2026.03.13 Fri
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【理工学研究科】生命科学専攻 修士論文発表会を開催

 2月12日、5号館にて理工学研究科 生命科学専攻 修士論文発表会が開催され、大学院生6名が口頭発表を行いました。
 
 一人あたりの持ち時間は40分(発表20分、質疑応答20分)で、大学院生たちは制限時間を最大限に活用し、これまで取り組んできた実験や調査・研究の成果を発表しました。
 発表後には、教員から質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。

発表の様子▲研究発表の様子
質疑応答の様子②▲発表後には教員から活発な質疑がありました

【発表した学生のコメント】

大見川 遥さん
(1)修士論文のテーマ・研究内容を教えてください。
「テーマ:海産等脚類の球体化による捕食回避機能および乾燥耐性機能の評価」
 等脚類(ダンゴムシの仲間)に見られる「球体化」の機能について研究をしています。等脚類の球体化は、陸と海の系統でそれぞれ独立に進化し、さらに陸の系統内でも複数回進化してきたと考えられています。また、球体化には行動面だけでなく形態学的な変化が必要となることから、何らかの自然選択のもとで進化した機能であると考えられます。
 陸のダンゴムシ類の球体化機能は、「捕食からの回避」や「乾燥への耐性」といった機能があるとされていますが、海産等脚類における球体化の機能については、機能の知見が不足しています。そこで私は、海産等脚類であるイソコツブムシ類を対象に、球体化の機能解明を目的として、(1)カニ類に対する球体化による捕食回避機能の検証、(2)捕食者を模した刺激に対する球体化反応の検証、(3)乾燥条件下における球体化行動の観察、の3点に取り組みました。
 その結果、イソコツブムシ類の球体化はカニ類に対する捕食回避行動として機能すること、身体への物理的な接触を伴う刺激によって球体化が誘発されやすいこと、そして乾燥条件によって球体化が誘発される可能性は低いことが明らかになりました。

(2)そのテーマを選んだ理由を教えてください。
 この研究の原点は、高校時代の体験にさかのぼります。高校生の頃、生物を飼育していた水槽で「とある生物」が突然大繁殖したかと思えば、忽然と姿を消してしまいました。

 当時はその生き物の正体を知るすべがありませんでしたが、石巻専修大学に入学して様々な生物について学ぶ中で、その「とある生物」が海産等脚類であることを知りました。 その事実を知った瞬間、海産等脚類にどこか運命のようなものを感じ、「この生物を研究するしかない」と思うようになりました。
 海産等脚類を題材に、どのような興味深い研究テーマが考えられるかを模索していたとき、海産等脚類の中にも、陸生のダンゴムシと同じように球体化する「コツブムシ類」が存在することを知りました。「なぜ陸と海のどちらの環境にも球体化する種がいるのか?」――この疑問こそが、卒業研究から続く私の研究テーマの出発点となっています。

(3)研究で苦労した点を教えてください。
 「人に分かりやすく伝えること」です。
修士論文の執筆や発表会に向けたスライド作成では、研究の必要性や未解決の課題、アプローチの方法、そして得られた結果を、専門外の方にも理解してもらえるように整理する必要がありました。そのため、構成や表現を何度も見直しました。

(4)今後の目標、抱負を教えてください。
 今後も、捕食回避と乾燥耐性の両面から等脚類の球体化機能を検証し、陸と海の等脚類に共通する球体化機能の一般性について検討していきたいと考えています。私の研究で明らかにできたのは、等脚類の球体化機能の一端にすぎず、その進化という大きな謎を解明するには、ほど遠い状況です。
ここで立ち止まることなく研究を続けることで、球体化の進化に関するより深い理解へと近づけるよう、今後も取り組んでいきます。
梁 翰宸(リョウ カンシン)さん
(1)修士論文のテーマ・研究内容を教えてください。
「テーマ:ニホンジカ幼角由来マクロファージ活性化候補成分の探索」
 免疫細胞であるマクロファージを用いて鹿茸抽出物の機能を再評価し、その活性を指標として、生理作用を担う有効成分の探索・同定を行いました。


(2)そのテーマを選んだ理由を教えてください。
 鹿茸は東アジアの伝統医学において重要な生薬とされ、精力増強、骨格強化、免疫向上などの効果があるとされています。私の故郷の近くは中国最大の鹿茸産地であり、そのことから鹿茸に強い関心を抱くようになりました。この背景もあり、鹿茸が持つ多様な生理活性の作用機序を科学的に解明したいと考え、このテーマを選びました。

(3)研究で苦労した点を教えてください。
 本研究では、予備実験により、鹿茸がマクロファージを活性化させる成分がタンパク質であることを確認しました。しかし、鹿茸抽出液には複数のタンパク質が混在しています。
そのため、多数の不活性タンパク質の中から目的のタンパク質を見つけ出し、さらにモデル生物ではないニホンジカのゲノムデータベースを用いて対応する遺伝子を同定する必要がありました。こうした工程は手間も時間もかかり、研究を進めるうえで苦労しました。

(4)今後の目標、抱負を教えてください。
 将来的には、生物科学関連企業の研究職に就き、これまで培ってきた分析技術や探究心を活かしながら、食品や医薬品の開発を通じて社会に貢献したいと考えています。

 特に、鹿茸に限らず、有用な天然資源の生理活性を科学的に解明し、人々の健康や医療の発展に寄与する研究を追求していきたいと考えています。
大見川さん③▲発表する大見川さん

梁さん②▲発表する梁さん

発表タイトルは下記の通りです。

・海産等脚類の球体化による捕食回避機能および乾燥耐性機能の評価
・金華山島のニホンザルにおける海藻類の採食生態:ニホンザルの海岸利用頻度と海藻類の利用可能性の関係から探る
・クロベンケイガニにおける性的二型の進化要因の検討 -社会行動からのアプローチ-
・宮城県北部沿岸域における下痢性貝毒原因藻Dinophysis属の消長要因 -特に繊毛虫Mesodiniumとの量的関係について-
・ニホンジカ幼角由来マクロファージ活性化候補成分の探索
・国内におけるHeteromastus属多毛類の分類学的検討