2020.06.17 Wed
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外国語のススメ【第102回】2016年ニューヨーク在外研究で学んだこと

                                                 経営学部准教授  是永 隆文(経済入門)
【第102回】2016年ニューヨーク在外研究で学んだことイースト川対岸から望むマンハッタン島の街並みと筆者ら(後列右から3人目、2017年3月3日見学ツアーで)
 皆さんこんにちは。今回は私が2016年度の在外研究でニューヨークのコロンビア大学に滞在し、語学や多様性理解の重要性を痛感した体験をお話したいと思います。とはいえ、本学にはご専門の方が多数おられますので、一種の旅行記だと思ってください。私の所属は同大学経営大学院の日本経済経営研究所(CJEB)で、当時はマンハッタン島のアッパーイーストにありました。主な仕事はワークショップの発表・討論、CJEBディスカッション・ペーパーの執筆、大学院講義の聴講等でしたが、詳細は割愛します。
 第一の体験は、渡米して早々に50代のメキシコ人と20代のイタリア人とのルームシェアを1カ月送ることになったことです。その経緯やドタバタを話すと長くなりますが、結局、エスニシティ間の違いよりも(最初はそう感じたとしても)個人の嗜好や社会階層の違いの方が大きいことを痛感しました。
 この後の体験談はいずれもアメリカという国は自分たちの価値の共有と実現に本気で取り組んでいるという話です。第二の体験は2017年春にトランプ大統領が移民制限の大統領令を出した時の同大学の迅速できめ細やかな対応です。同日夜から大学理事会の会議が始まり、翌日には国内外の留学生と客員研究員を含む全員に「本学は多様性を尊重するという伝統があるので全く心配しないでほしい」という趣旨のメッセージと「ノンネイティブ向けの総合窓口を設置し、全てのサポートを案内するので迷ったら行くように」との指示がありました。これは目下の新型コロナウイルス感染症対応においても学ぶところがあるように感じました。

 第三の体験は、CJEBの見学ツアーで訪れたBloomberg Towerです。Bloombergはアメリカの大手総合情報サービス会社です。このビルは731 Lexington Ave.にある55階建てのガラス張りの超高層ビルで、オフィススペースは多様性(Diversity)や社会的平等(Equality)等の価値を、透明性(Transparency)を向上させることで従業員に空間的に認識・共有させるように設計されており衝撃を受けました。立体的に配置された階段・エスカレータ・吹き抜けに加えて、部屋の仕切りの大半がガラス等の透明素材で仕切られており、どこでだれがどのような仕事をしているかが見渡せます。机や椅子、食堂は役職の有無や職階に関係なく全て同じです。放送ブースのON AIRランプも多くのフロアーから視認できるように設置しているそうです。
 同行した企業の方々の話によれば、優秀で公正さを重視する多様な人材を集めるのが目的だろうとのことでした。同じ発想を本学のキャンパスに導入したらどうなるでしょう。例えば、学生の移動の導線であり高台に位置する5号館と隣の体育館、レストランViewの辺りに学生のプレゼンやシンポジウム、産学連携に係る活動、部活動等が見える透明性の高い建物を設置すれば、道を行く学生の大きな刺激になるだろうと想像をふくらませました。百聞は一見に如かずですので機会があれば是非訪れてみてください。