2019.05.14 Tue
CALL教室・外国語教育研究室TOPICS
外国語のススメ【第92回】ウェールズ語事始
法学部教授 河野 真太郎(英語)

みなさんは、外国人と見るや、思わず英語で話しかけたもののその人は英語話者ではなかった、という経験はないでしょうか。ない? そうですか。私は、あります。
何が言いたいかというと、外国語といえば英語であって、それ以外のマイナー言語なんか学ぶ必要はない、という考え方は、非常に息苦しいのではないかと思うのです。かつて、東京の都立の大学を珍妙な名前に変えた都知事が、「フランス語はまともに数字も数えられない言語だ」と発言して物議をかもしたのを思い出します。そんなわけはないでしょう……。
何が言いたいかというと、外国語といえば英語であって、それ以外のマイナー言語なんか学ぶ必要はない、という考え方は、非常に息苦しいのではないかと思うのです。かつて、東京の都立の大学を珍妙な名前に変えた都知事が、「フランス語はまともに数字も数えられない言語だ」と発言して物議をかもしたのを思い出します。そんなわけはないでしょう……。
しかし、ロンドンから列車にゆられること3時間程度、ウェールズの首都カーディフに降り立てば、プラットフォームで待ち受けているのは写真のような案内板です。例えばFfordd allanとありますが、これはウェールズ語で、Way outの意味なのです。ちなみに発音を無理矢理カタカナになおせば、「フォルズ・アスァン」とでもなります。ffやdd、llは独立したアルファベットで、とりわけllはかなり特殊な発音です。
このように、ケルト系の言語であるウェールズ語は、英語とは似ても似つかぬ言語です。Good morningはBore da(ボレ・ダ)だとか、Thank youはDiolch(ディオハ:「ハ」は喉から出す息の音)だとか。ですが、駅の案内板にあるように、ウェールズ語は英語と並んでウェールズの公用語であり、現在60万人ほどの話者がいる言語なのです。
えらそうに説明していますが、私もウェールズにいた時にWelsh in a weekという成人向けのウェールズ語講座で習った程度の知識しかありません。しかし、ウェールズにはウェールズ語で教育をするWelsh schoolsも存在し、多くの大人が上記の講座などで一生懸命ウェールズ語を習得しようとしている様子は印象的でした。
英語さえ第二言語である私が、英語話者に混じって「外国語」であるウェールズ語を学ぶ体験というのは、非常に解放的でした。解放的というのは、外国語といえば英語である、という上記の思い込みから根本的に自由になる体験だったということです。みなさんも、英語以外の外国語をぜひとも学んでみてください。
写真:カーディフ駅にて