2016.05.19 Thu
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外国語のススメ【第65回】パラグラフ・リーディングのススメ

文学部教授 末廣 幹(英語担当)
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英文の読解法のひとつであるパラグラフ・リーディングについては皆さんも耳にしたことがあると思います。しかし、高校の恩師から「パラグラフ・リーディングなんかインチキだ!万能ではない」という話を聞いたことがあるとか、「受験英語に限ったテクニック」という否定的なイメージのほうが強く、大学における英語学習には不向きだと思っている人が多いのではないでしょうか。それはとんでもない誤解です。たとえば、英語圏の大学に留学すると、毎週学術書を数十頁から数百頁読んでおくことが課せられることがあります。そのときに日本語に逐語訳しなければ課題図書の内容が理解できないようではとうてい準備が追いつきません。パラグラフ・リーディングによって著者の主張を的確に、効率よく把握することが必要になります。
パラグラフ・リーディングでは、冒頭のトピック・センテンス=問題提起、サポーティング・センテンス=具体的な例証や論証、コンクルーディング・センテンス=結論やパラグラフの議論の要約という英文のパラグラフの構造や論理展開を念頭に置いた上で、全文を読まずとも、どこに焦点を当てて読めばよいか判断することになります。但し、パラグラフ中に逆接の接続詞や副詞を含むセンテンスがあると、議論の流れが変わってしまうこともありますので、経験に基づいた判断力が必要とされます。パラグラフ・リーディングに関する初心者向けの参考書は、成田あゆみ・日比野克哉著、『標識に従えば英語はスッキリ読める』(増進会出版社、2003年)です。

私は毎年大学の英語の授業で、パラグラフ・リーディングによって学術書を読む試みをしていますが、優れた研究者はパラグラフ・ライティングの点でもルールを抑えた優れた書き手であることが確認できます。「本当かな?」と疑問を抱いた人は、Linda Colley, .Britons: Forging the Nation 1707-1837 (2nd Ed. New Haven: Yale University Press, 2005)やJohn Dower, Embracing Defeat: Japan in the Wake of World War II (New York: W. W. Norton & Company, 1999)の1頁でもよいので読んでみてください。パラグラフの冒頭にトピック/センテンスが明示されていることが確認できるはずです。英語圏の大学へ長期間留学することを考えている人はぜひパラグラフ・リーディングに挑戦してみましょう。

写真:文中で紹介のEmbracing Defeat: Japan in the Wake of World War II (専修大学図書館所蔵)と英字新聞