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2018.07.31()
専修大学経済学部経済学部での学びINFORMATION

経済学部での学びーゼミナールを通じて企業の経営戦略を極める

専修大学経済学部 中村吉明

 最近、新聞やニュースでAI、IoTの言葉を聞かない日はありません。いわずもがなですが、AIとは、Artificial Intelligenceの略称で人工知能と訳されます。また、IoTはInternet of Thingsの略称で、直訳すると「もののインターネット」ということになります。つまり、「もの」同士がつながり、相互に制御することを意味しています。
 これらAI、IoTに加えて、コンピュータ能力の向上などによるビッグデータ解析の急激な進展を背景に、今、第4次産業革命が到来しているのではないかと言われています 。このような革新的な技術が導入されることにより、ビジネス界でも大きな変化が起こっているのです。今まで優良と言われてきた企業の中には将来をお危ぶむ声が出てきたり全く異なる業界からの参入が増えてくる中、ベンチャー企業も果敢に新たな市場に挑んでいます。
 例えば、自動車産業を例にとって考えてみましょう。今、自動車産業は、AI、IoTなどの進展により、100年に1度の大変革の時代を迎えたと言われています。クルマの未来のトレンドを規定するCASEという次の4要素が同時並行的に自動車産業に襲い掛かっているのです。

C:Connected コネクテッド・接続
A:Autonomous オートノマス・自動運転
S:Sharing シェアリング・共有
E:Electric エレクトリック・電動化

 それぞれを追確認してみましょう。コネクテッドカーは、テスラで一部導入されていますが、インターネットを通じてシステムをバージョンアップしたり、バグ取りをしたりするクルマです。将来、さらに発展して、クルマが外部から伝送される映画などの動画をリラックスして視聴する空間になるかもしれません。
現在の交通事故の9割が人為的な事故と言われています。特に高齢者の事故が後を絶ちません。自動運転車は、それら事故を激減させるモビリティとして注目を浴びています。
 さらに、シェアリングは遊休資産としてのクルマに注目しています。一般のビジネスパーソンの家庭を考えてみますと、クルマは平日、ほとんど遊休資産で、有効活用されるのは休日に限られています。一方で、平日だけクルマを使いたいというニーズもあります。それらをスマホなどを使ってうまくマッチングさせ、資源の有効活用をしようというものです。
 他方、現在のガソリン・エンジン車は、地球環境や沿道の環境を悪化させるため、それらをできるだけ緩和する次世代自動車が望まれていますが、現在、電気自動車がその最右翼になっています。
このようなCASEの動きの中、トヨタ、日産、ホンダなどの自動車組立メーカーは、生き残りをかけてどのような戦略を取るのでしょうか?CASEはITと親和性が高いため、グーグルや百度(バイドゥ)などのIT企業の自動車産業への参入が盛んで、自動車組立メーカーの脅威になっています。また、クルマの電子化やモジュール化の進展とともに、AIの知見、電気自動車の知見などを活かした、ZMP、ティアフォー、FOMM、GLMなどのベンチャー企業が参入しています。
 いずれにしても、CASE時代の自動車産業は系列など閉じた世界での自前主義では限界にきています。足らざる部分を補完するため、他社にアライアンスを組まざるを得なくなっています。また、製造、特に技術のみに偏るだけではなく、販売や、場合によっては所有を前提としないサービス提供によってビジネスを進めるというような戦略を考えていかなければなりません 。

 以上は、自動車産業を例にとって最近の日本の産業の一端を紹介したものですが、われわれのゼミナールでも同じような問題意識で議論を進めています。
 まず、当日のゼミナールの当番が、最近の企業を巡る様々な事象の中で、注目する事象示すとともに参考になる資料(例えば、新聞記事やネット上の論説)をゼミナールの前に、皆に共有します。その他のゼミナールのメンバーはその資料を読み、さらに、その関連ある資料を自ら探し、場合によっては皆に共有しながら、知識を深めていきます。
 なお、ゼミナールではディベートを中心に進めていきますが、何も知識のない中でディベートをしても意味がありません。深い知識や見識に基づく深い思考があって初めてからディベートが意味をなしてくるのです。ディベートのための準備こそが最も重要なものなのです。
 そしてゼミナール当日、ディベートを行いますが、そのディベートでは、例えば、自動運転は賛成か?反対か?というように、当番が決めた事象の賛否に分かれて、議論を進めていきます。議論していくうちに、自分たちの知らない情報が提示されますと随時、ネットなどで調べながら、反論していきます。そして最後に、このようなディベートをラップアップした後、それぞれの立場で個別企業がどのような経営戦略を構築していけばいいのかを考えていきます。以上のようなディベートをゼミナールのたびに行いますと、知らず知らずのうちに、知識や知見とともに、それらの基に深く考える力やディベートの技術も身につくのです。

 幕末、吉田松陰が主宰した松下村塾は、議論を重んじた私塾として有名でした。安政5年に松陰が記した「諸生に示す」には以下のような記述があります。「沈黙自ら護(まも)るは、余甚だ之れを醜む。凡そ読書とは何の心ぞや、以て為すあらんと欲するに非ずや。書は古(いにしえ)なり。為(しわざ)は今なり。今と古は同じからず。」議論をして切磋琢磨することを求めるとともに、(本の重要性は別に指摘するも、ここでは、)本の通りに実践しても無益であると指摘しています。さらに、古川薫の著書「松下村塾」の中で、「師弟そして門人たちを横にむすび、松下村塾を坩堝(るつぼ)の中で融(と)けあうような活気あふれる教学の場にするためには、もっと積極的な声が上がらなければならない」としています。本ゼミナールも、松下村塾が目指したディベートを進め、お互いが切磋琢磨するような学びの場を目指しています。

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  第4次産業革命とは、蒸気機関による工業化の第1次産業革命、電力による大量生産の第2次産業革命、情報通信技術革命の第3次産業革命に次ぐ新たな産業革命のことです。
  さらなる詳しい内容については、拙著、『AIが変えるクルマの未来』(NTT出版)を参照して下さい。


 

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