2018.05.10 Thu
CALL教室・外国語教育研究室TOPICS
外国語のススメ【第83回】語学は才能か、環境か?
経済学部教授 櫻井宏二郎(日本経済論・経済政策)
既にこのような研究は存在すると思うが、仮に次のようなアンケート調査を行ったとしよう。対象は日本生まれの成人。質問は2つ。(1)あなたの中学・高校での英語の成績はどうでしたか?選択肢:(A)よい、(B)悪い。(2)あなたの現在の英語の能力はどうですか?選択肢:(C)高い、(D)低い。私の推測では、かつては(A)と(C)の組合せの割合が多かったが、近年では(B)と(C)の組合せの割合が増えているような気がする。
この思考実験は、改めて語学は才能かそれとも環境かという問題を思い起こさせる。常識的には、才能が高いほど、そして環境がよいほど英語力が上がると思われるが、問題はどちらの要因がどれだけ大きいかだ。詳細なアンケート調査のデータがあれば、統計的分析によって、例えば高校時代の英語の点数の差20点を挽回するために、何年の海外経験が必要かがわかるだろう。
しかし、海外経験の効果がわかったところで、海外留学には膨大な費用と時間がかかるし、海外赴任はそもそも自分で自由に選択できるものではない。よって現実的に重要なのは、海外経験と同様の効果を国内でいかに効率的に達成するかだ。この点に関しては恐らく専門家が様々な研究をしていると思うが、素人の私は次のような直感を持っている。本学の学生のようにある程度の専門性を持った大学生に対しては、専門分野に特化した英語の教育が有効ではないか。私の経験からすると、専門領域でのディベートは、伝えたい内容が先にあるので話すネタに困らない上に、相手に論破されたくないという意識が強く働くため大きな効果を発揮すると思う。さらに通常の英会話のように日本人同士で英語を話すことに伴う気恥ずかしさをあまり感じなくて済む。もっとも、話すに足るだけの専門知識を持っていないといけないので、やはりハードルは高いのだが・・・。