2015.05.07 Thu
CALL教室・外国語教育研究室TOPICS
外国語のススメ【第56回】オルゲルの響き
外国語教育研究室長・経済学部教授 寺尾 格(ドイツ語担当)
「オルガン」と言えば、桜散る小学校の校庭に響く足踏みの音色(古い!)の連想があり、「風琴」と書けば、さらに雰囲気が高まります。本来は「パイプオルガン」のことで、英語のorganは「臓器」の意味も含むように、ドイツ語のOrganは「臓器」で、楽器の「オルゲルOrgel」とは区別しています。
南部のカトリック教会ではバロック風の絢爛豪華さが目立ちますが、北部のプロテスタント教会では、かなりシンプルな造作となります。オルガン・コンサートもしばしば開催されますし、運よく誰かが練習をしていると、これが実に良い時間になります。石造りの広い空間は残響の効果が素晴らしく、全身を震わすような重低音と、輝くように多彩な高音の疾駆と、まるで息吹のような弱音の繊細さとが、次々と果てしなく重ねられて、ほとんど忘我の経験となります。
Orgelの演奏が終わって、ハッと我に返ると、また以前のままの静かな薄暗い空間です。かすかに消えてゆく残響の記憶は、華やかな音に包まれた身体の記憶と呼応して、眼で見ることのできない「何か」の気配を、しっかりと感じさせてくれるかのようです。教会という石造りの「空間」は、パイプオルガンという「臓器」を含んだ、大きな「楽器」とすら言えるかもしれません。
ちなみに私の一番のオススメは、ナウムブルクのヴェンツェル教会で、バッハも演奏したことのある1746年製作の古いオルガンは、ほとんど信じがたいほどの音色によって、わざわざ再訪させるほどの魅力がありました。
写真:ナウムブルク・ヴェンツェル教会とオルガン
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