする複数の紙の辞書に触れてもらい、情報量を物理的な「重さ」として感じてもらうアクティブラーニングの時間も設定された。「現在の大学生にとって辞書とは携帯電話のアプリ内に存在している情報の階層の一つ。見えないものになっている」と星野さんはその意図について語った。
授業のなかで学生たちは、AIによる和訳を、より自然で的確な表現に翻訳し直すことにも挑戦した。星野さんは「AIはこなれた文章を生成することがある。ぎこちない訳はもちろん、もっともらしい訳のときも注意深く検証する必要がある」とアドバイスした。
普段からAI翻訳を利用することがある学生たちにとって、今回の星野さんの話は示唆に富むものだったようだ。授業後には、AI翻訳の今後の可能性や紙の辞書の未来、辞書編集時に意識している点などについて質問があがった。また、「辞書にもさまざまな種類があることが分かり、自分のレベルや目的に合ったものを探して使いたいと思った」「AI翻訳と辞書には異なるメリットがあり、両方を反復的に使うと良いと感じた」などの感想が寄せられた。
渡邉教授は「英語英米文学科の学生たちに欠かせない学習ツールである辞書の話から、生成AIについて考えてもらえるような機会を作りたかった。AIとどのように向き合うのか、学問領域や専門分野によって見解はさまざま。気軽にAIが使える時代に、外国語を習得する意味は何か、学生にあらためて考えてほしい」と講義の趣旨を説明する。「簡単に機械翻訳ができるので、外国語は勉強しなくてもいいなどという意見もあるが、そうではない。人間ならではの感性を、いまこそ磨くべきだ。AIに依存したり忌避したりするのではなく、あくまでツールの一つとして活用していけばいいのではないか。希望をもって、文学および語学の領域での学びを深めてほしい」と話した。
「特別総合講義」は渡邉真理子教授が担当し、毎回、学内外のさまざまな分野の専門家や研究者がオムニバス形式の授業を行っている。今年度は「文化と翻訳」をテーマに、異文化との出合いの場である「翻訳」について、歴史的・文化的視点から学んでいる。
5月18、25日は、辞書や英米文学書の編集者である株式会社研究社の星野龍さんが「辞書と翻訳のテクノロジー」と題して講演。翻訳の分野でも、生成AIは急速に浸透しており、18日の講義では、昨今大きな注目を集める対話型AI「ChatGPT」や、翻訳に特化したAI「DeepL」を使って和訳した例文を示し、それぞれの翻訳の特徴を説明した。
これらのAIは継続的な学習機能を持つ一方で、「その過程で常に新たなデータを取り込んで反映し続けるため、質のコントロールが難しい」と問題点を指摘。最新ではないが、検証を経て一定の正確性が担保されたデータ(辞書)を持っておくことの重要性を語った。併せて、辞書には、言葉の現状を反映しようとする「descriptive(記述的)」と、言葉の規範を示そうとする「prescriptive(規範的)」の二つの方向性があると解説した。
また、学生たちに新英和大辞典(研究社)をはじめとする複数の紙の辞書に触れてもらい、情報量を物理的な「重さ」として感じてもらうアクティブラーニングの時間も設定された。「現在の大学生にとって辞書とは携帯電話のアプリ内に存在している情報の階層の一つ。見えないものになっている」と星野さんはその意図について語った。
授業のなかで学生たちは、AIによる和訳を、より自然で的確な表現に翻訳し直すことにも挑戦した。星野さんは「AIはこなれた文章を生成することがある。ぎこちない訳はもちろん、もっともらしい訳のときも注意深く検証する必要がある」とアドバイスした。
普段からAI翻訳を利用することがある学生たちにとって、今回の星野さんの話は示唆に富むものだったようだ。授業後には、AI翻訳の今後の可能性や紙の辞書の未来、辞書編集時に意識している点などについて質問があがった。また、「辞書にもさまざまな種類があることが分かり、自分のレベルや目的に合ったものを探して使いたいと思った」「AI翻訳と辞書には異なるメリットがあり、両方を反復的に使うと良いと感じた」などの感想が寄せられた。
渡邉教授は「英語英米文学科の学生たちに欠かせない学習ツールである辞書の話から、生成AIについて考えてもらえるような機会を作りたかった。AIとどのように向き合うのか、学問領域や専門分野によって見解はさまざま。気軽にAIが使える時代に、外国語を習得する意味は何か、学生にあらためて考えてほしい」と講義の趣旨を説明する。「簡単に機械翻訳ができるので、外国語は勉強しなくてもいいなどという意見もあるが、そうではない。人間ならではの感性を、いまこそ磨くべきだ。AIに依存したり忌避したりするのではなく、あくまでツールの一つとして活用していけばいいのではないか。希望をもって、文学および語学の領域での学びを深めてほしい」と話した。

課題について説明する星野さん

AIとの関わりについて学ぶ学生たち
