2023.01.25 Wed
ONLINETOPICS
法学研究所「学生と市民のための公開講座」
芸能従事者を巡る法的課題を解説

企業などに属さず、フリーランスとして活動する芸能従事者の立場は弱く、不利な条件で業務に従事せざるを得ない状況が生じている。森崎さんは一例として、仕事の受発注が口約束で行われることが多い点を挙げ、「契約書を作らない業界の慣習が、コロナ禍において持続化給付金申請の障壁になった」と説明。また、芸能従事者の立場・権利が弱い背景には、業界特有の重層請負構造(7次下請)があると指摘した。
芸能従事者を巡る課題として「ハラスメント」も取り上げた。森崎さんが代表理事を務める日本芸能従事者協会では、文化芸術・メディア・芸能従事者を対象にアンケートを実施。9割以上の人がパワハラを、7割以上の人がセクハラを受けたり、見聞きしたりしたことがあるという調査結果を示した。
森崎さんの講演を受けて芦野教授は、芸能従事者の労働環境改善に向けて2022年7月に文化庁から『文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン』が公表されたが、これは必要最低限の指針を示したものに過ぎないと述べ、「今後は文化・芸術・芸能に携わる者の特性を反映させた形での対応が望まれる」とまとめた。
