2018.10.23 Tue
文学部TOPICS
民衆の先駆性示す 多摩の「五日市憲法」 学生時代に発見した新井勝紘元教授が講演
公開講座「歴史を紐とく 関東を考える―近世~近代編―」(全6回・エクステンションセンター主催)の4回目講演会が10月13日、生田キャンパスで開催され、元文学部教授の新井勝紘氏(近・現代史)が「多摩で生まれた五日市憲法の先駆性」をテーマに講演、約400人が聴講した。
五日市憲法は自由民権運動期に起草された私擬憲法(民間有志による私案憲法)草案で、国民の権利に関する規定が多いのが特徴だ。50年前、東京都西多摩郡五日市町(現あきる野市)で発見され、反響を呼び起こした。
この調査に参加し、最初に憲法草案を手にしたのが新井氏。講演では発見当時の様子や、研究に取り組んだ50年を振り返り、歴史の"宝"を探り続けた醍醐味を伝えた。
五日市憲法は自由民権運動期に起草された私擬憲法(民間有志による私案憲法)草案で、国民の権利に関する規定が多いのが特徴だ。50年前、東京都西多摩郡五日市町(現あきる野市)で発見され、反響を呼び起こした。
この調査に参加し、最初に憲法草案を手にしたのが新井氏。講演では発見当時の様子や、研究に取り組んだ50年を振り返り、歴史の"宝"を探り続けた醍醐味を伝えた。


新井氏は東京経済大の学生時代、歴史家の色川大吉教授(現名誉教授)のゼミに所属。1968年8月27日、色川教授、ゼミ生とともに長い間閉ざされていた旧家の土蔵調査を行い、竹製の箱に入った和紙24枚つづりの包みを手にした。
「明治憲法の書き写しと思った。それよりも前に編まれたオリジナルのものとは当時まったく想像できなかった」と振り返った。
「この出合いにより五日市憲法が生涯の研究テーマとなった」という新井氏は、五日市憲法の先進性について語った。
五日市憲法の5編204条には基本的人権の尊重や教育の自由の保障、教育を受ける義務、法の下の平等、さらに言論の自由、信教の自由などのほか地方自治権、外国人の権利についても記されている。
「明治憲法の書き写しと思った。それよりも前に編まれたオリジナルのものとは当時まったく想像できなかった」と振り返った。
「この出合いにより五日市憲法が生涯の研究テーマとなった」という新井氏は、五日市憲法の先進性について語った。
五日市憲法の5編204条には基本的人権の尊重や教育の自由の保障、教育を受ける義務、法の下の平等、さらに言論の自由、信教の自由などのほか地方自治権、外国人の権利についても記されている。
「自由民権運動で生まれた多くの私擬憲法のなかでも民主主義の志に重きを置いている」と分析した。2013年、皇后陛下が自身の誕生日にあたって五日市憲法について言及、「世界でも珍しい文化遺産」と述べ、深い感銘を受けたことを明らかにした。この憲法草案はあらためて脚光を浴びた。また、五日市憲法の起草者・千葉卓三郎についても触れた。卓三郎は、宮城県出身で広範な学びを得てさまざまな宗教に出合い、各地を放浪したのち、教員として五日市に移り住んだ。地元の青年たちと討論を重ねて憲法を練り上げた。「卓三郎の豊富な経験と、近代黎明期の若者たちの熱意により生み出された」と憲法誕生の背景を解説した。最後に新井氏は「50年前の私たちの発見は偶然だったが、研究を続けてきたことで、一つの歴史を明らかにできたと思っている」と結んだ。
