2022.04.21 Thu
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外国語のススメ【第118回】外国語の発音は難しい

                                                                         国際コミュニケーション学部准教授   宮田 宗彦 
(外国語教育研究室長)
(応用言語学〈第二言語習得・英語教育学〉)
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 外国語の勉強をするときに、外国語の発音についてどのように学べば良いか頭を悩ませている方々がたくさんいらっしゃいます。たとえば、英語の発音は日本語を母語にする学習者にとって大変習得が難しいと言われますが、それもそのはずで、その理由は、英語には日本語にはない音がたくさん存在するからです。
 日本語にはアイウエオの5つの母音しかありませんが、英語には約15の母音が存在します。例えば、猫を意味する英語のcatの発音は /kæt/ですが、/æ/の音は日本語には存在しませんので、我々は/æ/の音を認知できず、日本語で近い音の「ア」に置き換えて「キャット」と発音します。「cat」と「キャット」の発音は実際にはだいぶ異なるのですが、我々にはその違いがなかなか認識できません。だから英語の発音は難しいということになるのです。      
 母音に加え、厄介なのが子音です。日本語には14の子音がありますが、英語には24の子音が存在します。我々にとって英語の子音で発音が最も難しいのは/l/と/r/だと言われます。/l/と/r/は両者とも日本語には存在しない音で、我々は/l/と/r/を独立した2つの音として認知できませんので、/l/と/r/を日本語で近い「ラ行」の音に置き換えます。/l/と/r/は英語では異なる音にも関わらず、我々は/l/と/r/を頭の中で1種類の音にしてしまうので、音の区別ができず、発音に苦労するということになります。また英語では/l/と/r/の音の違いが意味の違いを生み出しますが、我々は音の区別ができませんので、意味の違いを汲み取ることも難しいということになります。たとえばplay(遊ぶ)とpray(祈る)やfly(飛ぶ)とfry(炒める)などの言葉を聞き取ることは実は至難の業なのです。他にも、/l/と/r/と同じように、/v/や/th/や/w/など、英語には日本語にない子音がたくさん存在し、これらを学び、聞き分けることできるようになるには大変な困難を伴います。だから英語の発音が難しいということになるのです。
 外国語の学習には母語に存在しない音を新たに学び、覚え、聞き分けることが要求されます。外国語の音声を聞き分けるためには、新たな音声の知覚が必要とされるのですが、我々は母国語の知覚にいつまでも捉われてしまうので、知覚に新たに変更を加えたり、新たに付け加えたりすることに大変な困難を伴います。外国語の発音はたやすく達成できることではないようです。