2023.01.25 Wed
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法学研究所「学生と市民のための公開講座」
芸能従事者を巡る法的課題を解説

20230119法学研究所「学生と市民のための公開講座」芸能従事者を取り巻く現況について説明する芦野教授▲芸能従事者を取り巻く現況について説明する芦野教授
法学研究所は1月13日、公開講座「文化・芸術・芸能と法の現在」を対面とオンラインのハイブリッド形式で開催した。俳優で一般社団法人日本芸能従事者協会代表理事の森崎めぐみさんと、法学部の芦野訓和教授が講師を務め、芸能従事者を取り巻く現況と課題について話した。

企業などに属さず、フリーランスとして活動する芸能従事者の立場は弱く、不利な条件で業務に従事せざるを得ない状況が生じている。森崎さんは一例として、仕事の受発注が口約束で行われることが多い点を挙げ、「契約書を作らない業界の慣習が、コロナ禍において持続化給付金申請の障壁になった」と説明。また、芸能従事者の立場・権利が弱い背景には、業界特有の重層請負構造(7次下請)があると指摘した。

芸能従事者を巡る課題として「ハラスメント」も取り上げた。森崎さんが代表理事を務める日本芸能従事者協会では、文化芸術・メディア・芸能従事者を対象にアンケートを実施。9割以上の人がパワハラを、7割以上の人がセクハラを受けたり、見聞きしたりしたことがあるという調査結果を示した。

森崎さんの講演を受けて芦野教授は、芸能従事者の労働環境改善に向けて2022年7月に文化庁から『文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン』が公表されたが、これは必要最低限の指針を示したものに過ぎないと述べ、「今後は文化・芸術・芸能に携わる者の特性を反映させた形での対応が望まれる」とまとめた。
20220117法学研究所「学生と市民のための公開講座」講師を務めた森崎さん▲講師を務めた森崎さん
今回の公開講座は「2022年度学生と市民のための公開講座『法と政治の現況2022』」の3回目。初回(12月6日)は法科大学院の遠藤輝好教授が「18歳成年社会と法律」と題して講演。「教員の働き方改革」をテーマに、埼玉大学の髙橋哲准教授が担当した12月19日の第2回講座では、法学部の長谷川聡教授がコメンテーターを務めた。

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