2018.10.01 Mon
CALL教室・外国語教育研究室TOPICS
外国語のススメ【第86回】言葉との付き合い方
文学部英語英米文学科准教授 岡部 玲子
仕事であれ旅行であれ海外に滞在する機会がある時には、現地の言葉を少しでも覚えてから行こうと、事前に小さな辞書と簡単な日常的な言い回しが載っている会話集を手に入れることにしている。アルファベットを使う言語であればその事前学習も比較的進めやすいが、苦労したのは韓国語とギリシャ語である。どちらも文字がハードルを上げている。それでも何とか文字と発音の仕組みだけ覚え、ギリシャのテッサロニキに滞在した数日間、会話集で学んだ挨拶や質問をレストランやスーパーで実際に使ってみた。最初はぎこちなかったが、ギリシャ人の発音を真似てみるうちに段々慣れてきて、ある時スーパーの店員に自然な感じで(自分で思っているだけかもしれないが)挨拶をしてみた。店員の反応から「これは通じた!」と確信した瞬間、物凄い勢いでギリシャ語が返ってきたのである。そうなるともう英語にしてもらうしかない。それでも「通じた」と感じられるのはちょっと嬉しい瞬間で、また懲りずに別の国で同じことを試してみるのである。
言葉は人間だけが持つ能力であり、文化の一部であり、人間を人間らしくさせているものである。英語はもちろん大事だけれど、言葉そのものに意識的になり大切に楽しむことで、日本語も英語もその他の言葉ももう少し勉強してみようかなという気持ちになるのではないかと思う。そんなことに気づかせてくれるのなら、時には言葉に翻弄されてみるのもアリかもしれない。