2021.12.23 Thu
CALL教室・外国語教育研究室TOPICS

外国語のススメ【第115回】自動翻訳できない日本語の表現について

                                                                         国際コミュニケーション学部准教授   宮田 宗彦 
(外国語教育研究室長)
(応用言語学〈第二言語習得・英語教育学〉)
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 自動翻訳とは, 英語などの外国語をソフトウェアやクラウドサービスを利用して別の言語に自動的に翻訳することです。自動翻訳のサービスで有名なものはWeb上で手軽に使用できる機会が増えたため, 皆さんも英語を日本語にしたり, 日本語を英語にしたり, 用途に応じて自動翻訳を使われた経験があるのではないでしょうか。一昔前は, 全く使い物にならない代名詞の如くいわれていた自動翻訳ですが, AI(人工知能)の発達とともに, 機械学習の技術が大きく進歩したことで, 機会翻訳は日々の使用に十分耐え得るものになりつつあり, 社会における重要なツールとなっています。
 グローバル化に伴い, 昨今英語など外国語によるコミュニケーション能力が重要であることが叫ばれていますが, 日常的に英語を使わない人にとって, コミュニケーション手段としての英語の習得には大変長い時間と絶え間ない努力が必要とされるため, 非常に敷居が高いというのが現実でしょう。そのような場合, 自動翻訳はとても便利なツールなのです。コミュニケーションに必要な英語が習得できなくても, 自動翻訳を使えば, 瞬時に必要とされる日本語のメッセージを翻訳してくれます。このような理由により, 今後翻訳サービスの利用の頻度はこれまで以上に増えていくのではないでしょうか。
 しかし, 残念なことに, 自動翻訳にはまだまだ問題がたくさんあります。機械翻訳の精度が良くなり, 日々の使用に耐え得るものになりつつあるとはいえ, 日本語から英語に自動翻訳をした時に, 意味的におかしな, ぎこちない英文になることがあります。日本語から英語に翻訳する際の問題点に, 日本語特有の概念, 例えば「頑張りましょう」とか「お疲れ様」などの表現, 尊敬語や謙譲語などの含まれる敬語表現, 日本語に特徴的な主語や目的語が省略された文, そして日本語による慣用表現などはうまく翻訳ができないということが指摘されています。これらの表現が含まれた日本語を自動翻訳しようとすると, 翻訳された英文は意味的におかしなものになります。
 自動翻訳は便利なものですが, 機械翻訳された文章が使用に耐え得るものかどうか, 最終的に人間が検証することが不可欠です。検証なしに自動翻訳された文章をそのまま使用すると, おかしな英文がますます巷にあふれることになってしまうかもしれません。