2015.12.17 Thu
ONLINETOPICS

線路に転落した男性を救助した中村輝さん(法4)が紅綬褒章を受章

白杖の男性が線路に・・・中村さんが飛び降りて救助

中村輝さん(法4)は2014年、地下鉄の線路に転落した白杖の男性を避難スペースに移動させ救助した。15年秋、「自ら危険にさらされながら人命の救助に尽力した」として紅綬褒章が天皇陛下から授与された。また12月14日には安倍晋三首相から内閣総理大臣感謝状が手渡された。
ゼミ指導の山田創一教授(民法)は「優しく思いやりのある学生です。冷静で的確な判断をしたからこそ命が救えた」と讃えた。

中村さんは14年9月22日午後7時過ぎ、東京メトロ東西線東陽町駅のプラットホームで、西船橋方面行きの電車を待っていた。
電車が来るアナウンスがホーム内に響いた時、前方で白い杖をついて歩いていた男性が突然ホームから転落した。「大変だ」。中村さんはとっさに線路に飛び降り、倒れている男性を引きずるようにしてホーム下の避難スペースに一緒に入った。 
男性は手足をバタバタと動かしていたが、中村さんは自分の体で覆って落ち着かせた。ホーム上では安全停止ボタンが押され、避難スペースの中で列車が2両ほど通過したのが分かった。間一髪だった。
「男性は50代くらい。全盲に近い方で、誤ってホームから転落したようです。自分の身に何があったのか分からない様子でした」(中村さん)。
この日、中村さんは授業がなく、故郷山梨市から江戸川区葛西のアパートに帰宅途中。各駅停車待ちをしていた東陽町駅のホームには女性が数人いただけで、中村さんがいなかったら惨事につながったかもしれない。
かけつけた東京メトロの橋本幸治さんは、電車が移動した後、人が落ちた6両目あたりから若い男性がホームに上がってきたのを見た。「胸をなでおろしました。落ちたところに避難スペースがあり運にも恵まれました」と振り返る。白杖の男性は担架で運ばれ病院へ。落下の衝撃でけがをしたが、軽症だった。
中村さんは、東京メトロ、東京消防庁、東京都から次々と表彰された。15年11月19日の都内のホテルでの褒章授与式では、高市早苗総務大臣から、受章者を代表して紅綬褒章が手渡された。
その後皇居で天皇陛下と面談、「立派なことをしてくれました」と直接お言葉をかけられた。「緊張していてなんと返事をしたか覚えていません」と中村さん。中村さんは山田ゼミの副ゼミ長を務めている。2年間無欠席。この救出をきっかけに鉄道事故と損害賠償に関する論文をまとめた。
「これまで鉄道事故に接すると『またか』と思っていたが、事故を減らすためには他人に配慮するなど、一人一人、社会全体で考えていかなければならないと思うようになりました」
4月からの進路先は警察官。山梨県警に採用が決まった。「人々のために役に立つ仕事をしていきたい」。彼の決意だ。
abm00012124▲紅綬褒章を受章した中村さん(右)と山田教授
abm00012123▲東陽町駅で男性が落下した辺りの線路をみる中村さん