2016.01.06 Wed
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外国語のススメ【第62回】美しきロシア語

外国語教育研究室長・経済学部教授 寺尾 格(ドイツ語担当)
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2015年8月末に短期間、ロシア旅行をする機会があった。せっかくなのでロシア語のイロハぐらいは・・・と思って、NHKロシア語講座4月号のテクストとCDを購入して、張り切って聴いてみた。ところが、おでんの中のゆで卵のごとく、全く頭に入ってこない。常日頃、「覚えるのは、集中と反復だ!」と学生諸君に繰り返し言っている身としては、かなり情けない有様となった。とはいえ、ザルで水をすくうような思いで、ヒタスラ、ひたすらに繰り返すうちには、少しずつ染み込んでくるものではある。入門レベルの勉強とはいえ、還暦過ぎの脳髄と20歳のそれとの相違を始めとして、興味深い事実が幾つも見つかるのであった。
例えばロシア語特有のキリル文字は、発音との親和性が高い。その点はドイツ語も同じだが、ロシア文字のX(ハッ!)は、ドイツ語の感嘆詞Ach! のchと同じ発音。P(エル)も、ドイツ語の「巻き舌のr 」と同じ。Ш(シャー)は、ドイツ語のschと同じく、「ウ」の口から発音される発音記号「∫(シュ)」と同じ。極めつきなのが Ы の文字であって、これは「イ」の口の形で「ウ」と発音するので、初心者は???となるはずなのだが、実はドイツ語のÜ が、Uの変音(ウムラウト)で、「ウ」の口の形で「イ」と発音するので、ちょうどロシア語と反対ということになる。ドイツ語を勉強していると、もしかしたらロシア語もかなり楽なのではないか、と思わせてくれるのである。

ところで「これは誰のペンですか?これは私のペンです。」という超・初歩的な例文は、英語でもドイツ語でも、クソ面白くも何ともない文章であるのだが、し・か・し、これがロシア語では、「チィヤァー エータァ ルーチカァ? エータァ マヤァー ルーチカァ」となるので、実に美しい「韻」のリズムが感じられる点に、妙に感心しているこの頃なのである。

写真:モスクワ赤の広場にある聖ワシーリー寺院(Saint Basil's Cathedral)
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