2022.08.09 Tue
ONLINETOPICS

ウクライナ取材を通じて考える戦争報道
文学部ジャーナリズム学科と現代ジャーナリズム研究機構
「表現の自由」考える連続講演会を開催

20220809ジャーナリズム学科連続講演会_-戦争報道について考えたシンポジウム▲戦争報道について考えたシンポジウム
文学部ジャーナリズム学科と現代ジャーナリズム研究機構は7月30日、神田キャンパスでシンポジウム「戦争報道の価値と難しさ~ウクライナ取材・報道を通じて考える」を開催した。学生や一般の方ら約200人が聴講するなか、ジャーナリストの綿井健陽さん、TBS中東支局長の須賀川拓さんが、ウクライナで撮影した映像を映しながら、今現地で起きていること、戦争報道の意義や難しさなどについて話した。

須賀川さんは、これまでにアフガニスタン、イスラエル、パレスチナなどの紛争地帯で取材を続けてきた。戦争取材はフリーランスの記者に頼ることが多かったが、ウクライナでは、入念な準備の後、TBSの各支局が連携し、3班が順番に現地入りして取材する体制が取られたと、大手メディアの変化を説明した。

現地からの報告として、ハルキウ郊外で行われた兵士の遺体回収の現場が上映された。爆弾が仕掛けられている恐れがあるため、遺体に紐をひっかけ、引っ張り出す様子を記録した。また、クラスター弾が打ち込まれ、鉄の扉を貫通した跡、森の中に散乱する金属の破片なども生々しい映像で伝えた。
20220809ジャーナリズム学科連続講演会_ウクライナ取材いついて語る須賀川さん(左)と綿井さん▲ウクライナ取材について語る須賀川さん(左)と綿井さん
須賀川さんは「どこの誰のための報道かを常に自分に問いかけている。現地の人たちに支援が届き、1人でも多くの難民が救われ、一つでも紛争がなくなることを目指し、この仕事を続けていきたい」と、報道の役割を語った。

綿井さんは1990年代後半からジャーナリストとして活動を始め、アフガニスタン、イラク戦争などの実態を伝え続けている。ウクライナ・ブチャには、虐殺行為の取材のために世界中のマスメディアが訪れた。その様子を綿井さん自身が撮影し、レポートした動画を会場で流した。「現在は世界中の人がスマホでさまざまな情報を発信できる時代になった。それでも日本人記者が日本語で伝えることに意味がある」と強調した。また、フリージャーナリストの立場から、戦争取材にかかる多額の費用、安全の確保、放映の機会の有無などといった課題にも触れた。


シンポジウムは「専修J『表現の自由』を考える連続講座」の3回目。初回(7月2日)はメディア総合研究所事務局長・岩崎貞明さんが「攻めて守る表現の自由~『表現の不自由展 東京2022』」と題して基調講演。16日には弁護士の宮下萌さんが「ネットヘイトに焦点を当てて」をテーマに講演した。毎回、山田健太文学部教授が司会を務めた。
20220809ジャーナリズム学科連続講演会_山田健太文学部教授▲司会の山田健太文学部教授
20220809ジャーナリズム学科連続講演会_TBS中東支局長の須賀川拓さん▲TBS中東支局長の須賀川拓さん
20220809ジャーナリズム学科連続講演会_ジャーナリストの綿井健陽さん▲ジャーナリストの綿井健陽さん

関連情報