2020.05.15 Fri
CALL教室・外国語教育研究室TOPICS

外国語のススメ【第101回】英語を使うと見えてくるもの

人間科学部講師  松嶋 祐子(犯罪心理学)
【第101回】英語を使うと見えてくるもの
 高校生まで自分の人生には英語なんて必要ないと思っていた。英語が得意な人たちが全部日本語に訳してくれるから全ての情報は手に入ると思っていた。しかし,自分で英語を使うようになったからこそ感じることであるが,残念ながら,日本のメディアは多様性が乏しく,海外のニュースについてもごくわずかしか取り上げていない。テレビひとつとってみても,チャンネル数が少ない上に,だいたいどこも似たような内容を取り上げている。しかも,日本にとって都合のよい情報に偏りがちのように見える。自分から諸外国のニュースサイトを訪れたり,SNSで各国の人たちの生の発信を読んでいると,全然情報の質と量が違うのだ。
 例えば,一つのニュースを日本語と外国語で見比べてみる。日本が諸外国からどのように見られているのかを知ることができる。同じニュースでも違う視点から取り上げていたり,日本国内では大して注目を浴びていない事柄が大きく取り上げられていて驚いたりする。お隣韓国と度々起こる日韓問題などは,双方の言い分が食い違うことが多いので,韓国側ではどのように報じられているのか,第3国からはどのように見られているのか比較してみると面白い。一つの事柄についてこうした複数の見方を知ることで,他者視点を獲得し,多角的にものごを見る訓練になるようにも思う。
 また,英語で情報収集をしていると,日本にいながらも日々世界で起きていることを身近に感じることができる。今回,コロナの流行にいち早く危機感を覚えた人達には,日頃から海外の動向に注意を払っている人たちが多かったのではないかと思う。
 こうしたことは実際に英語を日常的に使いながら体感してみないとわからないことなのだが,このことを18歳の自分に伝えられたら,もっと早くから英語の勉強に励んでいただろうにと悔しく思う。
 私が学生の頃に比べて社会の状況も変わってきており,たとえ海外に行かなくとも,国内で英語を活用できる場面はどんどん増えている。現在,コロナ対策のための緊急事態宣言の中,可能なものは積極的にオンライン化がなされている。自粛,自粛の毎日で自分の世界がどんどん狭くなっていく閉塞感がある一方で,今回を機にオンライン化が進めば,ますます海外との垣根は低くなり,世界がもっと広がっていくのではないかと期待をしている。そんな未来に期待して,自粛生活中の今日も,自分の英語にさらなる磨きをかけている。


写真:イングランド北部,ローマ時代からの城塞都市チェスター。自身で手配しないと,既成ツアーではなかなか訪れない街だ