2022.07.29 Fri
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外国語のススメ【第121回】英語の話し言葉と書き言葉について

                                                                         国際コミュニケーション学部准教授   宮田 宗彦 
(外国語教育研究室長)
(応用言語学〈第二言語習得・英語教育学〉)
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 英語の読み書きには慣れてきたのに、うまく話せない。日常会話でよく使う表現が出てこない。ようやく考えて出た表現も、教科書の例文のように堅苦しい感じがする。洋画やテレビドラマの登場人物が発する会話の表現とはとても似ても似つかない気がする。どうしたら話し言葉がうまく使えるようになるのだろうか。しっかり英語を学んでいるはずなのに、いつまでも英語がうまく話すことができない。このような悩みをよく耳にします。
 英語の読み書きができるというのはたいへん重要なことなのですが、会話になると突然、苦手意識を持たれる方が多くいらっしゃいます。その原因の一つは、我々が書き言葉ばかり学んで、話し言葉に触れる機会があまりないことにあるのではないでしょうか。日本の学校教育では読み書きを中心に学ぶため、われわれが慣れている英語表現は書き言葉が中心になっています。そのため、会話などで使われる表現には不慣れであることが多いのです。
 
 話し言葉にはたくさん熟語が使われますが、会話文を特徴づけるものの一つに句動詞と呼ばれるものがあります。句動詞は動詞と副詞、あるいは動詞と副詞と前置詞で構成される定型のフレーズで、複数の語から成り立ち、このような語のカタマリがまるで一つの動詞のような働きと意味を持つ熟語の一種です。
 話し言葉では句動詞の使用頻度が高いのが大きな特徴です。一方で、書き言葉では一般動詞が多く使われ、句動詞はあまり使われなくなります。たとえば、「やり直す」と言いたい時、会話では句動詞でdo overと言えば良いのですが、書き言葉ではreviseなど少し難しい表現を使うことになります。同様に「きちんと説明する」などと言いたい時、会話では句動詞でget acrossと言えば良いのですが、書き言葉ではclarifyなど少し硬い表現を使うことになります。
 書き言葉で使われる一般動詞は、硬苦しくて、難しい、よそ行きの表現が多くなるのですが、話し言葉で使われる句動詞は、その反対で、よそ行きではなく、くだけた表現が多いのです。
 英語で会話の表現が上手になるためには、句動詞による表現を多く学んでいくのがとても良い方法です。書き言葉で学んださまざまな動詞と同様の意味をもつ句動詞は会話文でどのように使われているか、注意を向けて、書き言葉と話し言葉の違いを意識してください。我々が話し言葉を苦手とするのは、句動詞による会話の表現に慣れていないということからくるのではないでしょうか。