徒然草
表紙は子宝尽くしの緞子織装、見返しは金、料紙は鳥の子で一面十行書。本文は序を含め二百四十四段本で、江戸初期の烏丸光広奥書本とほぼ同一の系統本文を有する。『徒然草』は吉田兼好(1283-1352)の随筆集として知られる。本書はこの『徒然草』に奈良絵十五枚を添えた、全三帖(上中下)からなる。各帖にはそれぞれ五枚の極彩色、狩野派の奈良絵が添えられている。
『徒然草』の成立は1330~1340年代と考えられているが、作者吉田兼好は、仏教や中国・日本の古典の教養や諸国放浪の体験を思索や視野・鑑賞の能力として生かし、自然、宗教、学問、伝統・故実、人間界の世事を冷静・客観的に観察している。そこから得た感慨・批評を交え、作者独特の簡潔な文体で描いている。