2020.05.18 Mon
ONLINETOPICS

「学長伝書鳩」No.3

伝書鳩no3

専修大学オンライン授業が始まって一週間程が経過いたしました。おかげさまで、本学のオンライン授業は、現時点でシステムトラブルもなく、比較的順調に実施されております。学生の皆さん、とりわけご父母・保護者の皆様には、オンライン授業に伴う通信環境の整備等にご協力を賜ったことに厚くお礼申し上げます。またこの間、情報科学センター・サポートデスク(https://www.senshu-u.ac.jp/news/nid00005303.html)に、オンライン授業に関する相談が多く寄せられました。その一部には、ご叱責や苦情の申し入れもございました。ご不便をおかけした方には、お詫びを申し上げますとともに、忍耐強くご対応をいただいたことに深く感謝申し上げます。今回は、オンライン授業のコンテンツ作成を行う際に本学教員に対して事前にお願いしていたある重要な事柄についてお伝えしたいと思います。

オンライン授業が始まった5月11日(月)昼頃のチャット会議で、サポートデスクから、午前中に受け付けた相談案件について報告がありました。その中に、「双方向の動画配信を使用する授業形式が少ないのではないか」という問い合わせが複数寄せられているというものがございました。私はこの報告を見て、オンライン授業のイメージとして、学生側のディスプレイ上に授業参加者全員の顔が映し出されて、教員とのリアルコミュニケーションが行われることを期待していた人が多かったのであろうと推測しました。その一方で、先生方が大学全体で事前に申し合わせた基本方針に従ってオンライン授業の内容構成を組み立てていることも同時に確認できました。その方針とは、「通常のオンライン授業では、学生がスマートフォンを利用することを想定し、双方向のリアル動画配信は時間を限定して行う」というものです。このような方針を決めた背景には、二つの理由がありました。
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第一の理由は、オンライン授業を受ける本学学生の通信環境に係る事前調査結果に基づくものです。その調査結果は、「スマートフォンは持っているが、PCがない」「自宅にWi-Fi環境がない」というケースが少なからずあり、なかには「フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)しか持っていない」という事例の存在も示すものでした。それを踏まえて、本学は、「4G(LTE)回線のスマートフォンを所有していれば受講可能な授業を行うという方針」を決定いたしました。しかも、双方向のリアル動画配信は、多用するとデータ通信量が膨大になるので、抑制的に採用する旨、先生方にお願いしました。
※本学の「オンライン授業受講のためのインターネット環境及び機器に関する補助について」は以下のリンクをご覧ください。
https://www.senshu-u.ac.jp/news/nid00005269.html

第二の理由は、「データダイエット」への協力の必要性に基づくものです。この用語は、まだ聞き慣れない方も多いかと思いますが、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)から次のような広報が大学に向けて発信されております。
「データダイエットへの協力のお願い:遠隔授業を主催される先生方へ
情報通信回線は全国民が共有する有限の資源です。通信量が情報通信回線の限界を超えるとすべての利用者が大きな影響を受けます。1600万人の生徒・学生が、この世界的な災禍の中でも十分な学習ができるように、「データダイエット」に協力しましょう。
  1. オンライン授業は通信量(データ量)が極力小さくなるように工夫しましょう。
  2. 空いた通信回線の容量は、小学校低学年などFace-to-Faceが必要となる教育や障がい者への合理的配慮など必須の分野へ使ってもらいましょう。

●通信量に配慮した授業の実施・設計手法
  1. 先生が話す映像を送信する必要はありません。講義中、自分の顔や書画カメラを動画で常時流しておいたりすると通信量は多くなります。学生のカメラもオンにし続けると通信量が増えます。不要なカメラはオフしましょう。
  2. 画面共有による資料提供中心の授業は通信量が大幅に少なくなります。先生が黒板の前で動き回る授業はデータ量が非常に増えます。
  3. そもそも授業の全ての部分をライブで行う必要はありません。授業時間を、
    ■教員と学生との双方向のやり取りを行う(ライブ)部分
    ■教員からの一方向の情報伝達の部分
    ■学生が問題を解くなどの主体的な学びを行う部分
    に分けて設計し、双方向のやり取りを行う部分を短くすることも可能です。
  4. 教員からの一方向の情報伝達の部分は事前に録画し、ネットワークの空いている時間帯、早朝などにダウンロードを指示することも出来ます。予約してダウンロードさせることもできます。
  5. 学生が問題を解くなどの主体的な学びを行う部分はネットワークにつなぐ必要もありません。
https://www.nii.ac.jp/event/other/decs/tips.html(国立情報学研究所)
本学が初めて経験している「全授業のオンライン化」の実現には、さまざまな所与の条件を考慮しつつ、その仕組みを設計することが求められました。これに関わっている本学関係者の努力と気持ちが、学生の皆さんやご父母・保護者の皆様に伝わることを心から願っております。また、オンライン授業という教育ツールの効果や指摘された課題は、現況が改善された後にあらためて総括され、今後、専修大学での教育・研究を支える魅力的な補完手段として位置づけられるようになればとも願っております。